だが、俺の方が上だ。

だが、俺の方が上だ。


「ああ、すげぇなぁ……ほんとうに、すげぇよ、トウシ……今までの永い神生の中で、さんざんっぱら、多種多様な無数の天才を見てきたが……間違いなく、お前がナンバーワンだ」


 センエースは、タナカトウシに対して、心の底から敬意を表する。

 嘘偽りはいっさいない。

 真正面からの本音。

 それは事実。


 ――しかし、


(だが、俺の方が上だ)


 同時に想う。



「トウシ……お前は、無数の地獄を前にして、最後まで勇気を叫び続けることができるか! 200億年、ただ武と向き合うだけの空虚な時間に、お前は耐えられるか!」


 これまでに積み重ねてきた『すべて』が、センエースの中で渦巻く。


「無理だろ! 俺にしか出来ないこと! 俺の器は! お前の才能を超えている! お前はナンバーワンの超天才だが、俺は、そんなお前をも超えた究極最強の男! それを証明する!」


 むき出しになって、


(あの日、俺はお前に負けて心を折られた。英語のテストの点数で負けて不貞腐れるという、クッソしょうもない挫折。だが、おかげで俺は……ここまで辿り着く事ができた!)


 歪な感謝を心に秘めて、


「トウシ、お前は間違いなく、文句なしで比類なき、究極ナンバーワンの天才! もし、お前が、俺と『同じ道』を歩めば、お前は俺の『遥か果て』をいくだろう!」


 嫉妬と僻(ひが)みを同時に抱きながら、


「だが! 断言する! この世に、俺と『同じ道』を歩める者はいない! 俺はお前ほど天才じゃないが! お前は、俺ほどの奇行種じゃねぇえ! イカれ方も、狂い方も、まるで足りてねぇ! 絶対の自信をもって言い切ってやる! ――ぶっ壊れ方なら! ゆがみ方なら! 腐り方なら! この俺がナンバーワンだ!!」


 叫んだのは、本音の奥にある悲鳴。


「地獄の釜の底で、何度となく絶望と踊ってきた! ともすれば押しつぶされてしまいそうなほどの『莫大な数の命』を背負って、凶悪な絶望を殺し続けてきた! そんな俺の! 全部を!! お前に叩きこむ!!!」


 全身が沸騰。

 センエースは叫ぶ!




「真・究極超神化6!!」




 『限界』を超えた先にある『力』を魅せつける。


 歯止めを失って、暴走する神気の嵐。

 神々の乱舞。

 ジオメトリが八方に飛び散って、

 光が拡散して、


(ま……まだ、『上』があったんか……信じられへん……ほんま、とんでもない神様やな……)


 ふいに、ソンキーの中で、トウシがボソっとそう言った。


 センエースの耳には届かない、ソンキーの中だけで響く声。


(アホほど積み重ねてきたんが伝わってくる……イヤやけど、虫唾が走るけど……でも、どうしても、心底から尊敬したくなるほどの、圧倒的で絶対的で決定的な、鍛錬の結晶)


(それがあいつだ。ありとあらゆる全ての頂点。この上なく尊き命の王。まぎれもなく、究極ナンバーワンの神。舞い散る閃光センエース)


(あれに勝つには、あんたの全部がいる)


(そうだ。やつに勝つには、俺とお前の全部がいる)


 そこで、ソンキーは、停止して、

 自分の中へと没頭する。


 その様子を、センエースは黙って見ていた。

 咲こうとしているライバルを邪魔するほど無粋ではない。


 センエースの視界の先で、

 ソンキーは思う。


(タナカトウシ……お前の『全部』を引き出す。わずかな余白もなく、目一杯、限界の限界まで)

(ソンキー、あんたの『全部』はもっと大きい。あんたが積み重ねてきた全てを、ワシの超知性で、開花させてやる)

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