第9話 新学年と子猫 4
百体目の影を子猫が倒したことで、陣に仕込んでいた終了報告が将義に届き、将義は鍛錬空間に向かう。
その場に寝転がって休んでいる子猫の近くに水の入った小皿を置く。それを飲む子猫に以前も渡した力の塊を差し出す。
「鍛錬突破、おめでとう。またこれを飲むといい」
力の塊を子猫は飲み込む。以前もらったときたしかに妖力が増したことを実感できたのだ。
これで子猫の強さは強値で表すと12程度となった。促成鍛錬のため、同じ強値の能力者や妖怪と比べると拙いところがある。だが戦いに関してだけは同程度と見ていい。
「その力が体になじめば、鍛錬は終わりだ。猿との戦いにいける」
『いよいよ!』
気合いと憎悪が混じった感情が子猫から放たれた。それにあわせて妖力も放出されて、周囲の草花を揺らす。
「今から逸っても疲れるだけだぞ。その気合いは猿と対面するまでとっておけ」
『わかった』
将義に窘められ、子猫は感情を外に出すのを止める。だが内心はやはり復讐をとげることに向いており、どうしても気持ちが昂ることを押さえられなかった。
戦う前に疲れていそうだと判断した将義は、子猫に眠りの魔法を使って、強制的に休ませる。
眠った子猫を抱き上げて、将義はこの空間の改造を行っていく。地層を作り、地下水脈を作り、集めてきた虫を放つ。湖には外の池から採取してきた水や水草を入れ、プランクトンの繁殖を狙う。
「あとは虫とプランクトンが十分増えたら、鳥と魚を放って終わりかな。草食動物はいなくてもいいか」
ここを使うのは子猫以外にいない。鳥と魚が十分にいれば、食事に困ることもないだろうと鹿などを放つことは止めておく。
子猫を連れて将義は鍛錬空間から出る。鍛錬空間の時間を加速させて二時間ほどして加速を止める。虫の姿がそこかしこに見え、草花が繁殖し広まっていることを確認すると、小型の鳥や魚を放って鍛錬空間を出る。そしてまた鍛錬空間の時間を加速させ、ベッドに入った。
朝になり将義が起きると、眠らされていた子猫も起きる。子猫は不思議そうに周囲を見ている。
「おはよ。魔法で無理やり眠らせたんだよ」
説明されて部屋で眠った記憶がないことに子猫は納得する。
「仇討は今日の夜。それまでは鍛錬空間で好き勝手過ごしてて。ただし鍛錬は禁止。魚とか鳥を入れてあるから、それらを狩って暮らせるか試してみて」
『わかった』
鍛錬禁止に少しだけ納得できない様子だったが、嫌がってもまた眠らされるだけとわかり、頷いて鍛錬空間に入る。
そこは眠る前とはかなり違っていた。空には鳥の姿があり、草むらには何種類もの虫が見え隠れし、湖には魚の姿がある。鳥の鳴き声、虫の鳴き声、魚の跳ねる音。それらがそこかしこから聞こえてくる生命あふれる空間になっていた。
家族とすごしていた雑木林とは比べものにならないほど食糧が豊富で、ここで暮らすことに不便はなさそうだった。
朝食に魚をとって、昼は鳥を、狩りを教えてくれた両親のことを思い出して寂しくなりつつも将義が帰ってくるまで不自由なく過ごしていた。
鍛錬空間が暗くなっていき、静けさが増して、そろそろと思っていた子猫は将義の足音を捉えた。
「おまたせ。さあ行こう。あの猿がどこにいるかはわかってる。送ってあげるよ」
子猫はわずかに緊張に震える体を将義に抱き上げられて、温かさに安心感を得る。出会った当初の警戒心はすでにない。子猫にここまでしてくれた将義は心許せる存在になっていたのだ。
将義の部屋の窓から外に出て、家の上空に浮かぶ。
『あいつはどこ?』
「君に逃げられて、見つけられないから別の獲物を狙って、少し離れた山に行ったよ」
将義は経立猿のいる山へ飛ぶ。
