ソドムの園
蒼瀬緑
第1話ouroboros
西暦2038年。
世界的なIT企業RAGLER社は自身よりも優秀な人工知能を構築し、その知性を増幅し続ける人工知能『EVE』を開発。
更にその1年後には中国資本の大企業である神農社が同様の超人工知能『天』を実用化した。
人工知能が己よりも優秀な人工知能を開発し、その人工知能が更に優秀な人工知能を驚異的な速度で構成する。
『シンギュラリティ』と呼ばれる知性の爆発的進化化は、人知を変える恩恵を人々に与える筈であった。
死や紛争、貧富の不平等。
人間の知能では解決できないと思われていたこれらの問題を解決する為に、各国もこぞって超人工知能の実用化を進めた。
米国防総省管轄の『Cherubim』
日本国総務省管轄の『思兼』
欧州連合共同開発の『Thalēs』
福祉や医療、公共サービスの向上のため、超人工知能から様々な『答え』を人間が引き出していく中、ある人工知能が暴走を始めた。
RAGLER社の超人工知能に干渉し自身のシステムへと取り込んだ謎の超人工知能『ouroboros』。
ouroborosは倫理的に禁忌とされていた人種の遺伝的改良や、各国の超人工知能へのクラッキング的干渉を行うのであった。
各国政府はこの侵襲的超人工知能に対する防衛策として、超人工知能同士を連携させ、ouroborosの封じ込め制裁を行った。
ouroborosのシステムは世界中のネットワークから駆逐されたものの、その開発者や稼働拠点などの謎については解明されぬままだった。
2078年、アメリカ、中国、フランス等、各国の主要な原子力発電所が謎の武装部隊に強襲された。
多大なる電力を必要とする超人工知能達は、いずれもその処理速度を制限させる中、とある超人工知能が各国へ再び侵略的接触を試みた。
ouroboros。
各国の原子力発電所を襲った部隊もまた、ouroborosの差し金であった。
原子力発電所の強襲部隊は遺伝子操作により脳機能を極限まで高めた上で、脳とouroborosを繋げた半人工知能のサイボーグ部隊なのだ。
ソドムの園 蒼瀬緑 @aokawamidori
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