ソンキー×トウシ。

ソンキー×トウシ。


 その直後、ビリっと、

 トウシの頭脳に重たい電流が走った。


 すると、全身が躍動した。

 全ての細胞が沸騰する。



 ――『命の道』が見えた気がした。



 驚くほどしなやかに、

 両腕と両足が駆動する。


 複雑奇怪なダンス。

 全身に存在する全ての稼働域が解放されたような気がした。


 『実演』は、ほんの一瞬だった。


 ただ、体の動かし方を、ほんの一瞬、教わっただけ。

 質素な実技を体験しただけ。


 だが、トウシは、



「――なるほど……」



 理解してしまった。

 ほんの一瞬の、あんな『手抜き極まりない簡素な手ほどき』で、

 トウシは、命と体躯の動かし方――その神髄に辿り着いた。


 ソンキーとトウシ。

 この二人だったからこそ成し得た超次の化学反応。

 この二人でなければ、絶対にとどかなかった境地。



 ――バロールは、


「っっ?!」


 急激に膨れ上がったトウシの圧力に動揺した。

 『中学生相手』に怯える事などありえないが、

 しかし、


「バカな……」


 困惑は止められない。


 先ほどまで――

 ほんの数秒前までハイハイしていた赤子が、

 いきなり、立ちあがって、

 ダダダっと、急に、100メートルを8秒で走りだしたら、誰だって驚く。


「信じられない……なんだ、貴様……」


 動揺しているバロールに、

 トウシは言う。


「……『武の基礎』が少しだけ理解出来た今……あんたの強さが、よりハッキリと理解できる。ものすごい強さ……ほんまに、ハンパやない。積み重ねてきたのが、ズシンと伝わってくる。チートとか裏技とかやなく……ただ、純粋に、真摯に……命を削って、魂をすり減らして……『高み』に『辿りつこう』としてきた痕跡が、ハッキリと分かる……目眩(めまい)がするほどの、研ぎ澄まされた道程……ワシは、あんたを尊敬する」


「……」


「あの鬼畜な神様の事を『崇める』とかは到底出来んけど……ホンマに、あの神様が、あんたよりも遥かに強いというんなら……きっと、『その強さに至たったプロセス』は、あんたが積み重ねてきたもの以上なんやろう」


「……当たり前の話だ。及ぶべくもない」


「なら、その過程は、そこに関してだけは……『この上なく尊いもの』やと、ワシも、心の底から思う」


 その発言を受けると、

 バロールは、


「……ふん」


 と、小さく鼻を鳴らしてから、


「タイムリミットだ……」


 そうつぶやいて、

 その場からシュンと姿を消した。




 ★




 トウシの覚醒を目の当たりにしたセンは、


「マジか、あのボケ……」


 辟易とした顔になって、


「ウソだろ……学校の勉強だけじゃなく、戦闘でも天才だってのか? ……ふざけんなよ、なんだ、あいつ……神の子か?」


 ぶつぶつと、世の不公平を嘆きながら、

 センは、


「俺は、中坊の時、アレとガチで競おうとしていたのか……今思うと、本当に滑稽だな……え、てか、これ、大丈夫か……あんな変態に、ゼンのやつ……勝てるか? ……えっと、すいません……む、無理だと思います……」


 アッサリと折れて、そうつぶやいた。


 唐突に訪れる、人生2度目の挫折!

 同じ相手に、2度折られる!

 センエースは2度死ぬ!


「……まあ、負ける経験を積むってのもアリかぁ……いや、でもなぁ……」


 そこで、天を仰ぎ、


「いっそ……俺があいつとやるか?」


 ボソっとそうつぶやいた。


「え、マジで言ってんでちゅか? うーわ、この男、ヤッバァ……神の王なのに、現世の中学生と、本気で闘うつもりとか……ドン引きぃ」

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