第24話 圧迫面接
緊迫した表情で訴えてくる黒川パパ。あまりのその切迫した感じの表情が怖えよ…。でも黒川と俺はそんな関係じゃないので誤解を解かなきゃならない。
「違いますお父さん。決してそんな関係では…。」
「君にお義父さんと呼ばれる筋合いはない!」
なぜだ…。なぜ余計に怒りが増しているんだ…。俺は何て言った?お父さん?お義父さんか!そりゃダメだ。まるで俺が黒川と付き合っているみたいになってしまう。
ここはとりあえず訂正をしつつ、話を進めよう。
「黒川のお父さん。自分と黒川はそんな関係ではありません。ただのクラスメイトです。」
「そ、そうだよ…。だからお父さんも落ち着いて。」
俺が誤解を解くためにクラスメイトという表現をしたのだが何だが黒川の元気がなくなったような気がする。
「そうか安心したよ。あと私の名前は、
ほっとしたかのような顔つきでそう語る黒川のお父さん。
「俺は、大城雄大です。樹さんそこで頼みが…。」
そこまで言おうとしたところで黒川に手で遮られた。ここからは自分で言うということだろうか?
「お父さん。私ね、料理をちゃんとできるようになりたいの。そこでここにいる大城君に料理を教わろうと思っているんだけどダメかな?」
「ほう。」
急にスーッと目つきが鋭くなる樹さん。思わず俺の背筋も凍った。
「それは、春奈じゃダメなのか?」
「お母さん仕事でいっつも忙しそうでしょ。それに今まで迷惑をかけてきたからお父さんにもお母さんにもできる限り迷惑をかけたくないの。」
どうやら春奈というのが黒川のお母さんの名前のようだ。これで樹さんも納得するかと思っていたがどうやらまだ終わらなさそうだった。続けざまに黒川に質問をしていく。
「それだとそこにいる大城君にも迷惑がかかるんじゃないか?」
「それは…。」
どうやらさすがにこの質問には黒川も詰まってしまった。ここは俺が助け船を出すべきだろう。
「いえ、全然大丈夫です。むしろ普段お世話になっている分自分がいろいろとお返ししなきゃと思っているぐらいで。」
実際黒川には、学校生活でかなり助けられている。実際俺が話す相手など智也か石崎か黒川ぐらいだ。石崎も智也もかなり二人でいることも多いので実質俺が普通に話すことができる女子は黒川ただ一人なのだ。するとなぜか樹さんはこちらをキッと睨んできた。俺何も悪いこと言ってないと思うんだが。
「それでも一つ屋根の下に男と女がいるのは危険だろう。」
「んー、お父さん。大城君にそんな度胸があるような子に見える?」
「見えないな。」
さらっと罵倒されたような遠回しにヘタレだと言われているような気もするが気にしたら負けなのだろう。
「本当に料理だけなんだな?」
「もちろんです。」
確認をとってくる黒川のお父さん。俺の言葉を聞いて「よし」と一息ついて――。
「分かった。君のことを娘に免じて信じよう。」
「あ、ありがとうございます。」
「ただ…娘に何かあったらただじゃおかんぞ?」
「は、はい。」
最後の言葉だけは絶対に守らないといけないだろう。いや、もともと何もするつもりはなかったが。目だけで人が殺せそうなぐらい恐ろしかった。
そう言い残すと黒川のお父さんは部屋を出て行った。
「ごめんね、大城君。お父さん怖いけどあれはきっと私のためを思っていってくれたことだから。」
「いや大丈夫だ。黒川のお父さんが家族思いなのは良く分かったからさ。」
最初は親バカかなにかと思ったがやっぱり娘のことが心配なのは言動から良く分かった。
「まぁ、お父さんも大城君がいい人だって分かってくれるよ。」
「…そうだといいな。」
結局この日はこのまま黒川家を後にした。ものすごく疲れたような気がする。
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