バーチャ・ルカーノ・ロッキィ。

バーチャ・ルカーノ・ロッキィ。



 バーチャは、現世で暴れに暴れた。

 解き放たれたバーチャは、傍若無人に暴れまわり、世界に多大な傷跡を残した。


 神の向こう側――『超神』となるため、現世の魂を貪り食らった。



 当然のように抵抗したセン。


 しかし、






『現世の王よ! 身の程を知れ!』






 神の力の『一部』が使えるバーチャが相手では、いくらセンでも相手にならなかった。






『たかが現世の一等賞ふぜいが、調子に乗るな。神の世界には、貴様より弱い者など一人もいないぞ! ははははは! さあ、いつまで頭を上げている! ここは神の御前である。頭が高ぁああい!!』






 バーチャは、正真正銘の神。

 とうぜん、相手にならなかった――が、だからと言って諦めるセンではなかった。


『神だか何だか知らないが、ここは俺の世界だ!! 蛮行はゆるさねぇえ!!』


『無駄無駄無駄ぁあ! 神でない者が神に抗っても無駄ぁああ! 存在の次元が違うのだよ、バカめがぁあ!』


 どうにか持ち込んだタイマン勝負で、センは負けた。

 圧倒的に負けた。


 何をしても通じない。

 どんな攻撃も通らない。

 あっさりと片手で吹っ飛ばされ、

 平和の象徴として建造した巨大なワールドシンボルのガレキに埋められた。


『平和ねぇ……現世の虫ケラ風情が大層な夢を見るじゃないか。私の視点に映る貴様らを、貴様らでも理解できるように例えてやろうか? 観察キットの中で蠢くアリだ。それ以上でもそれ以下でもない。特に何の価値も意味もない虫ケラ。それが私の養分になれるのだぞ? 慈悲深い私は、貴様らに、『意味のある死』をくれてやろうと言っているのだ。理解できたか? ならば、もう一度だけ言おう。光栄に思え』



 ボッコボコにされて、間違いなく死ぬと理解した、その時、

 センの脳裏をよぎったのは、いつもの『弱さ』。


 ムリムリ。

 あれには勝てない。

 強さの次元が違いすぎる。

 あんなの勝てるヤツは存在しねぇ。

 神だっけ?

 ははっ。

 流石、流石。

 オミゴトデース。

 ハイ、コウサーン。


 流石に、今回ばかりはどうしようもない。

 勝てないんだから仕方が無い。

 あいつは、どうしようもない。

 神様には勝てません。

 はい、というわけで、

 さあ、もう、いい加減に終わろうじゃないか。


 思えば、長い地獄だった。

 延々と続く、クソ以下の地獄も、ようやく終わりを迎える。


 なんつーか、あれだよな。

 第2~第9アルファは、たぶん、呪われてんだ。

 仮に、なんかの間違いで、この局面を乗り越えたところで、

 どうせ、また、どっかで同じような災難にみまわれるんだ。

 で、いつか、あっけなく終わるんだよ。


 俺が違う世界に転生している間に、どうせ、気付いたら、『あれ? なくなったの?』ぐらいの感覚で消えちまう運命の世界だったんだよ。


 もう分かっただろ?

 もう充分だろ?


 俺は散々やったよ。

 バカみたいに闘ってきたよ。


 褒められこそすれ、文句を言われる筋合いはねぇ。

 消えちまえよ、もう、こんな呪われた世界。



『もう……いいよな……』



 ガレキの下で、誰に言うでもなく、センは、ボソっとそうつぶやいた。


 砕けた仮面の下からのぞく素顔は、ただの、しょうもないガキのソレだった。


 たまたま、無限転生というチートと、世界一成長が早いというスペシャルを持っていたから、安全に、他の奴より早く強くなれた。

 実際のところは、それだけの転生者。

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