第2話 目を覚ます男
目を開ける、全身が酷く怠い、目を覚ましたばかりだというのに眠い、頭がぼんやりする。
(状況を把握しろ)
生き残る為の本能で、身体に指示を出す、冒険者としての職業病だ、どうやら今居るのは布団の中?ベッド?今は夜なのか、視界が暗い、もっと情報をと、痛む体に鞭を入れ、身体を起こす。
「あっが・・・・」
みしりと身体が軋み、引き攣る様に痛み、無意味な呻き声を上げつつ上半身を起こす、どうやら動けない訳では無いなと納得する、特に右手が痛むが、どうなって居るのか?
と、右手を見ると、明らかに短い位置で包帯が撒かれていた、肘関節までは有るのだか、その先が無くなって居る、平たく言うと手首から先が無い、指先が痛いのだが、その指先は既に無い、幻肢痛と言う奴か・・・
頭が指が無いと認識したと言うのに、身体は認めて居ないので、無くなった部分を探して指示を出して居るらしい、右手を亡くしたと言うのに、頭の中は酷く冷静だった。
(そうか・・・無いのか・・・廃業だな・・・)
そう思うと、力が抜けた、必死に体を起こして居た分も無くなり、布団の中に倒れ込む。
あの戦場で腕を亡くして、其のまま気絶してたのか、包帯は撒かれていたので、治療は済んでいるらしい、となると、後は自分の回復力次第か・・・
回復術師は居なかったのかと少し残念に思うが、自分以外の怪我人も居たのだろうし、回復術が使える人材は貴重だ、恐らく手が足り無かったのだろう。
戦場で死ぬ人間と言う物は自分もよく見た、少なくとも、其の死ぬ段階からは抜けたらしい、ひとまず安心か・・・
「起きました?」
怠くて眠いのだが、ズキンズキンと、心臓の鼓動に合わせて傷が痛むので、上手く眠れない、目を開けて居る内に段々と夜が明けて来た、不意に戸が開いて、女が入って来た、治療に携わる物特有の白い衣装だ、医者か看護師か?
「眠れん・・・」
「痛み止め使います?ガイソウならありますけど」
ガイソウは、冒険者も痛み止めとして使う、割と一般的な薬草だ、麻薬の効果も有るので、余り常用する物では無いが、こういう時はしょうがないだろう。
「一枚だけ頼む」
「はい」
渡された葉っぱを力無く噛み締める、苦い草の味が口の中に広がる、美味しい物では無いのだ。
「戦況は今どうなってる?」
自分が抜けた程度で戦況がどうにかなる物では無いとは思うが、気には成る。
「色々一段落って所みたいです、どうにか守り切って、残党狩りと後始末の時間ですね」
「そうか、其れは何より」
その一言で、未だ戦闘状態だった頭のスイッチが切れた様に力が抜けた、痛み止めの葉っぱが効き始めたのか、今頃眠くなる。
「すいません、治療術使える人がもう限界で、暫くは無理だそうです・・」
申し訳無さそうにそんな事を言う、気絶している直ぐに復帰出来ない怪我人より、直ぐに戦場に戻れる怪我人を優先させたとかだろう。
良くある事なので今更驚きもしないし、腹も立たない。
「状況一段落したならもう良いさ」
急いで回復する必要も、もう無い、そもそも片手の冒険者が今更前線に返り咲こうと戦況は動かないだろう、そもそも自分はその他大勢だ、戦場では足を引っ張らない程度に右往左往するのが関の山だ。
そもそも無くした腕は治療術が有ろうと生えたりくっ付いたりする様な物では無い、この状態で使ったとしても止血が関の山だ。
「お疲れ様です、お陰で私達も助かりました、良い夢を・・・」
と、そんな労いを眠りに落ちる意識の中で聞いて居た。
追伸
ガイソウ(チョウセンアサガオ・キチガイナスビ)のイメージです。
順番通り? に行きますので展開はのんびり進行。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます