ピーツは、最強の護衛を手に入れた!

ピーツは、最強の護衛を手に入れた!



「制限時間は8時間。8時間以内に、できるだけ高ランクのモンスターを狩ってこい。言うまでもないが、『どのモンスターのランクが高いんですか?』なんてバカな質問はするなよ。その辺の事は、一年後期必修の魔物学演習で習っているはずだ」


「あのー、俺、まだ、一年の前期で、魔物学はやっていないから、細かいランクとか分からないんですが」


「……一年前期……そんな時期に龍試を受けようって? はっ、なんだ、お前。勇者気取りか?」


「勇者気取りというか、勇者以上の存在になる気です。『勇者を倒したラムド』を倒すつもりなんで。そんで、神様になります!」


「……あ、そう。うん……がんばれ! いける、いける!」


 死んだ顔で、テキトーな返事をする試験官。

 大学校には、毎年、300人ほど入学してくるので、ピーツのような『ちょっとアレな学生』を見る機会も少なくない。

 長年の教員経験上、『この手の輩とまともに関わってもしんどくなるだけだ』と理解できているため、撃滅のオールスルースタイルでサラっと流す。


「俺は今日、講義をしにきたんじゃないんでな。魔物学については、生き残れたら、後期で習ってくれ。以上だ」


 そこで、コホンとセキをして、


「ここで、特別ルールを追加させてもらう。次、俺に何か質問をしたやつは退学だ。俺の時間は、お前らの命よりも重たい。――さて、他に、『ラムド討伐を夢見る彼』のように、『~~がわかりません』というアホな質問をする者はいるかな?」


 シーンと黙った面々を見渡してから、

 満足そうに頷いて、


「よし、では、行け」


 開始の合図を聞いた瞬間、

 みな、一斉に、森の中へと突入していった。


 さっそく聞こえてくる戦闘音。

 ウジャウジャと出てきたモンスターを、片っぱしから狩って、奥へと続く道を切り開いていく最上位の上級生たち。


 そのスタートに出遅れた者が五名いた。

 カルシィ、ドコス、エーパの学内ランキング上位勢3名と、

 ピーツとボーレの落ちこぼれ2名。


 ふいに、カルシィが、ピーツに視線を送り、


「ピーツ。君は、私たちと行動しろ」


 そんな命令を受けて、


「……ぇえ」


 と、迷惑そうな顔をするピーツに、カルシィは、


「君に死なれては困る。せめて、前期の成績表を得るまでは生き残ってもらう。というわけで、遺憾ではあるが、今回の試験だけ、特別に、君の護衛を務めてやろう」


 カルシィのその発言を受けて、

 ドコスとエーパが、


「そんなド級の足手まといを引き連れていくなんて、正気か、カルシィ」

「お嬢、クア森林をナメすぎていない?」


「ナメていないからこその提案だ。彼をこのまま放置したら、2分も経たないうちに死んでしまう。それは困る」


「……いや、あの、俺は『独り』で大丈夫なんで……というか、集団行動は、ちょっと、個人的な理由でアレ系のソレなんで……」


「おそれおおすぎるという、その気持ちは痛いほどわかる。もし、仮に、『ピースメイカー』の方々が私の護衛をしてくださるとなれば、私は委縮して、『私なんかの護衛など、もったいない』と断ってしまうだろう」


「いえ、そういう意味ではなく、俺は単純に孤高を愛している――」


「だが、委縮する必要はない。あくまでも、私は私のために、君の護衛を買って出ているのだ。というわけで、森の中では、常に、私の視界の範囲内にいるように。さて、それでは行こう。8時間という制限時間は、長いようで短い」


 カルシィに腕を引っ張られる形で森の中へと入っていくピーツ。

 そのおこぼれを狙おうと、そそくさとついていくボーレ。


 そんなピーツたちの様子を、溜息をつきながら眺めているドコスとエーパ。


「また、ワケのわからん状況になったな……ウチの破天荒姫は、色々とめんどくさすぎる……」

「まあ、でも、最悪の時は、あの無能を、お嬢の肉壁として利用すればいいんじゃない?」


 などと言いながら、カルシィたちの後についていく二人。


 ※ 実は、カルシィは、フーマー東方のとある部族の長の娘で、

   ドコスとエーパは、カルシィの従者。

   フーマー東方の権力者がチームになって入学する事は、そこまで珍しくない。

   ちなみに、上位100名のうち『半分くらい』は東方出身者。

   フーマー東方出身者の潜在能力は世界一ィイイ!


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