お前がナンバーワンだ。

お前がナンバーワンだ。


「……美しくない。歪みしか感じない。こういうのは、好きじゃないな、やはり……」


 冷たい陰(いん)を含むその言葉を受けて、

 センエースは鼻で笑い、


「だろうな、お前はそういうヤツだ。『闘い』という枠の中で、自分の強さを相手に押しつけて、その結果として、相手より上回っているか否か、そこにしか興味を抱かないバカ野郎」


「戦闘が始まるまでならともかく……戦闘が始まっているにも関わらず、『どうすれば相手に勝てるか』と考え行動するのはノイズだ。対峙して、ぶつかって、どっちが強いか弱いかをハッキリさせる。その純粋さこそが美しい」


「その意見を否定はしない。そういう『突き詰めた覚悟だからこそ出せる強さ』もあるだろうから。しかし、現実問題、今のお前の方が、これまでのお前よりも、圧倒的に強い」


「……そのようだ。認めたくないが」


「ソンキー、お前は強い。この世で、唯一、俺とやりあう事ができる究極の闘神。かつて、俺はお前に憧れた。お前を超える事だけを夢見て邁進した日々の全てを、俺は今でも鮮明に覚えている」


「俺も覚えているよ、センエース。初めて会った頃のお前はゴミだった。俺の足下にも及ばない小神だった。いまだに信じられない。あのしょうもないカスが……ここまでの強さを得たという事実」


「ソンキー。俺は、お前に憧れた。だから俺はここまでこられた。俺はすでに最強。誰よりも強い神の王。だが、ここでとどまりはしない。俺は、もっと、もっと、先に行く。そのための踏み台がお前だ」


 センエースを包むオーラの量が増した。

 神の限界を遥かに超えた圧倒的な力でソンキーを押していく。


 舞い散る閃光は止まらない。

 ただ美しく煌めく。


 ――センエースは言う。


「ソンキー、俺は強くなったぞ。強くなって、強くなって、強くなって、そして、強くなったんだ。もう二度と、俺がお前に負ける事はない! たとえ、タナカトウシという究極の可能性と合体したとしても、お前じゃ、俺には勝てない! それが世界の真理だ!」


「ならば、真理を殺そう。そのために俺は、『俺だけの美しさ』を捨てた」


 ソンキーとセンエースは、互いに飛んだ。

 飛翔する極限の神々。

 幽玄を飾りながら、軽やかに、はじけ合う。


 弧を描いた残像が、

 電流と火花を咲かせて、

 キラキラと歌う。


 認知できない空間のどこかで、凶悪なエネルギーをぶつけあう。

 残像の終焉。

 世界のメモリが焼き切れて果てる。

 認知が立場を見失って、気付けば、空間のあちこちがツギハギだらけ。

 炸裂し、弾けて、拡散する。


 『歪んだ神話』と『ズレた芸術』が重なり合い、

 極彩色の幻想が螺旋の中で溶けあう。


 止まらない。

 次元が悲鳴をあげている。


「強くなったな、ソンキー。……本当に強い! お前をそこまで引き上げたトウシには、心の底から感嘆する!!」


 本音だった。

 本気で思う。


 伝わったのだ。

 言葉にしていないところで。

 深く、互いの奥へと潜っていく。



「ああ、すげぇなぁ……ほんとうに、すげぇよ、トウシ……今までの永い神生の中で、さんざんっぱら、多種多様な無数の天才を見てきたが……間違いなく、お前がナンバーワンだ」


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る