ランキング1位。P型センエース2号。

ランキング1位。P型センエース2号。



 脳汁に浸りながら、MDデバイスをいじっていると、

 そこで、センは、


(ランキング……一応、確認しておくか。この段階だと、あまり意味ないけど)


 スマホ型マジックアイテム『MDデバイス』には、周囲にいる者の携帯ドラゴンの性能を見通す力や、ランキングを確認する機能なんかもあった。

 名前と携帯ドラゴンの強化値が表示される仕組み。


 そんなランキングを確認してみると、


(……状況的に、『さっきの捕食戦闘を終えたヤツが1位だろう』と思ったが……違うじゃねぇか。なんでだよ。つぅか、おいおい……この名前……)


 2位の所に、先ほどの『携帯ドラゴンCのマスター』の『受験番号』と強化値が表示されており、

 1位には、



―――――――――――――――――――――――


 『ランキング』


 【1位】 『P型センエース2号』  『アンノウン』

 《2位》 『78番』        『3%』

 「3位」 『6番』         『1%』

 「3位」 『8番』         『1%』

 「3位」 『25番』        『1%』

 「3位」 『32番』        『1%』


―――――――――――――――――――――――



 ――『P型センエース2号』という名前が表示されていた。




(ずいぶんと面白い演出かましてくるじゃねぇか……)


 心の中で、ボソっとつぶやくセンエース。


(俺ふくめ、他のやつは全員、受験番号で表示されてんのに、こいつだけ、このふざけた名前で表示されている。そこにはどんな意図があるのか……)


 色々な思案が頭の中で浮かんでは消え、


(この2号が、かりに1号と同じくらい厄介だとすると……この状況では、ちょっとマズいな……)


 と、そこで、センの肩に顎をのせる形で、センのMDデバイスを覗きこんできたシューリが、


「1位のところに……不愉快な名前が載っていまちゅね」

「……ああ」


 センの返事を受けたシューリは、

 『心底から滲み出る不快感』を隠そうともせず、


「この『センエース』って名前を見るだけで虫酸が走りまちゅ」

「姉さん、できれば、『P型』ってところにムカついてくれません?」

「なんでちゅか、このふざけた名前は。センエースゥ? かぁあ~。こんなイカれた名前がついたクソ野郎は、きっと、性格が歪んでいて、魂が腐っていて、心が病んでいるに違いありまちぇん」

「……まあ、あながち間違ってはいないが……」


 そこで、アダムが、


「いかがいたしますか、主上様」


 少し心配そうに声をかけてきた。


 その不安を払拭するように、

 センはニっと力強い笑顔を浮かべ、


「冒険者試験の二次試験。……思っていたよりも、はるかに面白いゲームになりそうだ。退屈するよりずっといい。めいっぱい、楽しませてもらう」




 ★




 センが力強く微笑んでいた頃、

 『ゼン』も、ランキングを確認していて、


(P型センエース2号……なんだ、これ……)


 自分の本名を発見し、少し動揺していた。


(もしかして、俺のこと……いや、じゃない、よな……んー、ようわからんな……つぅか、二位以下は、全員、受験番号で表示されているのに、なんで、こいつだけ……もしかして、一位になると名前が表示される? ……仮にそうだったとしても、問題なのは、そこじゃなく……マジで、なんだ、この名前は……俺(センエース)の、P型の……2号? ……ツッコミどころが多すぎて困惑がとまらねぇよ……それとも、俺はまったく関係ない? ただの同姓同名のP型の2号? ……ナゾにナゾを積んでくるんじゃないよ、まったく……)


 色々と考えてみたが、


(今かんがえても分かることじゃないな……とりあえず今は、それより……)


 P型センエース2号については保留にして、



「で、どうする?」



 尋ねると、ハルスが、


「この試験内容なら、数の暴力で有利を取れる。本人の戦闘能力が加味されないから、セイラも足でまといにならない。とにかく、全員の龍を鍛えて、個人行動しているやつに対し、ハジから急襲をしかけていく。チームで行動しているやつは基本シカト。こっちもチームだから、『相手チームがよほどのバカ』じゃない限り、交渉ですませられるだろう。一人しか受からない試験ならともかく、三次に進める枠は50もあるんだからな」


 というプランを出した。


 その意見に対し、ゼンとシグレは、


「恥も外聞もない、非常に陰湿で性格が悪い最高の作戦だ」

「そうやな。騎士道精神の欠片もない、最低の効率厨ハメ技作戦……つまり、最高や」


「……お前らと行動できる幸せを、俺は、いま、ヒシヒシと感じている」


 ゆるやかな皮肉合戦。

 空気が、一瞬ピリついたが、


ゼン「いや、まあ、実際、手堅い作戦だと思うぜ」

シグレ「そうやな。合格が最優先やから、多少汚かろうが、どうしようが、知ったこっちゃない」


 と、そこで、セイラが、

 ハルスの服の裾をクイクイっとひっぱり、


「ってなると、鍛える方法を選ぶ必要があるんだけど……ハル、どうする?」


 問われたハルスは、

 特に迷う事もなく、


「まだ『効率』的に、どの選択が最善なのか、わからねぇからなぁ……とりあえず、そこらの店に入って、強化パーツとやらのラインナップを確認するのがてっとりばやいとは思うが」





 ※ 一方、その頃、ピーツも同じように、ランキングを確認していた。その結果、自分の名前を発見し、ランキング一位という地位と自分の力を照らし合わせて、


 『P型センエース2号って……もしかして、俺のことか?』

 『なんだ、P型って……で、なにが2号?』

 『まさか、俺は量産型で、他にもいるってか? 「私はたぶん、3人目だと思うから」ってか? いや、2号だから、二人目か……いやいや、0号がいれば、2号の俺は3人目……って、どうでもいいわ、そんなこと』

 『ほんと、冗談にもなりゃしねぇ』

 『このP型なんたらって表記は、ちょっと意味が分からねぇが、とりあえず、俺は一位で間違いないっぽいな。そりゃそうだ。俺の携帯ドラゴンの強化値はケタ違いブッチギリの1790%なんだから』


 といった感じで、『おそらく自分のことだろう』とは認識したが、

 『P型』という点に関してはサッパリだった。

 ただ、バロールたちが言っていた『D型』という言葉を思い出して~~


 ――などといった件(くだり)もあったのだが、

 『導入』を三つの視点でいくと話が進まなさすぎるので、

 オールカットォオオ!


 ピーツの現状、まとめ!

 ・P型どうこうに関しては、結局「わがんね」で終了!

 ・で、現在、普通に、ボーレやカルシィたちと共に二次試験攻略中!

 ・バロールたちに対する警戒として、『ピーツこそ、携帯ドラゴン界では最強』という点は隠していく方向で!

 以上ォオオオ!

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