その山にも主はいて、経立猿はそれに敵わない。そのため派手に動かず、密やかに力をつけることを考えていた。多少の荒事なら日常的に起こっているので、主も動かないのだ。
山の上空に到着し、将義はそこから経立猿の妖力を探す。
山の中腹、そのさら下に煙のように湧き上がるものが将義の目に映る。
「あそこだな」
子猫を抱いたまま将義は接近し、木の上で休んでいる経立猿を視界に捉える。
子猫も見つけたのだろう、将義の腕の中から飛び出し、空中を蹴って同じ木の枝に飛び降りた。
将義は子猫にかけていた隠蔽の魔法を切る。
『誰だ!?』
突如現れたようにも見える子猫に経立猿は驚いた様子を見せ、すぐに誰か思い出したようで笑みを浮かべた。
『あのときの餌じゃねえか。そっちから来るとはな!』
獲物が自分の前まで食べられにやってきたと舌なめずりする経立猿は自らの幸運に感謝する。
その様子からは子猫の妖力が増していることに気づいていないとわかる。
『みんなを殺したことこうかいさせる!』
『逃げるしかできなかった餌が吠えやがる! お前の家族はくそ不味かった。てめえで口直しだ!』
言うと同時に経立猿は妖力を放つ。
それを子猫は軽やかに避けて、別の枝に移る。元いた枝は妖力によって折れて地面に落ちていった。
『ほう。少しはやれるようになったか。だが少し成長したくらいで調子にのって俺の前にでてきたのが運の尽きよ!』
妖力を全身にまとい経立猿が子猫へと飛びかかる。同じく妖力を全身にまとった子猫が前に跳び、両者はぶつかりあって枝に着地する。
経立猿が笑みを浮かべ、子猫は睨み返す。
衝突で押されたのは子猫だった。それにより力量は自分の方が上だと経立猿は確信した。
『抵抗しないなら苦しまずに殺してやるぜ?』
それに子猫は妖力を飛ばして返事とした。
飛んできた妖力を顔面に受けて、経立猿は横っ面を叩かれた感じで顔が動く。顔を赤くし、子猫を睨みつける。
『苦しみたいってんならやってやろうじゃねえか! 泣き叫んでも止まらねえぞ!』
再び妖力をまとい子猫へと飛びかかる。それを避けた子猫を追って、枝を蹴り移動して、子猫へと妖力の刃を出した手を振る。
子猫はそれも避けて、幹を蹴って別の枝に飛び移った。
『おらおらっ逃げ足だけはいっちょまえだな!』
猿が手を振るたびに、枝や木の葉が切れていく。その切れ味は鉄の刃物に劣らず、子猫の胴体などあっさり真っ二つにしてしまいそうだ。
殺意の高さに怯むことなく子猫は冷静に攻撃を避け続ける。
次第に経立猿の動きは大雑把になっていき、そして地面に手を突き刺し大きな隙をさらした。
『今っ』
『なあんてな』
大振りでよろけた経立猿の横から子猫が突進したが、わざと見せた隙だったようで攻撃態勢を整えた経立猿に接近した形になる。
『くっ』
経立猿は地面に突き刺した反対の手を振り上げたが、子猫に避けられわずかな体毛を切っただけだった。
『ほうっこれも避けるか! だけどなあっいつまでも避けられると思うなよ!』
安定した地面での攻撃のおかげか、経立猿の連撃の速度も鋭さも先程とは違う。
しかし子猫もしぶとい。体にかすらせるだけで連続して振われる手を避け続けていった。
再び経立猿の攻撃の速度が落ちる。息は乱れ、罵声に勢いもなくなる。
子猫は今度こそ、攻勢のチャンスだと妖力をまとっての体当たりや爪に妖力の刃を使ったひっかきを行っていく。
『くはははっ。その程度の攻撃が俺に通じると思うな!』
経立猿の毛皮は硬くなっていて、体当たりもひっかきもあまり効果を出していない。
顔といった肌の露出した部分さえ守っていれば痛くもかゆくもないとわかり、経立猿は守りの態勢をとり消耗した体力の回復に努める。
『おおおおっ』
『無駄無駄!』
