絶対に降りてやらねぇ。

絶対に降りてやらねぇ。


 センエースは、『センエースを折るため』に、必死になって、


「折れろ……いい加減……なんで……」


 けれど、


「……どうして……」


 ギュっと、握りしめた拳。

 強く、強く、強く、握りしめた、その拳で、

 センエースは、


「あああああああああああ!!」


 自分を殴りつけた。


「うぁあああああああ!」


 何度も、

 何度も、

 ――何度も!!



 だから、






「……それでも……」


 センエースは、


「叫び続ける勇気を……」






 前を向く。

 今も、ギュウギュウと、

 重たい圧力が、センエースの心を殺そうと襲いかかってきている。


「ナメんじゃねぇ……って……最後の最後の最後まで叫び続ける……そんな『頭おかしい勇気』を……この『核爆発みたいな弱さ』にも立ち向かえる……そんな『狂ったような勇気』を……」


 鬼難度のタワーディフェンスみたいに、

 とても対処できそうにない波状攻撃を受けながら、

 しかし、

 それでも、

 センエースは、



「……奪い返す……絶対に……」



 血の涙を流しながら、

 へし折れそうになりながらも、

 ギリギリのところで踏ん張りぬいた。


 その、いと尊き『この上なく偉大』な『至高の魂』を抱えて、


「……シューリ……アダム……心配するな……すぐに行く……俺は絶対に折れない……俺は……必ず……」


 絶対的絶望。

 正しい象(かたち)すら保てない牢獄の囚人。


 ほんの少しでも気を抜けば、グシャリとヘシ折れてしまう、

 そんな地獄の底で、


「殺してやる……すべての理不尽を、不条理を……跡形もなくバラバラにしてやる……最後の最後まで、俺は絶対に抗い続けてやる!!」


 勇気を叫び続ける。

 当然の話。

 諦め方なんざ、とっくの昔に忘れたから。


「――『いつまで頑張ればいい?』なんて、そんなカス以下の弱音はいらねぇ……そんな弱さに寄りかかってなんかやらねぇ!」



 【どうせ死ぬのに、なんで、頑張るの?】



 ――その問いに、センエースは即答。






「……決まってんだろ……俺がそれを望んでいるからだ」






 頑張り続ける事を、センエースは望んだ。

 すると、その背中についてきた者たちが現れた。


 『センエースが望んでいるから』

 そのワガママな理由は、センエース(自分)を突き動かす『推動力』にとどまらず、

 センエースを信じている者達を奮い立たせる『動機』にもなった。


 センエースという稀代の英雄が、

 薄っぺらな理性をぶっちぎって、

 世界を包み込んでくれたから、

 『センエース以外』の『不条理の根絶を渇望していた者達』も、

 震える足に鞭を打つことができた。


 『あの背中についていく』――その覚悟は、いつしか、何よりの誇りになった。


 その繋がりは連鎖して、

 大きくて温かな光になった。


 そして、世界は変わった。



 ――ゼノリカ。

   全てを包み込む光――



 全ての不条理を殺した世界。

 誰もが、全力で、『確かな明日』を信じられる世界。


 不可能じゃなかったんだ。

 ただの妄想に終わらなかった。


 世界中の賢者連中が、『そんなものは無理だ』と嘆いている間に、

 全力で絶望と向き合い続けたバカがいた。


 そのバカは、どんな時でも、揺るぎないバカで在り続けた。

 どんな絶望を前にしても『それでも』と抗いつづけた。


 すると、

 なんということでしょう。

 『そんな世界は創り得ない』とモノ知り顔で謳っていた賢者共の前に、

 気付けば、理想の世界が出来あがっていたのでした。






「絶対に降りてやらねぇ! 俺はまだ、ここにいる!!」






 神は、まだここにいる。

 この地獄で、必死にもがいている。


 ――だから、

 ――叫べるんだ。

 ――本物の……本気の覚悟を。





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「――(――【【ヒーロー見参】】――)――」

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