史上最高の弟子。

史上最高の弟子。


「あのガキ……なんか、めっちゃ強くなってまちぇんか? ちょっと前まで、ただのモブだったのに……これは、どういうことでちゅか?」


「いや、お前もプロパティアイで見れば分かるだろ。『虹宮憲治』が、なかなかハンパない『プラチナスペシャル』を持っているってこと」


「あんなショボガキ、目を凝らしてまで見たくないでちゅ」


「……あ、そうですか……」


 センは面倒臭そうに溜息をつく。


 第一アルファには、『隠れスーパースペシャルホルダー』がウジャウジャいる。

 最高特性のゴールドスペシャルホルダーの数は全世界でダントツ中のダントツ。

 そんな『第一アルファ人』でも、

 数百万~数千万人に一人程度の割合でしか保有していない『究極の資質』、

 ――それが『プラチナスペシャル』。



「虹宮のプラチナスペシャルは『史上最高の弟子ケンジ』。やつを導いた『師』の『特性の一部』が発現するようになるという、とんでもチート」


「……『世界最強』に師事すれば、それだけで、あのガキも世界最強になるってことでちゅか?」


「そういうわけではない。チートの発現には、あいつ自身の努力が必要不可欠。そもそも、『師事する』という事に関する定義が厳しい……というか、ド直球の意味で『努力』を必要とする」


「わけがわからないんでちゅけど」


「たとえば、あいつが、『トウシとの一打席勝負より前の時点』で『今日から俺は、最強神の弟子です』と宣言したところで、やつのプラチナスペシャルは発動しなかった。『史上最高の弟子ケンジ』の視点における『師事するって概念』の『定義』は、口約束で成立するフワっとした『なあなあ』ではなく、気血と運命で結ぶ魂魄の誓約」


 『弟子にしてください』『OK』『サンキュー』では成立しない。


 『本質が問われる場面』で『言葉にするかどうか』は、あまり意味をもたない場合が多い(絶対的ではないし、むしろ逆に『言葉にするか否か』が大事になってくる場面もあるが)。

 実質的なところ、『師匠の許し』を得る必要すらない。


 『己の芯』が、事実上、『対象』と『師弟関係にある』か。

 問題となるのは、その一点のみ。


「俺に想いをぶつけ、俺に奪われ、俺を知り、それでも、俺に抗い、そして、結果、どこかで俺に憧れた。あの瞬間、あいつは、『トウシと共に俺を倒したい』『トウシの隣で俺を超えたい』と、本気で願った。そういう一連を経たことで、魂魄の芯が『センエースに師事する』と覚悟した。結果、やつのプラチナスペシャルは発動した」


 『師匠を愛する』『師匠の御世話をする』『師匠から手取り足とり教えてもらう』

 これらも、もちろん、弟子特有の性質だが、しかし、『それが全て』というワケでも、それがなければ弟子ではないというワケでもない。


 『倒したいと願い、その影を追い、必死に努力する』という気概があるのであれば、『その対象』は師匠たりうる。


「ここから先、あいつの魂が『俺を超えたい』と願い続ける限り、あいつは俺の弟子で在り続ける。究極超神センエースの、史上最高の弟子に」


「……あれ、てことは、あのショボガキ、オイちゃんの孫弟子なんでちゅか?」


「やったね、シューリちゃん。家族が増えたよ」


「いらぁああん!!」


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