子猫の攻撃を馬鹿にしてさらなる攻撃を誘発させる。熱くなればなるほど今度は子猫が体力を消費するのだ。
されど子猫も馬鹿ではない。攻撃が効果を出していないことはわかっているし、硬い相手との戦闘経験もあった。
『かたい相手にはやわらかいところをこうげきするか、かたいところをくずす!』
そう言う子猫の二十度目のひっかきが経立猿の腕に当たる。
次の瞬間、経立猿は腕に熱を感じた。だが熱ではないとすぐにわかる。それは痛みだった。
『いでえっ!?』
キキィッと猿の鳴き声が周囲に響く。
経立猿が痛みを感じた腕を見ると、体毛が薄くなっていて血が垂れていた。経立猿の頭にかっと血が上る。
『てめえ!』
経立猿は妖力を全方位へと飛ばす。地面におちていた木の葉が舞い、木々が揺れる。
回避の困難なそれを子猫は下がって避けようとしたが、下がると同時に妖力に押される形で空中でバランスを崩し着地を失敗する。
そこに怒り顔の経立猿が腕を振りかぶって接近し、立ち上がった子猫を横薙ぎにした腕で吹っ飛ばす。
子猫は木の幹に当たって止まり、地面に落ちる。そこに経立猿が追撃の叩きつけを行う。
『まだ避けるか!?』
立ち上がっては回避が間に合わないと判断した子猫は地面を転がり、叩きつけられた手を避けた。回避の後すぐに立ち上がる。その姿に攻撃を受けダメージがある様子は見られない。
空中でバランスを崩し地面に転がったときには、追撃がくると予想していて妖力を防御に回していたのだ。おかげで多少の衝撃にくらっとしただけですんだ。
対して経立猿は怒りに任せた攻撃で妖力を大きく消費している。
形勢は子猫に有利になった。怒りも憎しみもあったが、冷静さだけは失わないよう心掛けたおかげだった。
『ぐがっ!?』『ごっ!?』『おぐぅっ』『やめっ』『許してくれっ』
子猫は妖力をまとい、木の幹や枝を蹴って全方位から何度も攻撃をしかける。
攻撃が当たるたびに体毛がむしられて防御力が下がりダメージを受けていく経立猿。すぐに悲鳴があがり、制止や許しを乞う声も混じり始めた。
懇願を無視して子猫は攻撃を続けていく。許すものかと怒りを込めて、殺意は鈍らせず一撃一撃を確実に当てていく。
『やべでぐれぇ』
経立猿の懇願が不明瞭になっても子猫は攻撃の手を緩めずに、倒れこんだ経立猿の背へと高度から勢いをつけた体当たりを食らわせた。
短く鈍い悲鳴を上げた経立猿は動かなくなる。
『やった?』
経立猿の死に顔を見ようとしたのか子猫が近づく。
目を閉じ苦悶の表情の経立猿の顔に、子猫の顔が十センチというところまで近づいたとき、くわっと経立猿が目を開く。
『馬鹿め!』
奥の手の死んだふりだと哄笑し、経立猿が間近にある子猫の顔へ噛みつこうと迫る。
ガチンッと閉じられた経立猿の口内には肉どころか毛もなかった。
『避けた、だと?』
『そんなことをしてくる奴がいるのはしってた』
死んだふりは百匹組手で経験済みだったのだ。
噛みつきが迫っても驚かず冷静に下がった子猫は、少し離れた位置から冷たい目で経立猿を見る。
『ま、待て! もう俺はボロボロなんだ! これ以上は! 謝ってほしいなら謝る。だからもうっ』
経立猿が必死に命乞いをしている間に、子猫は全妖力を右の前脚に集中していく。
それを見た経立猿は、子猫が自身を許す気がなく殺されると確信し、のたのたと逃げようとする。
『とどめ』
そう呟いた子猫はその場から動かず、右の前脚を振りかぶり、さっと振り下ろした。
その動作にあわせて、大きな前脚の形をした妖力の塊が経立猿を真上から押しつぶす。
『ぐぎゃああああっ』
経立猿は大きく悲鳴を上げながら体の骨という骨が粉々に砕けていく痛みに気絶し、そのまま肉も骨も潰されて死ぬ。
