そして伝説がはじまる。

そして伝説がはじまる。


 スライムをチマチマと倒し続けて、ちょっとずつ、ちょっとずつ、レベルを上げていく。


 そして、ついに到達したレベル『100』!!


 レベル100に到達した時の年齢は59歳。

 とっくに父親も母親も亡くなっていて、

 センは『独り』になっていたが、

 センの人生は、まだまだここからだった。




「よっしゃ。『レベル上げ』も『技熟練度上げ』も充分できたし……今度は、世界攻略といこうか」




 センは、ついに、最初の村を飛び出した。



 ――ハッキリ言って、何もかもが楽勝だった。

 センは強くなり過ぎた。


 あっさりと世界最強の龍を殺し、

 名実ともに世界最強となり、

 センを慕う弟子が山ほどできたが、

 しかし、センは飽き足らず、

 それからも激しい修行を続けた。


「俺はもっと強くなる。限界までいく!」


 強くなり続け、

 強くなり続け、

 強くなり続け、


 そして、強くなり続けた。



 そんなセンも、寿命には勝てず、

 89歳のある日、


「ちくしょう……タイムリミットか……カンストしてから逝きたかったなぁ……」


 大勢の弟子に看取られながら、ぽっくりと死んでしまったセン。



 終わりを覚悟していた、

 ――が、

 しかし、センの旅は終わらなかった。


 目覚めると、

 彼は、


(……マジか……もう一回やれんのか……)


 また『違う異世界』で目をさましたのだった。


 しかも、


(おいおい……前の人生で得たレベルがそのままだぞ……レベルだけじゃない! 技の練度も、魔力もオーラの総量も、なにもかも全部そのまま……『強くてニューゲーム』じゃねぇか! きたこれ!! ひゃっほい!!!)



 二回目に転生した世界はかなり『レベルの低い世界(平均10、最大50)』で、

 レベル332を超えているセンは生まれた時からブッチギリの最強だった。


 自重という概念を捨て去ったセンは、

 その力をフルで使って、自由に暴れまわった。


 無数に存在した犯罪者集団を根こそぎ一掃し、

 腐敗した王族を粛正した。


 問答無用で暴れまわるセンに、

 腐敗の元凶ともいうべきクソ王子――『ダーカソールリア』が言った。


「手前勝手な倫理観を押し付けてくる偽善野郎が! いくら正義を気取ろうが、しょせん、貴様と私は同じ穴のムジナ! エゴのかたまりでしかない!」


「それがどうした?」


「……ど、どうしたって……」


「なんか『言ってやったぜ』みたいな顔しているが『そんなこと』は百も承知なんだよ。俺は勧善懲悪のアニメに出てくる『記号的平和主義者』じゃねぇ。『生きる』ってことがどういうことなのかは知っている。しょせんはエゴのぶつけあい。それ以下でもそれ以上でもない」


「……」


「ちなみに、前提が間違っているから修正してやる。俺は正義を気取ったことなど一度もない。俺は『嫌いなやつ』を『気分』でボコボコにしているだけだ。正義なんて空っぽな言葉を使う気は毛頭ない。『状況』で変わる『虚(うつ)ろな概念』なんざ、俺の中に必要ない。俺が望んでいるのは『俺を執行することだけ』だ。俺の持つ力は『そのためだけに望んだ力』じゃないが『それを成せる力』であることに間違いはない。てめぇらはその事実だけを認識していればそれでいい」



 こうして、センは、完全なる世界の王となった。


 しかし、

 完全なる王になっても寿命には逆らえず、


「……人生って、終わるの早いなぁ……」


 真理をつぶやいてから、


「心残りはまだあるけど……二回もやり直しているから、文句は言えねぇよなぁ……」


 そう言い残し、またポックリといってしまった。


 ――さすがに、これが最後だろうなぁ。まあ、ある程度やりたいことはできたから、まあいいか。あ、いや、でも、もっと強くなりたかったなぁ。限界までいきたかった――


 などと思っていると、






(……マジか……)






 センはまた違う世界で生まれ変わった。

 しかも、


(今度は人間ではなくモンスターに生まれ変わったか……まあ、力は前世と同じだから、種族なんか、なんでもいい。せっかく、もう一度転生できたんだ。今度こそ限界まで強くなってやる)


 こうして、センの3回目の転生人生が始まった。

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