満を持して、三至天帝の登場。

満を持して、三至天帝の登場。



 腕を飛ばされた麗理は、仕方なく剣を捨てて、左手で腕を回収し、


「姉貴!」


 銃崎心理の眼前まで飛ぶと、そこで、彼女に飛ばされた腕を渡す。

 麗理の腕を受け取った心理は、即座に、高ランクの回復魔法を使い、

 麗理の腕を元の状態に戻した。


 その様子を見ていたP1が、心の中で、


(くく……これで、加速は切れたな……また、『さっきと同じ速度』を出そうと思えば、同じく『2分の経過』が必要となる……はは……稼がせねぇよ、そんな時間……別に、くれてやってもいいんだが、もう、麗理の剣は学習し終わったから用はねぇ。これ以上、五聖命王の相手をするのは時間の無駄……サクっと対処させてもらう)



 五聖命王の三姉妹は、間違いなく、ジャミよりも強い。

 彼女達はとんでもなく強い。

 それは事実。


 しかし、

 P型センエース1号の異常な成長速度の前では、

 『ちょっとした経験値』にしかなれなかった。


「ショックね。ここまで簡単にあしらわれるだなんて。もう少し抵抗できると思っていたけれど……」

「うっぜぇなぁ、ちくしょう」

「あーあ、結局、一回も殺せなかったねっ☆ ……まったく、これだから、お姉ちゃんはアレなんだよ」

「アレってなんだ、ごらぁ。つぅか、なに、わたしだけの責任にしようとしてんだ。三人全員の責任だ」


 などと言い合っている三人を尻目に、

 P型センエース1号は、


(いい、いい、いい、いい、いいぞぉっ。五聖命王もノーデスでいった! あとは、三至の武をプラスすれば……なんとか、シューリから『学べるレベル』まではいけそうだ。ここまで、きっちり最速・最善できた! いけるかもしれない! いや、いく! 俺がセンエースになるんだ!)



 心の中で燃えたぎっているP1を睨みつけたまま、

 銃崎心理が、



「結局、倒せはしなかった。……けれど、まあ、問題はないわ……陛下たちが『訓練の疲れを癒すための時間』は稼げたことだし」



 そう言った直後の事だった。



 空間に亀裂が入った。

 圧力が変化した。

 荘厳な空気が漂う。


 鳴動する大気。

 世界が震動する。

 空間がわななく。



 ――そして、『天上の王達』を束ねる三名の偉大なる至天帝が登場。



 高みに届いた、王達の王。

 ゼノリカの天上を束ねる、至高の天帝――三至天帝。




「神を騙る者……か。確かに、師のオーラに似てなくもないのう」

「はぁ? 何言ってんの、ゾメガ。頭、大丈夫? 全然似てないから。確かに寄せてはいるみたいだけれど、まったくの別物。粗悪で無粋な劣化模造でしかないわ」

「模造であるとは認めているのですね……」




 現れた三至。

 凄まじい圧力。

 会話の調子は軽いが、その威圧感は海底の水圧のよう。


 三至の登場を確認したP型センエース1号は、


(きたな、最高級養分……)


 心の中でボソっとそう呟きながら、ググっとストレッチをする。

 全身に魔力を充満させながら、


(三至が相手だと、流石に、ノーデスは厳しい……目標は2回ってところ……どうにか、死ぬ回数を2回以内におさえて、シューリと闘う時用に、命ストックをためておく……)


 自己ミッションを確認しながら、



「よっしゃぁああ! やったらぁああ!」



 気合いを入れ直す。

 そんなP型センエース1号の姿を見て、

 ミシャが、


「なに、あれ……叫んだだけで、存在値が爆上がりしたんだけど」

「ふざけとるのう……」

「叫ぶと存在値が上がるスキル? そんなもの、あっていいんですかね……」


 疑問符を浮かべている三人に、P型センエース1号は言う。



「叫んだからじゃねぇよ。お前らと『闘う事になった』から上がっただけだ」



 そう説明してから、体の調子を確認するように、膨れ上がったオーラの質を確かめる。



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