神の王VS中学三年生。

神の王VS中学三年生。


「え、マジで言ってんでちゅか? うーわ、この男、ヤッバァ……神の王なのに、現世の中学生と、本気で闘うつもりとか……ドン引きぃ」


「やかましい。お前だって見ただろ、あいつのエゲつない天才ぶり。俺、今まで、あいつに心を折られた事を恥だと思って生きてきたけど、とんだ勘違いだったわ。折られて当然だった。凡人の身で、あんなド天才に対抗できてたまるか! 考えてもみろ。普通、第一アルファで頭脳系の天才だったら、戦闘系の資質的には中の下くらいってのが相場なのに、あいつは、戦闘面の才能でもキッチリと『キンキラ一等賞』だぞ。なんだ、あの存在からしてチートの変態は。もし、あいつと俺が同時に、異世界生活のスタートを切っていたら、確実に、あいつが神の王になってたと思う。で、俺、あいつの荷物持ちとかやってたんじゃね? で、揉み手のしすぎで、指紋がなくなってたんじゃね?」


「……卑屈になりすぎでちゅよ……まあ、でも、確かに、なかなかの異常種である事は事実でちゅけどねぇ……」


「はい、もう決めた! 俺がやる! 神の王としての力をフルで活用して、あいつをボコボコにして、この憂さを晴らす! 決定!」


「……」


「おいこら、そこのナンバーワン女神……なに、とんでもねぇ目で見てくれてんだよ。やめろ、やめろ、その目! 自殺したくなるだろ!」


「あのガキと勝負するのは別にいいんでちゅけど、やるならやるで、色々と『徹底』してくだちゃいよ。オイちゃんの弟子として……『全世界で最も尊き偉大なる神の王』として、恥ずかしくないよう、きちんと――」


「ああ、うるさい、うるさい! 言われなくても分かってるよ! 今からやろうと思っていたんだよ! そんなにうるさく言われたら、逆にやる気がなくなる!」


 思春期の中学生みたいなセリフを吐いてから、

 センは、


「全プログラムを変更……ここからは、タナカトウシを徹底的に鍛え上げる。限界を超えた指導体制」


 そうつぶやきながら、モニターにうつるトウシを睨みつけ、


「……トウシ、これから、お前は、多くの地獄を見る。だが、その全てを乗り越えた時、お前は、俺と対峙できるだけの器を得るだろう」


 やすむことなく、超速でコードを書き換えていく。






 ★


 バロールとの闘いを経て、

 トウシは、



(あの猿顔(バロール)を通して、神がハンパなくヤバいってことはよく分かった)



 この世界の広さを理解した。


 『絶対に☆Xが当たる裏技』という圧倒的なチートを持ってしても、そう簡単には届かない存在。


(あのバロールとかいう猿顔……本当に強かった。……正直、あのまま闘っとったら、普通に負けとったやろな……)


 タイムアップがきてくれて、実は心底からホっとしていた。

 トウシは、ソンキーの手ほどきを受けたことで、『武の基礎』を理解したが、

 『基礎の神髄』に触れただけで完全な達人になれるほど、闘いの世界は甘くない。


 『この道の神髄』は、無数に在る。

 だからこそ、『極めていった神髄』の数が器になる。


(今のワシやと、神どころか、バロールにも勝てん……けど、ワシは強くなれる。さらなる最適解を求めて、レア強化アイテムを回収しまくって、その中で、武を磨いて……そんで、必ず、神を倒し、生き残ったる)



 決意を新たにしたトウシ。


 そこで、

 チーンと音がして、エレベーターが開いた。

 辿り着いた場所は6階。


 6階は、それまでのフロアとは違い、

 どこか、スタジアムのような造りになっていた。


 エレベーターを出ると、そこは、無数の席がずらっと並ぶ観客席で、

 目の前には、野球のグラウンドよりも広いステージが広がっている。

 と、ちょうどそのタイミングで、



 三人のMDデバイスがブルブルっと震えた。



 手にとって、確認してみると、

 何やら、『お知らせ』が届いていて、

 その内容は、


『これより、6階、闘技場フロアにて、イベントを開始します』


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