さすが、プラチナスペシャルホルダーは格が違った。

さすが、プラチナスペシャルホルダーは格が違った。


「その態度を見る限り、どうやら聞くまでもなさそうだけれど……まあ、一応、聞いておこうか。……どうしても、我々と敵対するか?」


 先ほどアスカから質問された時とはうってかわって、

 虹宮からの『この質問』に対して、ウラスケは、ノータイムで答える。


「敵対する気なんか微塵もない。できるだけ、仲良く、平和的に、諍(いさか)いなく、穏便にすましたい。けど、そっちの『理不尽』を飲むことは出来ん。というわけで、そっちに対して、『折れてもらえませんか』と懇願させてもらう。受けてくれたら、全員がハッピー。というか、それ以外の解決策はない。以上」


「……『理不尽』ねぇ……」


 虹宮は、心底不愉快そうな声で、ウラスケの言葉を反芻して、


「時間も手間も命も惜しまず、人類のために、必死になって闘っているおれたちに対して……酷い言い草だ」


 どこまでもハッキリと不快感を示し、


「偉大なる聖主のバディとして、現実が微塵も理解できていない頭がおかしいお前に、道理というものを教えてあげるよ」


 そう言うと、虹宮の姿が、ウラスケの視界から消えた。

 と思ったと同時、右のわき腹に激痛が走る。


「ぐぁっ!! ……ちぃっ!」


 薄く視界に入ってきたのは、わき腹に蹴りを入れている虹宮の姿。

 ウラスケは、自分の側腹部にブチ込まれた虹宮の足を掴もうとしたが、

 その寸前で虹宮は足を引っこめて、そのままの勢いで、

 ウラスケの頬に肘をブチこんできた。

 そして、言う。


「悪くない反応速度だ……なるほど、お前の相手は、あの二人だと厳しいか。あの二人も決して弱くはないが、戦闘力に関してはまだまだ発展途上だから」


「がはっ、ごほっ」


「……けれど、おれなら対処できる。おれも、もちろん発展途上ではあるが、あいつらと比べれば、随分と上のステージにいるから」


 言いながら、虹宮は、

 右、左、右と、リズミカルに、拳や足を叩きこんでいく。


「どうだ? おれは強いだろ? なんせ、おれは、偉大なる聖主の右腕――バディだからな。そのポジションは、そこらのザコじゃ務まらない」


 虹宮のムーブは、『闘い』を理解している者の動きだった。

 ド素人のウラスケでは、対処しきれない、玄人の流。


 ウラスケは、どうにか、虹宮の猛攻から抜け出し、

 必死になって、距離を取り、


「がはっ、ごほっ……腹立つなぁ……なんやねん、その強さ……あの二人と、全然違うやないか……」


「あの二人には、まだ、闘いの輪郭が見えていない。『武の髄』がわずかも理解できていない。……だが、俺はできている。この差は大きい」


「武の髄……まだ若いのに、そんなもんを理解しとるとは……とんでもないニーサンやなぁ、あんた」


「伊達や酔狂で、偉大な英雄のバディを名乗りはしない」


「偉大な英雄ねぇ……」


 含みのありそうなウラスケのつぶやきに、

 虹宮は、ハッキリとムっとして、

 ググっと眉間にシワを寄せ、


「何か言いたいことでも?」


「英雄やったら、救いを求める声に耳を傾けろや」


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