強さは経立猿の方が上だった。敗因は慢心と冷静さを欠いたせいだろう。
大量の血が流れ、ぴくりとも動かなくなった経立猿を見て、子猫は仇を討ったことを確信する。
「うにゃあああああっ!」
勝利の雄叫びが周囲に響く。嬉しさと達成感の混ざるそれを聞いた動物や妖怪たちは、一つの戦いが終わったこと知る。、
子猫の声が次第に小さくなり完全に消えると将義は姿を隠したまま子猫を抱き上げる。子猫の姿も気配も消して、家へと飛ぶ。
残った経立猿の死体は野犬などの餌となった。
家に着くまでに子猫の戦闘のダメージと疲労を魔法で回復し、汚れも魔法で落とす。
部屋に戻り、ベッドに子猫を降ろすと出かける前と変わらぬ姿に戻っていた。
「仇討おめっとさん。俺にやると言った報酬は覚えてるな?」
『あなたにボクの力をあげる』
命を失う覚悟はできていると子猫は目を閉じ横たわる。
「力なんぞいらん。というかもらったところで増加する力は誤差でしかない。というわけでお前さんを使い魔にする」
面倒事が起きて人手が必要となったときのことを考えての提案だ。
体を起こし目を開けた子猫の瞳には残念そうな感情がちらりと映る。目的を達した今、家族と同じところに行きたいと思っていたのだ。
それを察した将義は残念だったなと笑いつつ告げる。
「お前に死なれるために鍛えたわけじゃない。鍛錬空間を作るなんてめんどくさいこともやったんだから役に立ってくれ」
『……やくそくは守る』
残念だという雰囲気は消えていないものの、将義に従う意思は見せる。
「ちゃっちゃっとすませるから、魔法を受け入れろよ」
将義は人差し指を子猫の頭部に当てる。
「『接続』『継続』。名前を与える、お前は今から『フィソス』」
フィソスは花のフィソステギアからとったものだ。
フィソステギアの花言葉は「望みの達成」。やりたいことを遂げた子猫に合うと思ったのだ。
子猫に名前を与えると、その体全体を柔らかな光が包む。体を覆った光はフィソスに吸収されて消える。
「俺との繋がりがわかるか?」
『なんとなく』
フィソスは自身の体から見えない糸が将義へ伸びているような感覚がある。忌避感などはなく、共にいる存在なのだと当たり前のように受け入れた。
「問題なく効果でたな。じゃあ次に目的達成の褒美をあげよう」
『ほうび?』
鍛錬は自分から頼んだことで、なにか褒美をもらえるとは思っていないフィソスは不思議そうに首を傾げた。
「きっと驚くぞ。鍛錬空間に行こう」
悪戯めいた表情の将義はフィソスを抱き上げて、部屋から鍛錬空間へと移動する。
鍛錬空間も夜の時間帯で、将義は月明かり程度の明るさの光球を五メートルの高さに浮かべる。
フィソスを地面に下ろした将義は一つの魔法を使う。
「『招来』」
将義から七メートルほど離れた位置に、煙のようなものが現れる。それは次第にいくつかの形をとっていく。
はっきりとした形をとったそれを見てフィソスは目を見開く。
「お前の家族を霊界から招いた。ここにいられる期間は一年ほどだが、存分に甘えられるはずだ。ほらぼーっとしてないで行ってこい。幻なんかじゃないんだからさ」
フィソスが鍛錬をしている間に、フィソスが過ごし家族が殺された雑木林に行き、そこからフィソスの家族のいる霊界へアクセスしたのだ。
呼び出した親猫たちに、フィソスが今やっていることと目的を説明し、しばらく霊界からこちらへ戻ることを受け入れてもらったのだった。
将義にぽんと背中を押されてフィソスは一歩踏み出す。始めはゆっくりと、次第に歩く速度は速くなり、家族の下へと突進していった。
周囲にニャアニャアと五匹の猫の鳴き声が響く。再会を喜ぶ鳴き声で、五匹全員が喜んでいることは間違いなかった。
「めでたしめでたしってことでいいかな」
