果てなき逆境。

果てなき逆境。



「他の虫ケラとは、じゃっかん違う所が、なきにしもあらずと言っていいかもしれない部分が、なくもなかったり――みたいな気もしないではない今日この頃でちゅね」


 ボソっと、そんなふざけた事を口走った。

 それを聞いて、ミシャが目を閉じたまま、

 うすく笑みを浮かべて、



「……あんたが他人を褒めるセリフ……初めて聞いたわね。今の言葉が、『私達を褒めているのかどうか』といえば、かなり微妙なところだけれど……それでも……まあ……うん」



 ミシャのその言葉に対し、シューリはフっと笑って、


「その記憶は正しいでちゅねぇ。オイちゃんが現世の虫ケラを褒めるとかありえないでちゅから」


「……プライドがお高いのね」


「プライドが高いんじゃないでちゅ。根源魂魄が別次元に尊く気高いんでちゅ」


 ――言いながら、シューリは、P1の前まで辿り着くと、

 その意識を、P型センエース1号だけに注ぎ、


「さて、それじゃあ、終わりを始めまちょうか。随分と調子に乗って暴れていたようでちゅけど、オイちゃんの前ではもう何もできまちぇんよ。なんせ、オイちゃん、自分より弱い相手には『ガチで無敵』の究極超神でちゅからね」


 シューリの言葉を受けて、

 P型センエース1号は、




「……シューリ・スピリット・アース。……ウルトラチートな究極超女神……」




 じゃっかん震えながら、ボソっとそうつぶやいた。

 心の中で、


(ぃ、いざ、対面すると……とてつもない覇気……つぅか、データよりもオーラの密度が濃いんだが……ど、どうなってんだ……なんなんだよ、どいつもこいつも……なんで、こんな……想定外の事ばかりが起きる……どうして……なんで……)


 嘆いていると、


「ん? どうしたんでちゅか? そんなに怯えて。確か、下馬評によると、何度死んでも蘇れるんでちゅよね? で、蘇るたびに強くなるんでちゅよね?」


「……」


「なら、オイちゃんごときにビビる必要はないんじゃないでちゅか? どんどん生き返って、オイちゃんより強くなってくだちゃいよ」


「……ぅ……」


「その反応から察するに、どうやら、無限というワケではないみたいでちゅね」


 シューリは、つまらなそうに溜息をついて、


「アーちゃん並みに厄介なバケモノなのかなぁとか思っていまちたけど、ガッカリでちゅね。拍子抜けもいいとこでちゅ」


「……アーちゃん……? ……誰のことだ……?」


 思わず疑問符を口にしてしまったP型センエース1号に、

 シューリは言う。


「ん? アダムのことでちゅよ。おやおや? あんたは、ゼノリカに詳しいんじゃないんでちゅか? そう聞いてまちゅけど」


「……ゼノリカに関する事なら、大概のデータは入っている。だが……アダ……ム? 誰だ……そんなヤツ知らん……」


「おやおや。ゼノリカの秘密部隊PSRの隊長アダムさんを知らないとは、とんだにわかでちゅねぇ。そんな有様で、よく、ゼノリカマニアを名乗れたものでちゅ」


「んなもん、名乗った覚えは――ん?」


 と、そこで、


「……は?」


 P1の目が、『シューリの後方』に向いた。

 シューリに続いて、瞬間移動で現れた女。

 神の側仕え『アダム』。

 ――その姿を見て、P型センエース1号は、



「……だ、誰だ、あの女……知らねぇぞ……」



 つい、そうつぶやいてしまったP1にシューリが、


「あれが、アーちゃんでちゅよ。どうでちゅ、めっちゃ可愛くないでちゅか?」


「ど、どうなっている……あんな女……ゼノリカにはいないはず……この情報のズレは……いったい……」


 ぶつぶつ言いながら、P1は、心の中で、


(……つぅか、なんだ、あの狂ったように莫大なオーラは……存在値だけなら……シューリを遥かに超えている……)


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