経歴点数。

経歴点数。


 ボーレの『常軌を逸した狂い方』におののいてから、

 ピーツは、


「あ、ところで、龍試って、ここ数日~数週間以内だと、何回くらいある?」


 『ピーツという劣等学生の人生』に『龍試』という関門は、まったく関係のないイベントだったので、記憶にはカケラも残ってはいなかった。


「数週間以内だと、明日しかないな」


「……明日しかない……ふむ。ちなみに、一つ聞いていいか?」


「なんだ?」


「龍試を突破したら、冒険者試験に途中参加できるって聞いたんだけど、それって本当?」


「……ぁあ、なんか、そんなことも書いてあったような……」


 と、言いながら、亜空間倉庫に手を伸ばすボーレ。

 ボーレのアイテムボックスは、かなり容量が少ないが、紙をしまうくらいは出来る。


 アイテムボックスから一枚の紙を取り出すと、


「……ああ、下の方にチラっと書いているな。……合格した者は、『予選』と『一次試験』免除で『二次から参加できる』って……はは、この特典いらねぇ~、龍試を突破できるようなヤツは、余裕で修士ぐらいは取れるから、わざわざ冒険者試験なんか受けないっての」


 心底から興味なさそうにそう呟いてから、


「まあ、『学士も取れずに放り出された時』の事を考えたら、『冒険者二次経験者』って肩書きを取っておきたいと思わなくもないが、でも、龍試に受かったら、学士は取れるから、俺的には、やっぱ、いみねぇ~」






 ★ 次の『★』まで読み飛ばし可。


 仮に『一発型の龍試合格者』の『経歴点数』を『100点』とするなら、

 『冒険者試験二次試験経験者』の『経歴点』は『5点』くらい。

 で、『大学校の学士号取得者』の『経歴点』は『50点』くらい


 『修士号』の取得者は『120点(ここに龍試突破回数×10点がプラスされる感じ)』

 『博士号』の取得者は『200点(龍試を5回以上突破している場合、点数は加算される。龍試に6回合格していると210点。龍試を15回突破していると300点)』

 冒険者試験の合格者は『150点(ただし、号を取っていないと軽んじられる。冒険者試験で合格した、というだけだと、フーマー内での経歴点は70点くらい。冒険者試験合格かつ博士号取得だと、230点くらい)』


 といった感じ。


 フーマー内での地位や出世は、だいたい、この点数が目安となる。

 精霊国フーマーに属する有力者の中で、経歴点が200を切っている者は一人もいない。


 使徒クラスになると、全員、余裕の300点オーバー。

 ちなみに、第二使徒ケイレーンの経歴点は520点。

 みんなの嫌われ者コーレンは390点。






 ★


 ――と、そこで、

 ピーツは、ボーレの手の中にある紙を覗きこむ。

 ササっと、あらかたの概要を読み終えると、


「事前登録しなくても、その日、いきなり受ける事も可能なのか……」


「一発型はだいたいそうだな」


「ふむ……開始時刻は朝の6時……集合場所はクア森林……か。よし」


「よしってなんだ。まさか、お前、龍試に参加するつもりじゃないだろうな」


「ああ、冒険者になりたいからな。ぶっちゃけ、学位とかどうでもいい。俺は冒険者になりたい」


「……じゃあ、なんで、大学校に入ったんだよ……」


 心底から呆れた顔をしているボーレは、続けて、


「ピーツ後輩。別に、お前がどうなろうが知ったこっちゃないから、わざわざ止めはしないけど……一応、同じ学校の先輩として、最低限の助言はしておく。やめておいた方がいい」


「龍試は、成績が悪いと退学になるからか?」


「――『成績が悪かったら退学どうこう』ってのは『実力者限定』の話だ」


「?」


「龍試は、実力が足りないと死ぬ。龍試の起源は『龍を倒せるかどうか』の実力試し。『生命の最高位種であるドラゴンを倒せるほどの力を持つなら、学位をやろう』……みたいなのが『フーマー大学校最高難易度試験・龍試』のはじまり。別に、今の龍試は、『龍を殺せるかどうか』を試すワケじゃないが、ふっかけられるのは、『龍に挑む級』のイカれた難易度だ」

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