第34話 引きこもり
「まぶしぃ。」
夏の日差しに照らされ、強制的に目が覚まされた俺の気分は最悪だった。
冷房をかけるのも忘れていたせいで全身汗びっしょりである。これには流石に俺もドン引きだった。流石に気持ち悪かったのでここ数日ぶりにシャワーを浴びることにした。
あの日から約一週間が経った。智也に知られ、最悪の仲にまで陥ってしまった。それからというもののアンリミにもログインはしていないし、なんなら家からも一歩も出ていない。それぐらい俺の引きこもり具合が悪化していた。
幸い食材は買い込むほうだったので今まではどうにかなってきたがもう食料は底をつき始めている。というよりない。後はほんとに緊急時のための冷凍食品ぐらいしかなかった。
「仕方ねぇ。」
重い腰を持ち上げ、財布と鞄を手に玄関に手をかける。
「あ゛ぢいいいーー。」
蝉も元気に鳴き、夏休みも真っ盛りなこの時期だ。当然窓越しの日差しなんか比じゃないくらい暑い。
「さっさと行こう。」
このままだとまた汗だらけになって二度目のシャワーコースまっしぐらだったので自転車にまたがり、今までの中の最速でスーパーへと向かった。
◇◇◇
「そうか、もう3か月近くも前か。」
スーパーの前でふと思い出したのが黒川が入学したての頃にスーパーの前でナンパを受けていたことだった。気が付けばもう7月で随分と昔のように感じてしまった。それも俺のせいなのかもしれないがな…。
今更俺にどうすることなんてできないし、彼らと顔を合わせたところですぐにでも逃げだしそうな気がする。自分でもダメなのはわかっているのにな…。
「あぁ。」
お惣菜のコーナーを見て思い出す。そういえば黒川を家に誘ったこともあったなと。今にして思えば信じられない出来事だ。あの時の黒川は(というよりも今もだけど)男子に対して冷たかった。そのほとんどがいやらしい目つきで見ていたりしていたことが原因だったからだ。それにも関わらず俺は、無害そうだからと家に上がり込んでくるしそれからは結構仲良くさせてもらうことが多いし…。
「あれ…?」
顔に一粒のしずくが落ちた。というよりも涙だ。俺は泣いているのか…?と無意識にそんなことを考えてしまう。
どんなに忘れようとしても頭から決して出て行ってはくれない彼ら彼女らとの思い出。特に黒川関連は強くこびりついているような気もする
「…いかんいかん。買い物だった買い物。」
今の俺の目的は買い物だ。懐かしさを味わいに来たのではない。食料がなくなったために補充するためにここには来たのだ。ついでにアイスでも買っておけば快適さが増すだろう。
◇◇◇
それから数日後いつものようにぐうたらと寝ていると突然やってきた。
ピンポーン。
インターホンの音だ。だが俺はその程度では起きなかった。なんせ寝ている合間に地震が来ていても気づかないような男だ。そんなインターホン一回程度で目が覚めるわけがない。
そんな感じで熟睡していると
ピンポーンピンポーンピンポーンピンポーン。
何度も連打してくるようになってくる。こうなるとさすがの俺も目が覚めてしまう。
「誰だ?いたずらなら帰れ。」
と言っているが残念ながらベットの上で寝ぼけながらである。俺は宅配なんか頼んだ覚えもないし、家に訪れるような友達はいない。…言っててむなしいなこれ。
すると――。インターホンがやんだ。
「よし。」
布団を再び体にかけ二度寝タイムに入ろうとした――。
ピピッピッピッピンポーン。ピピッピッピッピンポーン。ピピッピッピッピンポーン。
まさかのター〇ネーターである。いやそんなことよりも――。
「うるせぇぇぇぇぇ。」
流石のこれには我慢できずどたどたと階段を勢いよく降りる。そして勢いよくドアを開け――。
「おいっ、遊びも大概に…。」
そこまで行ったところで言葉が詰まった。なぜなら――。
「やっほー、おっしー。」
そこにいたのは、智也の彼女である石崎理恵だったからだ。
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