第25話 カレー作り
黒川のおうち訪問から2週間ほどが経った。
黒川は、俺の家をたびたび訪れてきていた。今日も料理を作る日だ。
今日作るのは、カレーだ。ちょうど俺が初めて黒川に食べさせた料理だ。
「うぅ、目に染みる…。」
「すまんが我慢してくれ。」
うちのキッチンは割と大きいので二人で使ってもスペースに問題はない。
(それにしても…。)
黒川の腕もだいぶ上がっていた。最初は、猫の手も満足にできなくていつ指を切るんじゃないかとひやひやしたものだった。彼女は努力を惜しまない人でこの2週間で随分と料理の腕上がったような気がする。そのうち俺無しでもちゃんと料理ができるようになるだろう。むしろ俺よりもうまくなるんじゃないかと思っている。あくまで俺の料理は、できる限りお金の無駄遣いをしないために身につけたものだしな。
ただそれと同時に俺は胸の内で複雑な思いがあった。大城雄大としては、黒川が家にきている状況というものはうれしい。だってこんな美少女と二人きりだもの。役得でしかない。ただユウとしての俺は複雑な思いでいっぱいだ。はたから見れば彼氏でもない男の家に気軽に訪れている状況である。それが俺だからいいものの何とも言えない複雑な思いだ。まぁ、俺も彼女に嘘しかついてない最低なやつであることは確かなので黙って口をつぐんでおく。
◇◇◇
カレーができたので同時に焚いていたご飯の上にかけてテーブルの上に並べて一緒にいただく。
「おぉ、うまいぞ黒川。」
「良かった~。」
俺の言葉を聞いてホット安堵の息をつく黒川。今回俺は軽く指示を出しただけでほとんど手伝ってない。このカレーは、黒川の腕によるものだ。ジャガイモやニンジンの切り口もそろっているしほんとに黒川は料理熱心だと思う。
「この調子だとそのうちにでも一人で十分作れるようになるよ。」
「そっかー。ちょっと残念だなぁ。」
最後は何て言ったか分からなかったが黒川が料理ができるようになるのはうれしい反面、ちょっと寂しいような気もする。
「それよりもさ、来週のプールの話聞いた?」
「あぁ、聞いたぞ。」
実はというともうすでに夏休みは始まっていたりする。つまるところ前に約束したプールの日が近づいてきているというわけだ。
駅から電車に乗って20分ぐらいかかる少し離れたところのプールに行く予定だ。少し前にリニューアルされたばかりでいろいろと新しいのだ。みんなリニューアルされてから行ったことがないという事でそこに行くことが決まったのだ。
「私としては、流れるプールが楽しみなんだよね~。」
「あー。」
俺もわかる。流れるプールって大体ループするような形になっているから俺は浮き輪でぷかぷか浮きながら流されるあの感じが好きなんだよなぁ。
でも俺にはもう一つ楽しみがある。
「俺はやっぱりウォータースライダーかな。」
プールと言えばウォータースライダーそういうくらいには俺はウォータースライダーが好きだ。リニューアルする理由にウォータスライダーもちゃっかり含まれていたりする。あの水で流されて最後にプールに突っ込むあの感じが癖になっている。とは言えここ2年間くらいプールには行ってないが…。
「私ウォータースライダーって乗ったことが無いんだよね。だからどんな感じなのか不安で。」
「そうか…。」
俺も最初初めてウォータースライダーに乗った時はすごく怖かった。なんたってものすごく高い位置から始めた思い出があったからだ。でもいざ乗ってみればめちゃくちゃ楽しかったのだが。
「まぁ、小さい子向けのスライダーとか。二人で乗るスライダーもあるから最悪石崎と一緒に乗れば怖くないだろ。」
「うん、そうだねっ。理恵ちゃんと一緒なら何でも楽しめそうだし。」
石崎は基本的に底抜けに明るく誰といてもその場を楽しませてくれるような子だ。きっと黒川も石崎と一緒なら怖くないに決まっている。
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