剣神気、流舞。

剣神気、流舞。


 ぶっちゃけ性格が悪い界理は、素直に相手を褒めるという事が出来ない。

 もし、第一アルファで産まれていたら、『休みの日は、一日中、ネットで、嫌いな芸能人を叩く事』だけにせいをだしていたであろう、非常に『陰』が強いタイプの性悪女。


 そんな彼女だからこそ、この能力は強力な効果を発揮する。


「ウザいだなんて、またまたぁ☆」

「あのなぁ……イヤイヤ褒められる身になってみろ」

「あはっ☆ 可愛い妹に絶賛されて、ほんとは嬉しいくせにっ☆」


「性根の腐った妹にイヤイヤ褒められて喜ぶような特殊性癖は持ってねぇ」


 言いながら、才藤麗理は、亜空間倉庫(アイテムボックス)から、一本の巨大なバスターソードを取り出して、その剣に神気をこめていく。

 その剣は、『FF7のク○ウドが持っているアレ』なタイプで、

 恐ろしく重たく、切れ味は最悪。


「おっとっと」


 あまりに重さによろける麗理。

 ヨロけつつも、グっと持ち上げて構える。


 ――ちなみに、麗理のビルドは、リーンに酷似している。

 剣特化の脳筋スタイル。

 魔法を完全に封じるなどという、アホなマネはしていないが、

 とにかく、ほとんど全てを『剣』に注いだ構成。


「さぁて……行こうか」


 呟いてから、麗理は飛び出した。

 P型センエース1号との距離をつめると、豪快に剣を振り下ろす。

 それに対し、P1も、剣で応戦。


 ガキィン!


 と、金属が弾きあう重たい音が響く。

 その後も、


 ガキィン、キィンッ!


 と、ガチンコの剣戟。

 とにかく、剣で剣を弾きあう二人。


 そんな脳筋な時間が、キッチリ3秒経過したところで、


「剣神気、流舞レベル1」


 麗理がそう宣言すると、麗理の剣が淡く光った。

 剣が軽くなり、切れ味が増した。

 麗理の剣武が加速する。

 そして、その加速は終わらない。

 3秒が経過するごとに、


「剣神気、流舞レベル2……剣神気、流舞レベル3」


 どんどん加速していく。

 現時点で既に、麗理のバスターソードはだいぶ軽くなっているのだが、


「剣神気、流舞レベル5……剣神気、流舞レベル6」


 まだまだ留まる事を知らない。

 麗理の剣は、3秒ごとにはやくなっていく。


 一分が経過したころには、


「……剣神気、流舞、レベル21……」


 重さは既になくなっていた。

 羽のように軽いバスターソードをヒュンヒュンと振りまわす麗理。


 怒涛の超速剣技を、

 P型センエース1号は、


「いい! いいぞ! 麗理! その速度は貴重だ! この速度に対応できるようになった時、俺は、今の俺を超える!」


 ギリギリのところで、麗理の剣を受けながら、そう叫ぶP型センエース1号。


 二分が経過した頃には、


「ぬぉおおおお! はやいぃいい! くそがぁ! 負けるかぁああ!」


 すでに、剣の重さはなく、剣だけではなく、麗理の腕も、肩も、全てが軽くなっていた。

 ヒュヒュヒュヒュッと残像を残しつつ、

 空間跳躍しながら、

 クソでっかいバスターソードをブン回し続ける麗理。


 だが、対応できていた。

 秒ごとに加速していく麗理に、P型センエース1号は必死になってついていく。


 その果てに、


「見えた!」


 限界なく上がり続ける麗理の超速剣に、

 P型センエース1号は、剣を合わせた。


 キィンッッ!

 と、剣の真芯で対応し、スルリと体躯を反転させる。

 そして、そのまま踏み込んで、


「うらぁああ!!」


 麗理の腕を切り飛ばす!

 ズパァァッと豪快な音が響く。

 麗理の右腕が宙を舞う!

 噴き出す鮮血!


「ぎっ……ちっ――」


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