初イベント。

初イベント。


 エレベーターを出ると、そこは、無数の席がずらっと並ぶ観客席で、

 目の前には、野球のグラウンドよりも広いステージが広がっている。

 と、ちょうどそのタイミングで、三人のMDデバイスがブルブルっと震えた。


 手にとって、確認してみると、

 何やら、『お知らせ』が届いていて、

 その内容は、


『これより、6階、闘技場フロアにて、イベントを開始します』



 という、簡素なメッセージ。

 それを確認した直後、トウシたちの周囲に、

 他の参加者たちが、一斉に、瞬間移動してきた。


 唐突な瞬間移動に戸惑いをみせながらも、この程度のドッキリにはもう慣れてしまっているのか、さほど気にしている様子はなく、みな、


「この人数を一斉に瞬間移動させる事とかも出来るのか……すげぇな」

「さすが、神様。なんでもありだな……」

「イベントかぁ……どんなんだろうなぁ……」

「これ、もしかして強制参加?」

「だろうな」

「イベントで成果が出せなきゃ死ぬとかじゃないだろうな……」



 ちなみに、瞬間移動してきたタイミングには若干のラグがあったので、

 『先にいたトウシたち』に対して、彼らは、

 『ちょっと早めに瞬間移動したのだろう』ぐらいの感想しか抱かなかった。


「イベントかぁ……恐いなぁ……」

「……スマホのイベントみたいに、こっちにとってプラスになる系だといいんだけど」

「逃○中のミッションみたいな、『マイナスを防ぐために頑張らないといけない系』だったらどうするよ」

「うわぁ……そっち系の類だと、しんどいなぁ……」

「俺、あの番組を見ている時はいっつも思うんだよなぁ……もし、俺だったら、隠れたまま動かないって……てか、挑戦するヤツ、頭がおかしいって……」


 それぞれ、感想をつぶやいていると、

 全員の前に、案内役であるアダムが出現して、


「これから開始されるイベントに参加できるのは7人。今から、お前ら全員で話し合い、イベントに参加するメンバー7人を選抜しろ。ちなみに、このイベントをクリアできなければ、全員死ぬから、選抜メンバーは慎重に選べ」


 アダムの説明を受けて、当然のように、全体がザワついた。


「はい、やっぱり、死ぬ系~」

「殺意MAXすぎるだろ、このデスゲーム……」

「選んだ7人に全員の運命を託さないといけないのか……厳しいな」

「とんでもないプレッシャーだよな」

「俺はむり。弱いし、プレッシャーにたえられない」

「ここは、一致団結して、一番いいメンバーを選ぶべきだ」


「アダムさん。ちなみに、そのイベントのクリア報酬とかはありますか?」


 問われて、アダムが、


「選抜メンバーには、かなりのレア強化パーツが贈呈される。当然、他の連中には何もない」


「……かなりのレアパーツか……」

「ここで選抜メンバーとして出場して、イベントクリアできれば、『願い』に一歩近づくって事ね」

「だが、負ければ全員死ぬ……」

「吐き気MAXのプレッシャーを乗り越えられるか否か……」

「運命の二択……全員の命を背負うというプレッシャーの中で勝利して、レアアイテムを得るか……それとも……」

「結局のところ、一番強い7人を選ぶしかないんじゃないか?」

「ああ、そうだな」


岡葉「とりあえず、いったん、全員の戦力を確認しておこうか」


 と、そこで、

 岡葉が、MDデバイスを使って、全員の携帯ドラゴンの強さをチェックしようとしたが、


「ん……起動しない……」


 その様子をうけて、アダムがいう。


「この6階では、ステージ上以外で携帯ドラゴンの能力を使う事はできない」




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る