3.
第41話 新学期
「はぁ。」
俺は絶賛落ち込み中だった。
『私と別れてください。』
クロに夏祭りの最後に言われた言葉だ。あの時の言葉が永遠に頭から離れない。
クロの言葉はあまりにも衝撃的でショックだった。言われたその時は頭が真っ白になって何も考えられなくなった。自分が大城雄大ということを打ち明けるのを忘れるほどには。
それでも何とか「分かった。応援してる。」とだけ返してその日は解散した。家に帰ってくれば智也や石崎からの連絡があったが返す気にもなれなかったのですぐに寝た。
次の日は、ぐっすりと寝ていたかったがそうは問屋が卸さなかった。智也によるしつこいモーニングコールで強制的に目を覚まされた。
その後の事情聴取に答えると智也は「あぁ、なるほど。良かったな。」って返してくるし、石崎には「まだ何とかなるじゃん。頑張って」と励ましの言葉をいただいた。謎である。
「これはこれでよかったのかもな。」
だが今になって考えるとある意味良かったのかもしれない。
クロはゲームをやめると言ってたし、もう俺がユウとして関わることは二度とない。後はもう忘れればいいだけなんだ…。でも…頭には様々な思い出がよぎる。初めてあった時や初めて一緒にボスを倒したこと、ギルドのみんなでワイワイと騒いだこともあった。
…やっぱり寂しいな。
◇◇◇
そんなこんなで夏休みが明け、久しぶりに制服にそでを通した。
「おはよう、雄大。」
「おはよう、智也。」
智也とこうやって面と向かって話すのも久しぶりだ。
「ほんとに大丈夫か?」
「あぁ、大丈夫だ。」
智也の言いたいことは分かる。今日は夏休み明け初めての学校の日だ。すなわち黒川と嫌でも顔を合わせる日となる。俺は夏祭り以降黒川と会うような機会なんてあるはずもないので今日が振られて初めて会う日なのだ。
「もともとお互いに好きな人ができたら別れるって決めてたんだ。もう俺も割り切っているよ。」
言われたときは確かに辛かった。でもクロに好きな人ができたんだ。もともと俺とクロの住む世界は違うんだ。これから俺にできるのはクロの幸せを願うことだけだ。
「…そうじゃないんだが。いやお前がそれでいいならいいんだけどよ。」
「?」
どうにも智也の言うことが良く分からない。そんな時にクラスのみんなが静まり返った。原因は教室の扉が開かれ、黒川が入ってきたことだ。
「え?」
俺も思わず声に出てしまった。それもそうだろう。黒川がなんと髪を切っていたのだ。それもかなり短い。いわゆるショートボブという髪型だった。これには俺も動揺を隠せない。
クラスのみんなが静まり返ってしまうのも仕方がないと思う。今までの髪型も十分に黒川に似合っていたが今の黒川の髪型はもっと似合っていると思う。そのせいか自然と周りの目を引き付けてしまうのである。
(やばい。)
そんな黒川の姿に夢中になっていると黒川がこちらに近づいてきた。俺は黒川の隣の席だ。だから学校ではほぼ毎日挨拶をする。あっちにとっては久しぶりに会うクラスメイト。だが俺にとっては振られた元カノという何とも言えない関係だ。まだ心の準備ができていないんだが…。
(あれ…?)
と思っていたが俺に挨拶をするわけでもなく、黒川は無言で席に座った。こちらに目を合わせようともしない。
もしかして俺なんかやらかしたのか?
その日の授業はそのことで頭がいっぱいでほとんど授業に集中できなかった。
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