隠された秘密のシークレットパワー!

隠された秘密のシークレットパワー!


「落ち込みそうになった時、辛い時、苦しい時、悲しい時、下をみれば君がいる! 君は、まさに太陽のような存在!」



「カルシィ、そのへんで、やめてさしあげろ」

「そうよ、お嬢。死体蹴りは、もうやめて」



「誰がライフ0やねん。満タンやっちゅうねん」


 不満げな顔でそう反論したピーツに、

 そこで、ドコスとエーパが、


「とりあえず、お前はもう帰れ。まさか、本気で龍試を受ける訳じゃないだろう?」

「罰ゲームか何かで、ここまでやってきただけよね?」


 先輩としての配慮を見せてきた。

 が、

 ピーツは、そんな二人に、



「あ、ご心配なく。俺の隠された秘密のシークレット・スーパーパワーがあれば、龍試くらい楽勝なんで。今日は、サクっとダントツ一位をとって、それで、冒険者試験を受けるつもりです。そして、悪の宰相ラムドをボッコボコにして、ソルみたいな神様になります」



 などと言い切った。

 それを聞いて、


「……これは、完全に心をやられているな」

「……もう手遅れみたいね。かわいそうに」


 気の毒そうな顔をしている二人の前で、

 真っ青のカルシィが、


「しっかりしろ! 気を確かにもて! 心配するな! 大丈夫だ!」


 ピーツの肩を強めにシェイクして、

 ピーツの目の前でスリーピースサインにした指をちらつかせ、



「おい、見えるか? 何本だ? 何本に見える?」


「いや、あの、別に『錯乱している』とか『朦朧としている』とかではないので――」


「いいから、答えろ。何本だ?」


「3本ですよ」


「うむ……頭がおかしくなっただけで、意識はあるようだな」


「別に頭もおかしくなってはいません」


 などと会話していると、

 そこで、

 教師らしき中年が現れて、




「うわ、なんか多いなぁ……30人以上いるじゃねぇか。今回の試験は、『クア森林でやる』っつってんのに、なんで、こんな集まるんだよ。危機管理能力ゼロの集団か」




 ブツブツとそんな事を言いながら、


「まあ、いいや。別にお前らが何人死のうと、俺の査定に響くわけじゃねぇし」


 ダルそうに首のマッサージをしながら、


「とりあえず、これから、今回の龍試の注意事項を言っていく。聞きたくなければ寝てろ。俺は、試験官としての最低限の責務を果たすだけで、本気でお前らに『気をつけてもらいたい』ってわけじゃないから」



 低血圧なノリでそう言ってから、

 五分ほどかけて、ダラダラと、定型文的な諸注意事項を述べていき、


「――はい、以上。最後に確認する。今回の試験は危険度がパない。まだ、この時点なら、帰っても成績にマイナスはつけねぇ。命が大事なら帰れ」


 と言われて、帰る者は一人もいなかった。

 『クア森林で実地される』という試験内容は事前に伝えられている。

 みな、覚悟して、今日、ここに足を運んでいるのだ。


「あ、そ……まあ、いいや。じゃあ、とっとと、はじめよう。告知通り、この『クア森林内で狩ってきたモンスター』の『ランク』が評価基準になる。今回の龍試で合格できるのは、上位5名のみ。つまり、6位以下の25人以上は、ただひたすらに『危険な目にあうだけ』ってことだ。今回の龍試は、危険度の割に、合格できる者の数も少ない。正直、俺ならやらないね。龍試にも、楽なものと難しいのがある。今回は難しい方だ……つっても、お前ら、どうせやるんだろうな。バカの集団だから」


 ブツブツ言ってから、


「制限時間は8時間。8時間以内に、できるだけ高ランクのモンスターを狩ってこい。言うまでもないが、『どのモンスターのランクが高いんですか?』なんてバカな質問はするなよ。その辺の事は、一年後期必修の魔物学演習で習っているはずだ」


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