第40話 告白
遅くなってすいません。ちょっと長めです。
※※※※※※※
「ここだよ。」
「うわぁ。」
ユウくんに連れてこられたのは、ちょっとした丘になっているところだった。まさしく穴場というのにふさわしい場所だった。周囲には私たち以外に誰もいなかった。
「「綺麗だね(だな)。」」
そこから見える花火は絶景だった。私は、今までこんな風にはっきりと花火を見たことが無かった。
「ねぇ、ユウくん。初めて会った時のことを覚えている?」
いい感じの雰囲気だったのもあってか私は自然とユウ君に話しかけていた。
「あぁ、もちろん。」
◇◇◇
私は、自慢ではないが自分の顔は整っているほうだと思う。でも私はそんな自分の顔が嫌いだった。学校では、男子たちからはいやらしい目線で見られるしそうでなくとも告白も多かった。そのせいで女子からは逆に妬みの視線を向けられることも多かった。
そんな時に出会ったのが今もやっているUnlimited World Online。当時ゲームなんて全然していなかった私だったがその面白そうな広告を見て興味を惹かれて買った。
自由が売りのゲームだったので現実のストレス発散もできたらいいなと思っていたのが間違いだったのだろう。出会う男性プレイヤーたちからは、セクハラまがいの行為を受けたこともあってうんざりだった。
そんな時だった、ユウくんと出会ったのは。
「あぁ、もう。うっとうしい。」
「諦めて俺らのものになれよ。」
「「ガハハハハハ。」」
下卑た笑みを浮かべながら私を囲むのは、いわゆるPKと呼ばれる人たちだ。私はそんな人たちに囲まれていた。体力もかなりギリギリで人数でも私はソロなのもあって圧倒的に不利。
(ここはイチかバチか。)
捨て身の特攻を仕掛けようと考えていたその時に――。
「目を閉じろ。」
「!?」
どこからともなく聞こえた声に思わずぴくっと反応しそうになる。でも何となく従ったほうがいいと思い、目を閉じた。
「フラッシュ。」
「「目がぁ~~。」」
先ほどの声の人呪文を唱えた声にさっきまでの人たちの悲鳴が聞こえた。しばらくすると周囲から音がしなくなった。恐る恐る目を開けてみるとそこには一人の怪しげな人がいた。しかも先ほどの声からしておそらく男の人だ。
「大丈夫か?」
「ッはい。」
「…そうか。」
だが安心できない、この人も男性だ。こちらの警戒心の無くなったところを襲い掛かってくることもある。私は、いまだに気が抜けないでいた。だが次にその人のとる行動は驚くべきものだった。
「これでも飲んどけ。」
「えっ。」
その人が私に投げてきたのは、ポーションだった。咄嗟にそれを受け止める。
「じゃあな。」
そのまま、その人は走り去ってしまった。私はお礼を言うこともできなかった。
◇◇◇
「あの時はほんとにびっくりしたんだからね。」
「だがあの時の俺はあれが精いっぱいで。」
「あはは、でもほんとにあの時は助かったよ。」
あの後、私は情報屋と呼ばれる人たちの力も借りて必死にその時のプレイヤーを探した。それで分かったのが助けてくれた人がユウくんであることだった。
それからの私は、ユウくんの良く行く狩場やよく通う店などを聞いて張り込みなどをして何とか会おうとした。
「でなんだ?最近俺の周りを嗅ぎまわっているらしいが。」
「きゃっ。」
ある日、いつものように張り込みしていると私の背後からユウくんが声をかけてきたのだ。
「あの時のお礼がしたくて。」
「ん?あぁ、PKのことか。別に気にしなくていいって。」
「そんなぁ。」
でもその時のユウくんは無欲ですごく困った。他人からの恩を受けておいて返さないのは非常にむず痒い気分になる。だから私は必死に頭を回転させた。どうすればこの人に恩を返せるかを考えた。とそこで奇妙なことに気が付いた。
「あの、ユウさんって男性ですよね?」
「何を考えているかは知らんが俺はどこからどう見ても男性だろう。」
「そうですよね。」
