第2話 いつも通りじゃなかった買い物
久々にスーパーへ来た。
普段の買い物は大体コンビニで済ませているが、調味料を切らしてしまったため仕方なくスーパーまで足を運んだのだ。
スーパーへは少し距離があって来るのが面倒だし 、しばらく来なくていいようにまとめ買いしとくか……。
「もしかして佐藤くん……?」
商品棚の前に立っていると誰かにそう呼ばれた。
振り返るとなんとなく見覚えのあるような、小柄な少女がこちらを見ていた。
誰だ……名前を知ってるってことは、たぶん高校生のクラスメートとかだよな?
「ひょっとして私のこと分からない? 同じクラスの藤沢、
藤澤華子……やっぱりクラスメートだったか。
しかし名前を言われてもイマイチピンと来ないな。
「ああ、藤沢か……」
しかし覚えてなかったと言う必要もないし、テキトー答えておこう。
それにしても自慢じゃないが、クラス内で浮いている俺にいきなり話しかけてくるなんてなんのつもりだ……。
「そうそう!! それにしても佐藤くんもここのスーパーで買い物してたんだねー! ここって品揃えいいし、食品の品質もいいから私も気に入ってるんだよね~」」
「はぁ……」
別に家から最寄りのスーパーに来ただけで、そんなことを考えていたワケじゃないんだけどな。
なんだ、スーパーの品揃え談義でもしたかったのか……?
「でもよかったー。ここのスーパーで買い物をしているのなら、家ではちゃんと食事をしてるんだよね?」
「はぁ……?」
家ではってどういうことだよ……?
まるで俺の食事を気にしてたような口ぶりじゃないか。
「実はいつも気になっていたんだ、昼休みの食事が一人っきりでいつもパンばかり、オマケに量も少ないし……だから勝手に心配してたんだけど、ちゃんと食べてるのなら安心したよ」
なるほど、俺の学校での昼飯を見てたのか。
しかし、他人の食事をみて気にするなんて藤澤ってやつは結構変わり者だな……。
「……別に家でも同じ感じの食事だけど」
別に隠す理由もないので、俺は正直に本当のことを答えた。
「えっ……」
「食事をすること自体面倒というか苦手だから、なるべく簡単に食べられるものにしてる」
「でもそれじゃあ何も楽しくないんじゃないの……?」
「楽しいも何も……食事なんて栄養を取るための作業だ」
その言葉を聞いた瞬間、藤澤は酷く動揺したような悲しそうなな表情を一瞬だけ見せた。
俺の言葉になんでそんな反応をするんだ……?
気になったが、理由が思いつかない内に藤澤はこんな提案してきた。
「……ねぇ、佐藤くんよかったら連絡先交換しない?」
「は、なんでいきなり?」
「佐藤くんいつも一人でいて、クラスのメッセグループにも入ってないから何かあった時の連絡回って来ないでしょ? だから私からメッセグループに招待してあげようと思って」
そう言えば、いつの間にか俺以外の全員が知ってて、俺だけ知らない連絡事項が何度かあった気がする。
別段クラスメイトと仲良くしたいわけじゃないが、自分だけ連絡が来ないことが続くのはキツイな……。
あ、だけど……。
「それ専用のアプリが必要なやつだよな? 招待って言われてもまず登録してないんだが……」
「えっ、メッセアプリ入れてないの!? どうして?」
「使う相手がいないから」
父親とはメールと電話で足りているしな……。
「あ、そうなんだ……じゃあメールアドレスを教えてよ!!」
一瞬、気まずげな顔をした藤澤だったが、切り替えるように強くそう言った。
コイツ今、間違いなく俺に友達いないんだなって思ったな?……若干気分が良くないが、その通りだから仕方ない。
「そっちなら大丈夫よね……?」
藤澤は俺のメールアドレスの有無についても不安になったのか自信がなさそうに、こちらへ確認してきた。
「……流石にな」
俺の返事を聞いて安心したのか、藤澤はパッと明るい表情になった。
「よかった、じゃあ教えてよ!!」
「分かったよ……」
必要事項の連絡は俺も欲しいし……。
そんな経緯で連絡先を交換して、その日はそのまま藤澤と別れた。
そしてそこから俺の生活に変化が起きていったのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます