最効率の攻略法。

最効率の攻略法。



ゼン「……『効率』を求めるとなると、カジノかガチャの二択になってくるんだよなぁ……」

シグレ「そうやな。ただ、カジノするにもガチャするにも、課金ポイントがないと話にならへんで」


「ん? なんだ、お前ら……もしかして、この妙な試験について詳しかったりするのか?」


「詳しい……んーまあ、詳しいってほどでもないが」

「ホンマに詳しい人やと、知識やばいからなぁ」


 どの界隈でもそうだが、ガチ勢のディープさはエゲつない。

 『一日十数時間プレイを年単位で継続』とか『数千万や数億の課金は当たり前』とか。

 そんな連中と比べれば、ここにいる二人(ゼン&シグレ)など『ライト層の表面をただよっているボーフラ』でしかない。


「何か知っているなら、説明しろ」


「説明……どういえばいいか……」


「詳しい説明はいらん。フーマーには『妙なアイテム』や『風習』が山ほどあった。どうせ、これも、その中の一つってだけだろ? だから、概要はいい。とにかく、この試験の攻略法を、知っているだけ教えろ」


「……えっとな……じゃあ、まず――」


 そこで、ゼンは、ハルスに対し、自分が知っている『携帯ドラゴンの攻略法』を伝えた。

 『理解できないであろう範囲(スマホゲーに酷似しているという点)』はなるべく避けて、『携帯ドラゴンを高速で強くするための方法』だけを選別して伝えていく。


 すると、ハルスは、この携帯ドラゴンというゲームを一瞬で理解して、


「その課金ポイントが重要だな……ようするに金で強化パーツを買うってことだろ……そのポイントを買うための金に、手持ちの金貨がそのまま使えるのかどうか……」


「その辺が、現状やと、いまいちわからへんねんなぁ」


 喋りながらも、店に向かっていた一行。

 街のいたる所に店は構えられており、選ぶだけでも一苦労。

 テキトーに、近場の店に入ると、中は、祭りのクジ屋のようになっており、

 奥に店主が一人いて、その周辺に、将棋の駒のようなチップが山ほどおいてあった。


 チップには、特に何も書かれていないが、

 MDデバイスでスキャンすると、どのような効果がある強化パーツなのか一発でわかった。


「……一番安いのが……100MDPで、効果は『攻撃力を1%上げる』か……」


「MDP……ポイントの形式は一緒やな」

「そうだな……スマホ版だと、1円=1MDPだったが……」


 そこで、ゼンは、店主に、


「あのさぁ、あんた、MDPを入手する方法って知ってる?」


 言ってから、心の中でつぶやく。


(頼むから『MDP? なんだそりゃ』って言わないでくれよ……お前、MDPで商売してんだからな?)



「MDPを入手する方法は、大きくわけて三つある。この世界で入手したアイテムを売る。大会などのイベントに参加して賞金を得る。クエストをこなして対価を得る」



「……非常にAI的で丁寧な対応、ありがとう」


 感謝の念をつげてから、

 ゼンはイタズラ半分で、


「ところで、あんた、神様についてどう思う?」

「神様? なんだそりゃ」

「うるせぇよ」


 半笑いで言葉を返すゼン。

 約束されていた『お約束のやりとり』を経てから、


「ちなみに、MDPって、この金貨と交換できる?」

「できない」

「……はい、了解……」


 そこで、ゼンはハルスと目線をあわせ、


「というわけで、今は買えないな。完全に無駄足だ」


「……『価格』と『大体の上昇率』と『MDPの入手方法』が分かったんだ……充分な成果だろ」


 言って、ハルスは、さっさと店を出る。

 そのあとについていくゼンとシグレとセイラ。


 セイラが、


「ハル、これからどうする?」


 テテテっと、ハルスの袖をつかみながら、そう声をかけたセイラ。

 心なしか笑顔になっている。


「なんか、お前、楽しそうだな」


「うん、じつは、ちょっと楽しいなぁって思っているの……ハルが言ったように、このルールなら、私でも役に立てそうだし、痛い想いはしなさそうだし、それに、みんなで一つのことに向かって頑張っているなぁって感じられて、だから――」


「ああ、もういい。長い」


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