学内ランキング上位の天才たち。

学内ランキング上位の天才たち。



 冒険者でも、ハンパな者だと、致死率30パーセントをこえるであろう、ふざけた難易度の凶悪ミッション。

 それが、今回実施される龍試『クア森林ピクニック』。



(こんな殺意満々の試験で、なにがピクニックだ……ナメくさりやがって……昨日までの俺だったら、100%死ねる内容だぞ)



 指定の集合場所に辿り着くと、

 すでに、そこには、30名近い学生が集まっていた。


 みな、ビリビリとしたオーラを放っている。

 ここにいるのは、ほぼ全員が、学内ランキング上位者。


 ランキング一ケタ台も数人混ざっていて、彼・彼女たちは、やはり雰囲気が違った。

 超越者のオーラ。

 将来、世界最強国家フーマーの中枢に属する事になる天才達の覇気。


 そんな中、『ピーツ以外』にも、完全に『場違いな男』が一人混じっていた。

 この中では段違いにショボいオーラを放っているデブ。


 ――イカれた劣等生『ボーレ』は、スーパー劣等生『ピーツ』の姿を視認すると、

 テクテクと寄ってきて、



「おいおい、後輩……マジできたのか……」


「逆に言いたい。先輩、あんた、マジか。よく、こんな致死率が高い試験を受けようって気になるな」


「その言葉、リボンでもつけて、そっくりそのまま投げ返してあげよう」


「そのリボンで包(くる)まれた言葉を、そのままバットで打ち返して――」


 と、不毛な会話をしている途中で、




「おいおいおいおい!」




 イケメン系美女が、渋い顔で、ピーツの近くまでツカツカと歩み寄ってきて、


「なにをしているんだ、ピーツ!」


「あ、どうも……」


 彼女は、昨日、食堂で話しかけてきた『性根は腐っているが曲がった人間ではない女学生』――

 学内ランキング5位のカルシィ。


「頭が悪いとは思っていたが、まさかここまでとは思わなかった。今すぐに帰れ。君に死なれると困る。君の成績表が買えなくなったらどうする!」


 本気で嘆き悲しんでいる顔で、


「いいか、自覚しなさい。君という存在は貴重なんだ。ヤケをおこして自殺なんてとんでもない」


「別に自殺しにきたワケじゃないですが……」


 と、そこで、

 カルシィの後ろから、二人の男女が近づいてきて、


「カルシィ、なにしている?」

「それ、誰? 見た事がない人だけど」


 その二人は、カルシィの同級生で、どちらも学内ランキング10番台の天才。

 男の方は、ドコス。

 女の方は、エーパ。


「彼はピーツ。私が注目している一年生だ」


「ほう。有力なのか?」

「ああ。ハンパではない。希少価値だけなら、勇者にも匹敵する」


「……へぇ。『お嬢((カルシィ))』にそこまで言わせるなんて、あなたはいったい……」

「って、ちょっと待て、カルシィ。もしかして、逆の意味でか?」


「逆などではない。まっすぐな意味だ! このピーツは、歴代最高クラスの圧倒的な『劣等生っぷり』を発揮している狂気の天才。なかなか、ここまでの無能はいないぞ」


「「……」」


 顔を見合せるドコスとエーパ。

 苦い顔を浮かべているドコスが、


「そんなヤツが、どうしてここに?」


「おそらく派手な自殺をしにきたのだろう。愚かな事だ。己の希少価値が分かっていない。たかが学校の勉強についていけないくらいで自殺など!」


 そこで、カルシィは、

 真摯な目で、ピーツの目をジっと見つめ、


「いいか、ピーツ! 君ほど『学校についていけない者』は本当に珍しいんだ! その希少価値を理解しろ! 君に救われているヤツは、きっと、私だけじゃない! たぶん、君の同級生の何人かは、君に心を救われている! 落ち込みそうになった時、辛い時、苦しい時、悲しい時、『下』をみれば君がいる! 君は、まさに太陽のような存在!」



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