『全ての絶望』を絶望させるエンジン。

『全ての絶望』を絶望させるエンジン。


(シューリ以上のオーラを持つ未知のバケモノ……そ、そんなアホな……この世で、シューリより強い神は、センエースとソンキーだけ。それがこの世界の摂理……揺るがない真理……な、なのに……いったい、どういう……ん? この特異なオーラ……強い歪み……尖った逆霊気……)


 そこで、P1は、

 ハっとして、


(まさか、あの女、アポロギスかっ?!)


 理解に届く。


(ぁ、あまりに姿が変わり過ぎていて、わからなかった……てか、んなアホなっ……どうしてアポロギスが……センエースによって消滅させられたはず……)


 究極超邪神アポロギス。

 ケタ違いの存在値と圧倒的な戦闘力で、

 かつて、神々を震え上がらせた邪神の中の邪神。


(どうして、アポロギスが……ぃ、いや、理由はどうでもいい。今、考えても分からないことだし、理由が分かったからって、目の前の現実はどうにもならん……)


 本質に対して意識を向けようと、


(だ、大事なことは、これから、俺は、シューリとアポロギスの両方を飛ばさないと、ラスボスのセンエースまで届かないってこと……ひ、ひどすぎる……ムリゲーすぎるだろ……持つわけねぇ……)


 絶望した。


(なんでこんな事になる……まさか、一連の不明な事態は、ぜんぶ、アポロギスというイレギュラーが原因か? さ、最悪……どうして……ぁ、いや、違う! だから! 事態を嘆いたって解決はしねぇ! ……ど、どうにかしないと……この絶望……このピンチ……どうにかして……どうにか……どうにか……いや……どうにもならねぇ……こんな絶望……覆せねぇ……無理だ……あまりにも、不条理すぎる……)


 己の不運を嘆いた。

 絶望に包まれた。

 未来が真っ黒になる。

 目の前の全てが閉じていく。


 ――すると、






(ん? なんだ……ぉ、おお……っ)






 心が燃えた。

 魂が活性化する。

 全てが沸騰する。


 血が沸いて、芯が躍動する!

 果てなく膨れ上がっていく!


「すげぇ……こ、これほどの絶望下だってのに……湧き上がってくる! 勇気! 活力! 闘志! これがセンエース!」


 ドクンと脈打つたびに、意識がハッキリとしてくる。

 呼吸するだけで、全身が、黄金の炎で包まれたように感じる。

 『ここからが本番だ』『やってやる』――と、

 全身の『細胞すべて』が喚いている!


 密度を増した核が、鳴動しているのが分かる!



「ほんと、すっげぇな、センエースってのはよぉ! パメラノの言うとおりだ。俺は間違っていた。『センエースである』という事が、『無限転生』も『異常成長倍率』もかすむ、何よりのチートだ!」



 P型センエース1号は、前を向く。

 絶望を飲み込んで、

 より強大になっていく。


(相手は二人。単騎でも厄介な女神が二柱。絶望的。絶対的なピンチ)


 認識する。

 状況を整理する。

 『深き絶望』の認識・整理がすすむたびに、

 P型センエース1号のオーラは増していく!


(……つまり、ココこそが、俺のホーム!)


 心の底からそう思えた!

 全身にオーラを充満させて、

 P型センエース1号は叫ぶ!



「こえてやる! 全部! 全部! 全部! 折れてやらねぇ! 降りる気はねぇ! 全部、のりこえて、俺は、俺を超えていく! そして! 俺はセンエースになる!!」



 その叫びを受けて、


「極端に存在値が跳ねあがりまちたねぇ……なるほど、聞いていた通り。とんでもないチートスペック……けど、まあ……」


 突撃してきたP型センエース1号に、


「その程度だと、オイちゃんの相手はできまちぇんね」


 顔面カウンターをいれながら、シューリはボソっとそう言った。

 バキリとヘシ折れる音が空間を響かせた。

 けれど、


「ぐぬぅう! ――ま、負けるかぁああああ!」


 ヘシ折られた鼻の事などシカトして、

 P型センエース1号は、果敢に、シューリへと殴りかかる!

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