見参。

見参。


(くく……まだ、お前に殺される用の転生ストックは、かなり残っている。アポロギスの追加で絶望した分、成長速度を加速させる事ができた。このままいけば、かなりの余裕をもって、シューリを超える事ができる! ミシャンド/ラのせいで、かなり削られたが、その分は、シューリで回収できた……くく……あはははは、笑いがとまらねぇ。すべてが、『俺をセンエースにするためのエサ』になった! やはり、俺はセンエースになれる! 俺が、俺こそがセンエースだ!)


 激闘はもう少しだけ続いた。

 その間、P型センエース1号は、休むことなく強大になり続けた。


 次第に、手がつけられなくなり、

 シューリ&アダムの方が押され出してきて、


「シューリ……お前から学べるモノは、もう何もない」


 P型センエース1号は、辛辣にそう言い放った。

 実際、P型センエース1号は、既に、シューリを超えてしまった。


 ほんの『一時間足らず』で、P型センエース1号は、女神の中の女神を超えてしまった。

 その証拠に、シューリのチート『無敵の運スキル』が、P1相手には発動しなくなる、


 それは、つまり、正式に、P1がシューリを超えたという証拠。


「し、信じられまちぇんね……オイちゃんすら……超えちゃうんでちゅか……それも、こんな、『1時間』程度の、とんでもない短時間で……」

「くそが……こんなカスに……」


 嘆く声をあげる、シューリとアダム。


 その様を見て、P型センエース1号は嗤う。



(はははっ。あははははははははは! やった、やった、やった! 最善を超えた最善! 結局、想定を遥かに超えるストックを残してセンエースと対峙する事ができる!)


 歓喜は、心の中にとどまらず、


「これは勝ったな! もう運命は決まった。センエースを殺し、俺は、真のセンエースになる! 俺が、俺こそがセンエースだ!」




 そう叫んだ、その時だった。

 一陣の風が吹いた。

 空気が柔軟になった。

 世界が、平伏する。

 理由は一つ。


 ――彼がきたから。






「俺を殺し、真の俺になる……ねぇ。ちょっと、なに言ってるかわかんないな」






 静寂をまとって降臨した彼――この上なく尊い『閃光』を目の当たりにして、


「……せ、センエース……」


 P型センエース1号は、思わず後退(あとじさ)ってしまう。

 あまりの圧力。

 常人ならば、まともに立っている事すら出来る訳がない最高次の威圧感。


 そろそろ登場する時間だとはわかっていたはずなのに、

 つい、普通にビビってしまっているP型センエース1号。

 そんな彼を見下ろしながら、

 センエースはゆっくりと口を開いた。


「少し、自分語りをする。聞いてくれるか?」


 その発言を受けて、P型センエース1号は、

 気圧されないように、自分を叱咤してから、

 『どうにか、余裕があるように見えますように』と祈りつつ、


「……お前の事なら、ぜひ知っておきたいね……なんせ、これから俺は、お前になるんだから」


 と、軽口に聞こえるよう声音を調節しながらそう言った。


 それに対して、センは、


「俺は、俺を知っている。俺のワガママはイカれている。高望みしすぎている。分かっているさ。そんなこと。俺の基本的な望みは、理不尽や不条理を皆殺しにした完全に合理的な世界。問答無用の『正しさ』に支配された世界。管理されたディストピアではなく、真に平和で自由で豊かで、そんで、『まっすぐな幸福』を享受できる本物の理想郷。そんなものは不可能だと理解していた。けど、創ろうと思った。出来るとは思わなかった。そんなもん出来る訳がないと思っていた――が、驚いた事に、限りなく理想に近い世界の構築を達成する事ができた。俺がすごいから? 違うね。ついてきてくれたやつがたくさんいたからだ。頑張ったやつらがたくさんいたからだ」


「……」


「歪んでしまわぬように、腐ってしまわぬように、弱い心に負けないように、必死になって頑張ってきた連中が大勢いたからだ。俺は、そいつらを誇りに思う。そいつらの強さを、気高さを、まっすぐさを、優しさを、慈しみを……心の底から愛している」


「……」


「だから……うん。長くなったな。とりあえず、ここらで判決を言い渡そうか。主文は後回し。判決理由はご覧の通り。というわけで……」


 そこで、センエースは、オーラを解放し、


「神法にのっとり、極刑を執行する。俺の宝を踏みにじったカスに、慈悲など、みせるはずもなし。熔けていく絶望を数えながら、虫けらのように、無様に、惨めに、ただ愚かしく死に絶えろ」




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