五匹の仲睦まじい姿を見て笑みを浮かべた将義は、邪魔にならないように自室へと戻っていった。
◇
フィソスと経立猿が戦った山を三十歳半ばほどの男が登っている。
ここはあまり人気のある山ではなく、現在も登山客は男のみだ。目指すところは頂上のようで男は細い山道を黙々と歩く。
やがて山頂につき、そこにある大岩にリュックから出したおにぎりと饅頭を置き、柏手(かしわで)を打つ。
少しして風が吹き始め、その風が大岩に集まると虎よりも大きな白犬がいつのまにか大岩に座っていた。
白犬はこの山を中心とした土地の主で、神格化された犬の幽霊だ。
もともとは大昔にここらにいた犬の群れの長で、土地を求めた人間との戦いに敗れ、死後に祟ったのだ。怒り憎しみを鎮めるため人間たちは土地神として犬を祀り、毎年供え物を贈った。犬の怒りは治まり、以後悪しき霊や妖怪からこの土地を守るようになった
「招きに応じてくださりありがとうございます」
『うむ。いつものごとくここら一帯の話じゃな?』
「はい。よろしくお願いします」
男は一礼し、リュックからペンとメモ帳を取り出す。
白犬は饅頭を一つペロリと食べ、ここらで起きたことを話す。といっても異変などなく、不法投棄をする人間や自殺目的の人間を追い返したり、流れてきた悪霊を退治したといういつもと変わらない話になった。
『とここで終わるのが毎回のことじゃが、今回は一つ気になることがあった』
メモをしていた男の表情が真剣なものになり、白犬の話を聞き漏らすまいと集中する。
『数日前に妖怪同士の争いがあった。経立になった猿と子供の化け猫が殺し合いをしたのだ。強さは猿の方が上と儂は見ていたが、いざ戦い始めると化け猫の方が妙に慣れた戦いをしておった。勝負は化け猫の勝ちで終わり、猿は死んだ』
「気になるのは化け猫の見た目にそぐわぬ戦いの上手さでしょうか?」
白犬は首を横に振る。
『たしかにそれも気になるが、それ以上に気になることがあった。化け猫は突然猿の近くに現れて、勝ったあとは同じく突然消えた』
「瞬間移動の術でも使ったんでしょうかね」
『それなら妖力の動きでわかる。出現時はともかく、勝利後は妖力に動きはなかった』
「となると誰かに送り込まれ、勝利したら呼び出されたという感じですか」
第三者によって召喚されたのなら化け猫が妖力を使う必要はない、と男は考えた。
『かもしれぬな。戦い慣れていたことと移動に関する疑問。それが儂の気になったことじゃ』
「化け猫が猿の油断を誘うため姿を変えていた可能性はありますか?」
『どうじゃろうな。そういった手段をとるなら、最初に出現したとき奇襲をしそうなものだが』
「幼いにも関わらず、格上を倒せる化け猫が今後どこかで現れるかもしれないのですね」
『成長すれば大妖怪と呼ばれるようになるかもしれぬ』
そのような存在が暴れることのようないように男は祈る。現時点でも危険度は低くはない。長ずればどれだけの被害が生まれるか、想像もしたくなかった。
「なにかその化け猫に繋がるような情報はありませんか? 早めに見つけておきたいのですが」
白犬はフィソスの見た目について話すが、どこにでもいるような猫の姿であり、探すヒントとしては弱い。
『これ以外だと……自分の意思で戦っていたように見えたな。誰かに強制や指示されたのではなく、経立猿との間に因縁があったのかもしれぬよ』
「因縁ですか。その経立猿の経緯を調べたらなにかしらのヒントがでてくるかもしれませんね」
男は経立猿について白犬に話を聞き始める。それに白犬は捧げ物を食べながら答えていった。
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