ブースター。

ブースター。



 究極完全体モードのアダムの存在値はケタ違いで、

 P型センエース1号を遥かに凌駕していた。


 膨大な『数字の力』でP型センエース1号を抑え込もうとするアダム。

 シューリもそれに続く。


 『膨大なオーラを纏った二人の女神』を相手に、『独り』で奮闘するP型センエース。



「圧倒的『2』対『1』! 絶対的孤独! ああ! これでいい! ココこそが、俺の世界だ! 俺は――うがぁあああああ!」



 奮闘むなしく、P型センエース1号は圧殺された。

 あまりにも強大な二つの力を前に、容易く、ひねりつぶされた。


 間違いなく死んだ。

 だが、蘇る!

 何度でも蘇る!



「膨大! 極大! 目眩がする! それでいい! この絶望は、つまり! この局面を乗り越えた先に、『完成した俺』が待っているってこと! センエースに抗える器が完成するということだぁ! さあ、最後の最後まで! とことんまで付き合ってもらうぞぉおお!」


「ちっ……まだ蘇るのか」

「クソ鬱陶しいでちゅねぇ」


 辟易した顔をしている二柱の女神。 


 戦闘はさらに激化した。

 P型センエース1号は、さらに強くなる。


 暴力の渦は留まる事を知らない!

 ただひたすらに膨張していく!



 ――その途中で、P型センエース1号は気付く。


(ん……アポロギスの野郎……妙にトロくねぇか……)


 膨大なオーラの意識が向き過ぎていて、

 今までは気付いていなかったが、

 アダムの動きは、シューリと比べて、かなり鈍い。


(存在値がムダに高いだけで、戦闘力は低い……手を抜いているのか? いや、この状況でそんなわけ……ぁっ)


 と、そこで、ハっとするP型センエース1号。


(そ、そうか、こいつ、戦闘力を生贄にして転生したなっ)


 正解だった。

 ドンピシャの大正解。


(……現闘力はそこそこだが、神闘は、シューリの足下にも及ばないレベル……こいつは、『ただ数字が膨れ上がっただけ』のハンパなバケモノ。『なぜ、こいつのデータがなかったのか』についてはいまだに不明だが……もう、そんな事はどうでもいい。この女が、さほど脅威ではないという事実だけが現状の全て! これなら、余裕で対処できる! アダム……この女は、『想定外のイレギュラー』で『不明事態の最大要因』と、面倒な要素のオンパレードだったが……しかし、それ以上の面倒事ではなかった!)


 アダムも参戦し、

 『2』VS『1』という圧倒的有利対面を形成していながら、

 しかし、戦況はかんばしくなかった。


「むしろ! てめぇの追加で、より効率良く俺は磨かれる! てめぇの、その『シューリの力不足をカバーする、圧倒的なパワー』は、俺を輝かせる最高のブースター!」


 積み重なった絶望の全てを超越して、

 P型センエース1号は強大になっていく。


 どんどん、どんどん、巨大な存在になっていくP型センエース1号。


 シューリの攻撃を次第に見切っていく。

 アダムをあしらえるようになっていく。


 回避できる頻度が上がり、Pセンエース1号の攻撃が当たる回数が増えていく。


「くく……ここまできたら……あとは、学んだ武を血肉化させるだけだな」


 P型センエース1号は、学んだ全てを自分の中に刻みつけようとする。

 湯水のように、己の死を糧にして、

 自分を完成させようとするP型センエース1号。


 次第に、シューリとアダムの二人同時でも殺せなくなっていくP1。


 ――流石のシューリも心底疲れた顔で、


「マジで、ほんと、いったい、なんど蘇れば気がすむんでちゅかっ!」


 闘いの途中にも関わらず、つい、苦々しさを隠しきれていない声音でそう叫んでしまった。

 もはや余裕は微塵もなかった。


 P型センエース1号は強くなりすぎた。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る