まだまだ『VSスライム』
まだまだ『VSスライム』
30歳を超えても、
まだセンは、飽きずにスライムを狩り続けた。
簡単に言えば、センという男は『やりこみ型のゲーマー』だった。
『最初の村周辺でレベル99にしてみた』
というユーチューブ的なネタをガチの人生でやってしまうド変態。
それが、センエースという男。
「閃拳!!」
今日も、彼の拳がうなりをあげる。
一心不乱に磨き続けた彼の閃拳は、
――気づけば、『この世界に存在するすべての生命』を『一撃で殺せる領域』にまで達していた。
センは『俺、なにかやっちゃいました?』系の主人公ではないので、
『俺……たぶん、もう、相当ヤバいよな……』と理解していたが、
しかし、まだスライム狩りでレベルが上がりそうだったので、
『ま、いっか。もう少しやろう』の精神で、ひたすらに鍛練を積み続けた。
「閃拳!」
日に日に精度が上がっていく。
途中からセンは、
「……」
閃拳を放つ前に、胸の前で両手を合わせる『祈りのポーズ』をとるようになった。
説明するまでもない、ハ〇ターハンターの『感謝の正拳突き』のマネである。
「……閃拳……」
一度、祈りのポーズをとって、母とか食べ物とかに感謝をしたりしなかったりしてから、
心を込めて、拳を繰り出す。
それを幾度となく繰り返した。
――このルーティンを戦闘用のアリア・ギアスとして積むことは『しなかった』。
ギリギリの戦闘で、手を合わせる余裕があるとは思えなかったから。
しかし、『訓練の精度』は上がった。
『祈りをささげてから閃拳を使う』かわりに『技の熟練度がハイペースで上がる』という鍛錬強化のアリア・ギアス。
「……閃拳……」
……パンッッ!!
『50歳』を超えた時、
センの拳は、音を置き去りに……
……は、しなかった。
けれど、
「なんか……掴んだ気がする……」
一つの物事を長く続けていると、
ある日、ふとした瞬間に、
『コツ』をつかむことがある。
語学学習で言うところの『サイレントピリオドの終了』。
センの拳は『一段階上』に上がった。
そして、それは『頂点に達した』のではなく、
『未来が広がった』といった感じ。
たどり着いた場所は、
スタート地点に過ぎなかったのだ。
だから、
「もう少し……続けようか……」
外に出て世界攻略を始めるとなれば、
訓練に費やせる時間は減ってしまう。
『毎日毎日、朝から晩まで愚直に積み続ける事』でしかたどり着けない世界。
――その先が見たくなった。
だから、
「……閃拳……」
祈る。
感謝をする。
そして拳を突き出す。
「閃拳」
繰り返した。
繰り返して、
繰り返して、
――繰り返した。
いつしか、見える景色が変わった。
『そこ』は、とても広い場所だった。
センエースは止まらない。
「閃拳」
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