第22話 家庭訪問
(やべぇ。)
俺は、わかりやすくめちゃくちゃ緊張していた。今俺は、電車に乗って黒川の家へと向かっている。放課後というのもあって、時間としては帰宅する人も多い時間。それなりに電車内の人も多かった。まぁ、何が言いたいのか言うと。
(近すぎる。)
黒川と俺の距離はほぼゼロ距離と言ってもいい距離で女の子特有?の何だかいい香りがする。なんか変態みたいな思考に染まっている気がするが気にしない。
「そんなに気にしなくていいってば。取って食われるわけじゃないんだし。」
「いやそうなんだが。」
俺の顔色の悪さに気づいたのか俺に緊張させないように気を使ってくれたのだろうが。俺が言いたいのは、そうじゃない。黒川との距離が近すぎるということなんだが流石に言えなかった。
「きゃっ。」
「!?」
そんな矢先に突如として電車が揺れた。突然の揺れにバランスを崩した黒川は何とこちらにもたれかかってきた。何だこの状況ラブコメかよ。
男のようながっしりとした体つきではなく、女性特有の柔らかい体。体に触れる二つの柔らかい何か。いや言わなくてもいいです。そして相手は、校内でも有名な美少女であるという状況。俺の心臓の音はすでにマッハで俺の鉄のような理性が溶けてしまいそうだ。それだけ今の状況は切迫していた。
「ごめんね。」
「…あぁ、大丈夫だ。」
黒川が顔をあげて謝ってくると同時に気が付いた。目と目を合わせれば互いの息が吹きかかるような距離。黒川も俺も互いに顔が真っ赤になっている。俺はただひたすら心臓の音が聞かれないことを祈っていた。
◇◇◇
「…。」
「…。」
俺と黒川の間では会話がなかった。先ほどの出来事がまだ脳裏にちらつく。俺は黙って黒川の後ろについていった。
ある程度歩いたところでくるりと黒川がこちらを向く。どうやら目的地にはついたようだ。
「ここだよ。」
「おう。」
少しだけ安堵した。黒川の家はごくごく普通の一軒家だった。これが実は豪邸でしたとかだったら俺はすぐさま逃げ帰っていただろう。
「ただいまー。」
「おじゃましまーす。」
黒川に続いて俺も家にお邪魔する。するとリビングでだろうか?そっちの方向から足音が近づいてきた。
「あらいらっしゃい。よく来てくれたわね。」
出てきたのは、黒川のお母さんだろう。黒川の髪をそのまま長く伸ばしたような感じで年上特有の妖艶さを感じる。それにしても見た目が若い。随分と若作りとしているのだとわかる。下手したら年の離れた姉妹と言っても通用しそうだ。
「すいません、手土産もなしに。」
「いいのよ、別に。紗帆ちゃんに連れてきた初めての男の子なんだから。」
そうなんだ。てっきり黒川のことだから今まで彼氏とかいたと思ってたからちょっと意外だった。人は見かけによらないらしい。
それと同時にグサッと何かが心に突き刺さったような気がする。気のせいだろうか。
「ちょっとお母さん。大城君は全然そんな関係じゃないよ。」
「あらそうなの?いっつも彼について話しているからてっきり彼s」
俺が彼氏なわけがないだろう。人には分不相応というものがあるのだ。
グサッとまた心に突き刺さるような気がした。
「うわわわわわ。ちょっと大城君は中で待っててね。」
めちゃくちゃ慌てた様子で黒川は彼女のお母さんの口をふさいで奥へと連れて行った。そんなに慌てることでもないだろうに。
とりあえず俺は、おとなしく案内された通りにリビングで待つことにしておいた。
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