超えたぞ、無粋な壁を……やっと……っ!

超えたぞ、無粋な壁を……やっと……っ!


(タナカトウシ……お前の『全部』を引き出す。わずかな余白もなく、目一杯、限界の限界まで)

(ソンキー、あんたの『全部』はもっと大きい。あんたが積み重ねてきた全てを、ワシの超知性で、開花させてやる)


 ソンキーの導き。

 トウシの導き。

 互いが互いを導きあって、まばゆい光に届く。


(タナカトウシ、お前はもっと先に行ける)

(ソンキー、あんたの限界はここやない)


(お前の全部と! 俺の全部を!)

(あんたの全部と! ワシの全部を!)





((合わせて!!))





 跳ねて、

 弾けた。


 魂魄の鳴動。


 ――調和していく。








「――『真・究極超神化6』!!」








 辿り着いた輝きは、

 神の王に匹敵するまばゆさ。


 極限を超えた神と、同じ世界に、二人は立つ。


「っっ……こ、超えた……超えたぞ……無粋な『5』の壁を……やっと、超えた……いや、超えただけじゃなく、その先まで……辿り着いた」


 長く超えられなかった、究極超神化5の壁。

 その壁の向こうに、ソンキーは、ついに辿り着いた。

 壁を砕き、その勢いのまま、さらなる上の領域までかけあがった。


 タナカトウシという魂魄のブーストを得たことで、

 ソンキー・ウルギ・アースは、ついに、運命の限界を超えた。


「待たせたな、センエース。この上なく尊き命の王よ。『お前が最も偉大な神である』という『事実』に対して疑問はない。しかし、最強か否かという点に関しては懐疑的だ。お前は強いが、俺だって強い」


「ああ、お前は強いよ。当たり前だ。この俺に憧れを抱かせた神が、弱くあってたまるか」


「……さあ、決めよう。どちらが最強の神なのか」


「それは、すでに決まっている。俺が、最強だ。今から始まるのは、お前が、どれだけ俺に近づけたか……それを試すだけの時間」



 ――言葉の終わりが合図となって、

 気づいたときには、

 ズガンと拳が肉を裂いていた。

 骨が軋んで、オーラがはじけ飛ぶ。


 ぶつけあっているのは、間違いなく拳なのに、

 殴り合いとは思えなかった。


 死が炸裂し続ける。

 恐怖は感じない。


 華々しくもあったし、泥臭くもあった。


 互いに、いつもより一歩、深く潜り込んで、威風そのものを叩きこむ。

 発生した奇怪な風に、その身をゆだねて、フワリと回避。

 粛然として、ステップ。

 端厳(たんげん)な返しで、オーラのバリアにメスを入れる。

 たがいに頑強(がんきょう)。

 清廉(せいれん)な堅固。


 ――ありとあらゆる全てが交差する。

 美しく、儚い、命が輝く。


 『幻想に浸食された一瞬』が運命を砕いていく。


 数え切れないジオメトリの嵐。

 神域の暴力が踊り狂う。

 迅雷の神速。

 次元断層が軋む。

 悲鳴をあげている。

 限界を超えた加速が世界を切り裂く。




 途中で、

 ふいに、


「タナカトウシからのメッセージだ。そのまま伝える……『やっぱり、お前、ワシが知っとるセンエースやろ』……とさ」


「なんで、そう思う?」


「……『なんとなく、そんな気がする』……だとよ」


「アホの答えだな」


「自分でもそう思っているようだ」




「……はっ……」




 目を細め、少しだけ、頬をゆるませて、

 センエースは笑った。


 ――きっと、何かが繋がった気がしたから。

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