華子の笑顔レシピ
朝霧 陽月
第1話 佐藤 慎吾のいつもの休日
「もう、こんな時間か……」
そろそろ食事をしなきゃなんねーな、ああ面倒くさい……。
レジ袋に入ったままの総菜パンをテーブルの上に出す。
飲み物は……また水でいいか。洗い物が増えると面倒くさいし。
水道水で満たされたコップを総菜パンの横に置き席に着く。
準備も終わり、ここからは食べ物を胃に入れる作業だ。
パンをかじり、それを水で流し込み、飲み込む。
それを食べ物がなくなるまで延々と繰り返す。
けっして食べ物がマズいというワケではないが、俺にとって食事は栄養を摂取するための作業であり楽しいものではなかった。
面倒くさい、早く終わらないかな……。
その一心でただただ食べるという作業を繰り返す。
そうして作業を続け、ようやく無くなった食べ物にほっと息を付くとそのままゴミと食器の片付けのために立ち上がった。
これが俺、
母親は早くに亡くなり、残った父親の仕事は激務であり休日ですらまともに帰ってこない。
そんな父親が毎月渡してくれる生活費と食費でいつも適当にパンでも買って食事を済ませる。
これが小学生以来、高校生になる今に至るまで続けている俺の生活、俺の日常である。
さすがに小学生の頃には生活費を渡されることはなかったが、食事については今と全く変わらない。
たまに父親の時間が取れると一緒に外食に行くことがあるくらいで、それ以外は自分で買ってきた出来合のもので済ませている。
母親が生きていた頃の生活がどうだったかなんて、今ではもうちゃんと思い出すことすら出来ない。
全く使われなくなり、綺麗なままのキッチン台にチラリと目をやる。
これから先もきっと、俺はあれを使うことはないだろう。
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