100連ブンまわし。

100連ブンまわし。


「アンノウン! 神様の攻撃と同じで、見えませんでした!」

「――どわ! そら、あかんな!」


 一瞬で状況を理解すると、

 トウシは、即座に、逃走ルートを検索する。


「そんなに急いで逃げようとするな。実を言うと、かなり退屈していたんだ。少しは相手をしてくれ」


 言いながら、バロに突撃命令を出すバロール。


「きゅい!」

「きゅいっっ!」


 バロの攻撃を、必死に受け止めようとしたエルメス。


 一撃目は、なんとかガードしたのだが、

 二発目のシッポによる攻撃は、直で当たってしまい、


「きゅぃ」


 吹っ飛ばれて、悲痛の声をもらした。


「アカン、アカン! あいつの携帯ドラゴン、強すぎ!」


 と、そこで、


「蜜波ハルカ!」


 トウシは、後ろから、ナツミに、肩をゆすられて、


「蜜波ハルカ! 覚えましたか?!」


「な、なんやねん、急に――」


「母の名前です。クリアできたあかつきには、どうか、私の母、蜜波ハルカの病気を治してくださいと、神様にお願いしてください!」


「……」


「私が足止めします! 命がけであなたを守ります! あなたの『命の恩人』を必ず『遂行』してみせます! ですから! どうか! よろしくお願いします!!」


 そう叫んでから、

 ナツミは、


「ツナカン! これが最後! だから! あなたの全部をちょうだい!」


 自身の携帯ドラゴンに、最後の命令を下す。



「トランスフォーム!」



 ナツミが抱いていた『自信』の根拠。

 携帯ドラゴンのトランスフォーム機能。


 それは、携帯ドラゴンをスーツ状態にして闘えるようになる、いわゆる変身技。

 ハッキリ言ってしまえば、仮○ライダーになれるスキル!

 オートで闘わせている状態よりも、遥かに強大なエネルギーを捻出できるようになる最強の切札!!

 トランスフォームを積めるようになる強化アイテムは、最低でも☆9以上の超レアアイテム!

 しかし、彼女がログボガチャで引き当てたキャラパーツ『サイ』は、高性能なアナライズ能力だけではなく、トランスフォームも常備されている超優秀なレアアイテムだった。

 ソンキーほど圧倒的ではないが、文句なしの☆X強化アイテム。


「絶対に足止めします! ですから! 絶対にクリアしてください!」


 そう叫んで飛び出すナツミ。

 その姿を見て、バロールは、


「いい気迫だ……」


 ぼそっとそう呟いた。

 直後、雑念を振り払うように、首を横に振って、



「まあ、無駄だがな……貴様程度のザコでは、どうする事も出来ない」



 突撃してきたナツミの攻撃をアッサリと回避して、


「きゅいっ」


 ドスンとカウンターを入れるバロ。



「ぐふっ!」



「トランスフォーム状態なら、お前自身にもダメージは入るな。……くく……一発では仕留めてやらないぞ。ジワジワとなぶり殺してやる」



「望む……ところ……必ず……時間を稼ぐ……」



 その覚悟を受けて、バロールは、ほれぼれしたような顔で、


(本当に、素晴らしい気迫………ぁあ、いや――)


 そこで、また首を横に振って、


「楽しいオモチャだな。しかし、いつまで持つかな」


 悪役らしい声でそう言って腕を組み、余裕の静観を決める。


 必死で抗っているナツミと、

 そんなナツミをボコボコにしているバロ。



 ――その地獄絵図を見ていたトウシは、


「勝手なマネしくさって……」


 ぶつぶつと、


「お前に頼らなければ何も出来ない……とでも思ってんのか……んなワケないやろ、ぼけぇ。ワシを誰やと思てんねん」


 その発言に対し、ジュリアが、


「知らん。あんた、誰?」


 そう問いかけてきた。

 確認作業。

 それは、すなわち、

 自己の正式な再認識。



「タナカトウシ。ちょっとだけ天才やけど、完全陰キャでフルボッチな異常性格者。かつ、携帯ドラゴンのステランキングでナンバーワンになった男」



 そう発言してから、


「裏技を使ったから……それ以外の理由はないけれども……しかし、ナンバーワンになったという事実に変わりはない。そして、その裏技は、今も使える。――なら! 結論はつまり、そういうこと!」


 MDデバイスで、ガチャを選択し、


「ここまでの収益……ザコとボスを叩き潰してきた事によるMDPが全部で『30000』ほど。というわけで、さあ……100連ブン回し……いってみよかぁ」



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