この人は男性なのだ。それにも関わらずクラスにいた男子たちから感じるような不快感がなかった。何だか不思議な気分だった。
どうしてなのか?それがすごく気になってしまった。だから私はあんなことをしたんだろう。
「だがいきなり一緒にパーティを組みましょうって言われたときはびっくりしたぞ。」
「でも最初断ったじゃん。」
「その後組んだから許してくれ。」
ユウくんの言った通り私はユウくんにお願いして一緒のパーティを組もうとした。でも断られた。だからレベルを上げて、スキルを鍛えて、装備を新調して何度もお願いして何とかパーティを組んでもらえることになった。
そしてそれから月日が流れある日私が告白してユウくんと付き合うようになった。それからしばらくしてエリーとアークもとい理恵ちゃんと佐伯君とも一緒にパーティを組むようになった。
付き合うようになっても基本的にやることは一緒だった。私とユウ君の距離感は一般的なカップルから見たら変わっているのかもしれない。でもたまにデートしたりするぐらいで普段はもっぱら一緒に話すぐらいのこの距離感が心地よかった。
「まだ8月なのにいろいろあったよね。」
「ん…?そうだな。」
ユウくんはピンときてないかもしれないがほんとにたくさんの出来事があった。編入試験を受けるためにゲームから手を引いたことや転校した学校で理恵ちゃんに佐伯君、それに大城君と出会ったたりと盛り沢山だった。
という訳でやっと本題に入れる
「でねユウくん。」
「何?」
「私たちの関係について決めた約束って覚えている?」
「この関係はリアルでお互いに好きな人ができるまでだろ?」
私の言葉を聞いてユウくんはすぐさま答えてくれた。これはお互いにいつ現実で会えるかもわからない関係であるためだ。実際今日が初めてユウくんと現実で会う日だったからだ。でも今日ユウくんと現実で会う必要はなかった。会うならばゲーム内でもできるからだ。でも私はどうしても直接面と向かって言いたいことがあったからこうして夏祭りに誘った。
ここまで来たら分かるかもしれないが私には好きな人がいる。もちろんユウくんのことも好きだ。でもユウくん以上にその人のことを考えると胸の鼓動が止まらない。会うたびに心臓の音が聞かれないか不安になりそうになる。
私は、くるりと向きを変え真正面からユウくんを見据える。私は覚悟を決めて言う。
「急にどうしたんだ?」
「私好きな人が現実でできたんだ。」
「!?」
私の唐突な言葉にユウくんはとんでもなく驚いていた。それもそうだと思う。
「これもユウくんのおかげなんだよ?」
「俺?」
「ユウくんがいなければ今でも男の人とは話せなかったと思うから。」
今でも苦手だけどだいぶ変わった。全部ユウくんやみんなのおかげだ。
「ユウくんのことも好きなんだよ?でもその人のことを考えると胸のドキドキが止まらないの。」
「そうか…。」
彼はイメージと違って意外と料理ができた。彼の作るカレーはすごくおいしかった。お礼に作った私の弁当が美味しいと言ってくれた時はとてもうれしかった。頑張って練習した甲斐があった。
一緒にボウリングをしたり、服も選んでもらった。プールに行ったときは水着も喜んでもらえるかすごく不安だった気がする。どれもすごく楽しかった思い出だ。
ちょっとぶっきらぼうだけど優しくてとても頼りになるそんな人。
そして何よりも
でも私はそんな人が好きだから――。
「…だからねユウくん。」
だから私は言わないといけない――。
「私と別れてください。」
私は、大城雄大君のことが好きだから。
*******
応援コメントで予想された方もいた通りこんなかんじで2章は終わりです。個人的にもうちょっとうまく書きたかったんですが自分の文章能力不足です。申し訳ございません。この時のユウ視点は次乗せるので気になる方は次の更新を待っておいてください。
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