俺は誰だ。ダレだ……だれだ……

俺は誰だ。ダレだ……だれだ……



 ドラゴンスーツを着た8名の神話狩りは、

 『それぞれに出来る全て』をネオバグにぶつけた。

 純粋に、教科書通りに、

 練り上げた魔力とオーラを叩き込む。


 ――その結果、


「ぐ……ぬっ――」


 ネオバグは、追い詰められていく。

 どうやら、ネオバグは、フェイクオーラの性能が高いだけで、

 能力自体は、そこまで高くなかった。


岡葉「いける! スピードもパワーも、そこまで大したことはない!」

ナツミ「ええ、これなら、いくらでも殺し切れます!」



「か、完全になった俺を! ナメるなよぉおおおお!」



 追い詰められたネオバグは、そこで、一気にオーラを膨らませた。


 圧力がさらに増す。

 だが、それは一瞬の出来事で、


「あっ……ぁあ……ち、力が……抜けていく……なんで」


 ふいに、ネオバグはフラつきだして、


「せ、生命エネルギーが……熔ける……きょ、共鳴率が足りない……いや、それ以前に、この殻(から)は、心も魂魄も脆すぎる……ぁあ、ダメだ……もたない……」


 ついには、ガクっと膝から崩れ落ちたネオバグ。

 そんなネオバグに対して、

 神話狩りのメンバーは容赦なく、


「なんだか知らないけど、ピヨっている! いまがチャンス! 総攻撃ぃい!」


 岡葉の合図で、全員が、最大級の火力をネオバグに投入した。


 その結果、 




「ぐっはぁああ!!」




 断末魔を上げて、たおれこむネオバグ。

 ボロボロの姿でピクリともしなくなった。


 かなり、あっさりと倒すことができた現状を受けて、神話狩りの面々は、


ナツミ「なんだ、こんなものですか」

岡葉「楽勝!」

ツカム「最も難しい難易度とは思えないレベルでしたね」

虹宮「どうやら、おれたちは強くなり過ぎたらしい」

雷堂「ふっ……自分の才能が恐いわ」


味崎「やめろ、お前ら、フラグ建てんな!」


 味崎の叫びも虚しく、



「ごぽっ……」



 ネオバグが黒い血の塊を吐きだした。


 全員が、一斉に警戒する視線の先で、

 その黒い血の塊は、ウネウネとうごめきだし、

 ネオバグの体を包んでいく。


 黒い血に全身を包み込まれたところで、ネオバグは言う。





「……カルマトランスフォーム・モード『死夜の勇者』……」





 すると、

 カっと、黒く光り輝き、


 気付いた時には、


味崎「……おいおい、なんか、すげぇヤバそうなスタイルにチェンジしちまったぞ……」

岡葉「こ、今度も見かけ倒しでありますように……」


 ネオバグは、見る者の心をザラつかせる禍々しい姿となって復活した。

 冷たくて黒い炎を纏う狂気的な姿。

 ――ネオバグは言う。



「意識が消えていく……俺だったはずの『何か』は消えてしまった。俺はもう俺じゃない……俺はダレだ……」



 バッキバキの目で、

 虚空を睨みつけ、



「俺は……世界の欠陥……その具現……不可避の歪み……」



 血走った目で、よだれをたらしながら、


「……コスモゾーンを……喰らいつくすもの……コスモの影、コスモのひずみ、コスモの闇、コスモの――」



味崎「おい、やべぇぞ。コズミック・サイコになっちまった」

ツカム「これは、精神病院に丸投げ案件ですね。僕たちの出る幕はありません」






「俺は、コスモの……あ、あぁ……きぃぇえええええええええええ!!」

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