今、どんな気持ち? ねぇ、どんな気持ち?

今、どんな気持ち? ねぇ、どんな気持ち?


「……はぁ? なんで、そこでタナカトウシの名前が出るんだよ。つぅか、なんで、あいつの事を知って――」


「まあ、あの例外は、お前よりも短時間で、お前よりも遥かに高い場所まで駆け上がったがな。あの例外が辿り着いた場所は、今の俺が、さらに『絶死のアリア・ギアス』を積まなければ届かないほどの狂気的な高み」


「……」


「アレと比べてしまえば、お前でもゴミになってしまう。それは流石にナンセンスだと判断した。アレはあくまでも例外。比べてはいけない狂気」


 そこまで言った時点で、

 ゼッキが、


「なあ、P型センエース2号……一つだけ、教えてくれ」


 ギっと歯ぎしりをして、


「もしかして、あいつも……俺と同じように、異世界へ飛んだのか?」


 それは、問いというよりも、ただの確認だった。

 P型センエース2号の言葉以外の情報は何もない状況だけれど、

 ゼッキは、『それも、十分に、ありえるだろう』と思ったし、

 それだけではなく、もし、タナカトウシが、自分と同じような状況になったなら、

 『自分など遥かに超えていくだろう』という確信もあった。


 だから、


「あのキ〇ガイは……今の、この状態の俺よりも……強いのか……?」


「一つだけ教えてくれと言っておきながら、二つ質問するとは……豪気だな」


「答えてくれ……頼む」


「タナカトウシは、『その状態のお前』の10倍以上強い」


「……っっ」


「ちなみに言っておくと、タナカトウシが、お前と同じように、第一アルファから異世界に転移した時期は、この二次試験が始まって以降だ」


「っっっ?!」


 もし、これが、あのキ○ガイ以外の話だったなら、

 『いやいや、流石に嘘だろ。信じるか、ボケ。今の俺がどんだけ強いと思ってんだ』

 となるところなのだが、

 ゼッキは、

 ここまで異常な話を聞いても、

 しかし、普通に、

 『ありえる』と思った。


 というか、

 信じる・信じないという領域の懐疑など、ほとんどなく、

 『マジかよ、ふざけんな』と、ただただ絶望した。



「どうだ? そんな例外と比べるのは、さすがにナンセンスだろう?」


「……は、はは……」


 ゼッキは、うつむき、右手で頭を抱えて、

 力なく笑い声をもらした。


「ったく、あのクソカス野郎は……いつもだ……いつも、俺の遥か先をいきやがる……いつも、俺が必死になって積み上げてきたものをゴミにしやがる……ほんと、もう……死ねばいいのに……」


 歪んだ本音がポロリ。


 200億1万年たっても消えなかった『しこり』。

 『それ』がもっとも色濃く残っている『時期(中学三年生)』であるがゆえに、

 『本音の歪み方』にもエッジがきいている。


「なぁに、アレが例外なだけで、お前はよくやっている。タナカトウシの10分の一以下の力しか持たず、戦闘力に至っては、比べ物にならないカスっぷりだが、しかし、お前は、よくやっている。なにがどうとは言えないが、まあ、うん……よくやってる、よくやってる、えらいえらい」


 P型センエース2号の煽りを受けて、

 ゼッキの奥歯が、ギリっと、強く、強く、強く軋む。

 目が充血して、

 重たい汗がにじむ。



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