ネクロバグ・オーラドール・アバターラ。

ネクロバグ・オーラドール・アバターラ。



 虹宮は折れずに抗った。

 『奇妙なほどに膨れ上がり続ける勇気』を最大の武器にして、

 必死になってネオバグに立ち向かった。


 魂魄のわめきがうるさい。

 無限に強くなれる気がした。

 一秒ごとに、オーラの質量が増していく。


 この戦いで、虹宮は強くなった。

 爆発的な、存在値の上昇。


 ――しかし、


「殺せる! まだ、殺せる! 危なかった! もう少し、貴様が育っていたら、危なかった! だが、今なら、まだ、殺しきれる!」


 焦りはした。

 ヒヤリと、芯が冷たくなった。

 しかし、現実を計算しつくすと、ネオバグはニタリと笑みをこぼす。

 ――殺しきれる。

 まだ、虹宮は、自分という驚異に届いていない。




「ふざけた発言だな! 勘違いもはなはだしい! おれはまだ飛べる! ここは、まだ、『おれ』の途中! おれなら、お前を超えられる!!」




 オーラに包まれた拳をかわしあう中で、


「ああ、貴様の底は、まだまだそんなものではない! 驚異的な資質! 感嘆に値する。いつかは、俺を超えることも可能だろう! しかし、現実、不可能! なぜなら、貴様は、その『いつか』が来る前に死ぬから! 今日、ここで、俺に殺されるからぁああ!」


 そう叫ぶと、ネオバグは、パァンッと音をたてながら両手を合わせて、



「ネクロバグ・オーラドール・アバターラぁあ!!」



 叫ぶと、

 ネオバグの分身が、9体出現した。


 全部で10体になったネオバグ。

 超特別仕様の最高位分身技。



「これが俺の魂魄に刻まれた『究極最大の切札』だ。俺の『特製オーラドール』は、ただの気人形とはわけが違うぞ。俺だけが使える、完全なる俺の分身。全ての俺を殺しつくさない限り、決して消滅しないフルバグチート! さあ、『闘神の影を背負う者』よ……10体の俺を、殺し切れるかぁ!」



 凶悪な性能を有する10体の敵を前にして、

 虹宮は、


「1体でもギリギリだったのに……いきなり10倍か……地獄だな、めまいがする! 心が狂いそうだ! なのに!」


 グっと腹の下に力を込めて、


「――『まだ終わりじゃない』と、おれの中で、誰かが叫んでいる! へし折れてしまいそうなおれの心を、『おれの中の誰か』が支えてくれている! おれひとりではとっくに折れていた! だけれど、おれは! まだ!」


 拳を強く握り締める。

 虹宮は!


「お前を乗り越えれば、おれはおれ自身を強く認められる気がする!」


 10体のネオバグに対し、今の虹宮に出来る全てをぶつけた。

 限界などとっくに超えている。

 だが、虹宮はとまらない!

 虹宮の中の『誰か』が、狂気的な『もっと』を叫び続けているから!!


「お前を倒し、胸を張って叫ぶんだ! おれが! このおれこそが、トウシくんのバディだと!!」


「貴様が背負う『神の影』は凄まじい! 無限の可能性! 狂気の精神力! 貴様が胸に抱く神は、おそらく『そこらの闘神』などではなく、最果てに立つ究極の神! 認めよう! 戦慄する! だが、貴様自身が『究極の神』というワケではない! 貴様では届かない世界を教えてやる!」


 『秒』を飲み込んで、熱が濃くなっていく。

 瞬間を切り取って、狂ったように、影たちは踊る。

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