降参だ、おめぇの強さはよぉくわかった。オラはもうやめとく。

降参だ、おめぇの強さはよぉくわかった。オラはもうやめとく。


「……ゴートを空気扱いして、俺の意識から消す……か。しょうもない手だ。自分が、そんなくだらない手に負けたとは……思いたくないな……」


「くだらない手ねぇ……まあ、後からなら何とでも言えるさ。『その時、その瞬間の意識を奪い合う闘い』の『結果』に対する『論評』ほどお寒いものはない」



「……」


「鉄火場では、いつだって、どんな方法であれ『敵の目を欺けた方』が勝つ。どれだけしょうもなかろうと、どれだけ安っぽい『珍手』だろうが、勝ったやつが正解になる。それが戦争だ」


「……そうだな」


 P型センキー・ゼロオーダーは、うなずきながら、


「その理(ことわり)。心に刻んでおくよ、テンドウクスオ」


 そう言ってから、

 今度は、ゴートに視線を向ける。


 視線を向けられたゴートは一瞬だけ身構えた。

 少し震えている。

 折れてはいないが、しかし、明確な恐怖を感じている。


 そんなゴートに、

 P型センキー・ゼロオーダーは言う。




「降参だ。お前の強さはよーくわかった。俺はもうやめとく」




 そんな、敗北宣言を受けたゴートは、


「……」


 数秒、固まってから、


「……それは、あれか? 『出番だぞ、〇〇』とか言って『キレさせたらヤバい危険物』を出してくる前フリか?」



「いや、ただの降参だ。俺は敗北を認めた。だから、お前はリーン・サクリファイス・ゾーンをとりもどせる。よかったな」



「……」


「……『無限転生・改』の『余(あま)り』……本当なら『お前に使わせる予定』だったんだが……まさか、俺が使うハメになるとは……情けない話だ……」


 P型センキー・ゼロオーダーが『把握』したミッションのキモは、

 どっちが『無限転生・改の余り』を使うか、という点にあった。


「……何を言っているかよくわからんのだが?」


「俺だって、詳細は知らない。俺の中には『闘いに関する知識』と『ミッション内容』しかない。俺はそれだけの存在で、それ以外は必要のない存在」


「……」


「細かいことは俺も知らん。ただ、とりあえず、とにもかくにも、お前の勝ちってことだ、ゴート・ラムド・セノワール」


 そう言いながら、P型センキー・ゼロオーダーは、

 そこで、なんの前触れもなく突然に、

 『己の胸部』に手をつっこんで、

 中から『心臓』をちぎり取ると、


「受け取れ」


 言って、自分の心臓を、ゴートに投げた。


「どわっ」


 『急に心臓を投げつけられる』という経験が皆無のため、

 当然のように困惑したが、

 状況的にスルーするわけにもいかず、

 ゴートは、投げつけられた心臓を両手でしっかりと受け止めた。


「最初に伝えた通り……今日から俺は、お前の剣だ」


「……」


「俺が必要なくなったら、その心臓をつぶせ。そうすれば、俺は死ぬ。無限転生・改は完全に枯渇しているから、もう復活はできない」


「……」


「迷うな、ゴート。俺はお前の剣だ。自由に使えばいい」


「……その話を信じる根拠は?」


「全快の状態で復活した今の俺なら、疲弊したお前とクスオを殺しつくせる。しかし、それをしないで、心臓を差し出した。十分な根拠だと思うが?」


「……」


 まだ悩んでいるゴートを横目に、

 P型センキー・ゼロオーダーは、


「舞い散る閃光と彷徨う冒涜の調和『P型センキー・ゼロオーダー』と、究極超天使『テンドウクスオ』……その二翼を率いる最強のラスボス『ゴート・ラムド・セノワール』……なかなかいいパーティになってきた……そう思わないか?」


「……お前は、リーンをさらい、拘束した。そう簡単に、お前を信じるわけには――」


「傷つける気は一切なかったし、実際にかすり傷一つつけていない。お前を本気にさせるための手段に使ったことは謝罪しよう。しかし、このクリスタルは、酸素カプセルみたいなもんで、中に入っていれば、睡眠不足と疲労がとれる。感謝されることはあっても、非難されるいわれはない」


「あのクリスタルが本当に酸素カプセルだったとしても、さらって、むりやり詰め込んでいるんだから、非難されるいわれは充分にあるだろ」


「では、どうする? その心臓を握りつぶすか?」


「……」


「俺を使え、ゴート・ラムド・セノワール。そして、究極のラスボスになれ」


「……お前の命令を聞く気はない……けど……条件は決して悪くない……」


 そうつぶやいてから、


「少しでも不穏な動きを察したら、その場で殺す……いいな」


「なんの確認だ? 俺はずっと、好きにしろと言っているだろ」



 こうして、結成された、とんでもない狂気をはらむ『ラスボス軍』。


 驚異のEXレベル&無限チートという絶対狂気『ゴート・ラムド・セノワール』

 千兆規模の軍を有するマエストロ、究極超天使『テンドウクスオ』

 【舞い散る閃光の複製】×【彷徨う冒涜の影】『P型センキー・ゼロオーダー』


 圧倒的な戦力となったラスボス軍!!

 そんな過剰戦力を有するラスボス軍の明日はどっちだ?!

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