どちくしょぉおおおお!

どちくしょぉおおおお!


 黒子に徹し、

 空気に徹し、


 すべての助力を最大限にいかし、


 ゴート・ラムド・セノワールは、

 P型センキー・ゼロオーダーに引導を渡した。




 完璧な勝利。

 普通なら、間違いなく、そうなるはずだったのだが、

 しかし、



 ――その直後のことだった。



 完全に死滅したP型センキー・ゼロオーダーの『跡』に、淡い光が結集していく。

 光が収束して、一度、カっと光ったかと思うと、

 そこには、


「――ぷはぁ……」


 新品同様の、P型センキー・ゼロオーダーが立っていた。


 復活したP型センキー・ゼロオーダーを見て、

 ゴートは、

 真っ青な顔で、





「ぅえ……ウソだろ。復活しやがった……ぅ、ぅぐっ…………ど、どんだけ…………ふざっ……ふざけんじゃ……」





 絶望を吐いた。

 続けて、心の中で、


(ぜ、全部つかった……もう残ってねぇ……なのに……)


 正真正銘、全身全霊の一撃だった。

 もう体を自由に動かすこともできない。

 全身の気血がカラカラに消耗し、

 オーラも魔力も、ほぼ完全に枯渇した。


(あいつ……見た目は……完全に元通り……もし、見た目だけじゃなく、オーラや魔力も、完全に元通りで復活したとしたら……勝ち目はない……)


 疲労困憊、

 満身創痍。


 ゴートも、一応、センエースエンジンを有しているので、

 『なにもかも投げ出してあきらめる』ということはしないが、

 しかし、現実問題、


(かりに、何かの奇跡がおきて、また殺せたとしても、また復活するかもしれない。『何度殺しても、今のようによみがえるという』――そういう『無限に終わってくれないタイプの脅威』だとしたら……さ、最悪だ……マジで……なんで、俺ばっかり、こんな目に……)


 憤りにさいなまれる。

 自分の弱さに対して、怒り、震える。


(あいつを殺すのはむりだ……けど、リーンだけは……)


 どうにか、リーンだけは取り戻そうと、必死になって頭をまわすゴート。


 そんなゴートの視線の先で、

 P型センキー・ゼロオーダーは、

 『転生した自分の体』に『異常』がないか確認してから、



「……」



 ゆっくりと目を閉じて、

 ギュっと口を閉じた。


 両手をギュウっと握りしめて、

 一度、すぅぅうう、と深く息を吸って、

 はぁああと、深く息を吐いてから、


 もう一度だけ、すぅううううううと、大きく息を吸って、


 天を仰ぎ、




「どちくしょぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」




 ノドをブチ切らんばかりの怒声をあげて、

 『くやしさ』を叫んだ。


 全てを吐き出す勢いで、

 余すことなく、想いを叫ぶと、


 直後、

 P型センキー・ゼロオーダーは、


「はぁ……はぁ……」


 乱れた呼吸を整えてから、

 その視線を、スっと、クスオに向けて、


「……ゴートを『空気扱い』して、俺の意識から消す……か。しょうもない手だ。自分が、そんなくだらない手に負けたとは……思いたくないな……」


「くだらない手ねぇ……まあ、後からなら何とでも言えるさ。『その時、その瞬間の意識を奪い合う闘い』の『結果』に対する『論評』ほどお寒いものはない」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る