第16話 ボウリング

「どうする個人戦でやるか?」


今俺たちがいるのは、モールにあるボウリング場だ。お昼に午後からボウリングでもするかということでここに来た。ようやくストレス発散ができる。


「俺は、それでいいんだが。」


「えー、つまんなーい。」


石崎がぶった切ってきやがった。つまんなーいってなんだよ。


「あっ、そうだ。2対2のチーム分けをして負けたほうがなんかしようよ。」


「いいな、チーム分けはどうする?」


なんか智也が乗り気なんだが…。こうなると止まらないだろう。さっきから黒川は黙っているし。


「それは、もちろん俺と智也の男ペアに「ちょっと待ったー。」」


なんでそこで待ったが入るんだ。


「どう考えても私と智君ペア対おっしーと紗帆ちゃんペアでしょ。」


嘘だろと思いながらも隣にいる黒川の方をちらりとのぞきこむ。さっきのごはんから黒川は一言も話していない。俺でもかなり恥ずかしかったし、黒川も同じぐらい恥ずかしい思いをしたのだろう。


「だそうだが黒川はそれでいいか?」


「…えっ?あ、うん。」


俺が黒川に尋ねると少し遅れて返事が返ってきた。ほんとに大丈夫か?これ。


「じゃあ、罰ゲームは買ったほうにジュースおごるくらいでいいだろ。」


「そうだな。」


「うん。」


「…うん。」


まぁ、なるようになれとしか考えられない。


◇◇◇


「ごめんなさい。」


「いや気にしなくていいよ。」


俺たちが選んだのは、それぞれ3ゲームのコースだ。俺と智也と石崎は似たような実力なのかあまり得点差が変わりない。しいて言えば智也が一歩抜きんでているといったところか。


それに加えて


「いや、流石にこれは。」


「どんまい、紗帆ちゃん。」


智也にいたっては笑顔が引きつってるし、石崎は満面の笑みでどんまいと言っているがそれ何のフォローにもなっていないからな?


黒川のボウリングの腕は有り体に言えば凄惨だった。二回に一回はガター行きになるレベルだった。正直、ガターを防ぐやつ(名前を忘れた)でも使えばいいんじゃないかと言ったが頑なに黒川がそれを拒んできたのだ。


「まぁ、俺たちの負けは決まってるんだ。気楽にやればいいさ。」


「大城君…。」


今回の勝負は、3ゲーム通算の二人の合計点での勝負なのだが現時点で俺たちは2倍近くの点差をつけられている。で今は2ゲーム終わったところだ。俺たちに勝ち目がないのは明白だ。黒川がこんなにも落ち込んでいるのを俺はめったに見たことがなかったので内心びっくりした。


「しかたねぇなぁ。」


智也が頭をポリポリとかきだした。何かする気か?こいつ。


「雄大、男の勝負だ。3ゲーム目の俺と点数の点で決めようぜ。」


「おぉ、いいぞ。その勝負乗った。」


智也…お前やっぱいいやつだよ。これは、ぜひとも勝たねばなるまい。黒川のためにも。


「全く男子ってなんでこうもバカなんだか。智君、ぶっ潰せー。」


「大城君、頑張ってね。」


あのそのバカな男を好きになったのあなたですよ?石崎さん。後、黒川の応援のおかげか体から力があふれる気がする。今の俺は誰にも負けんぞ。


「「さぁ、決闘だレッツデュエル。」」


◇◇◇


「なぜだ。」


俺は膝をつき、陰鬱な気持ちになっていた。なぜなら…。


「雄大、俺に勝とうなんざ1年ぐらい早い。」


「さっすが智君。」


互いのスコアは、互角だった。最後に俺がスペアを決めて勝ったと思っていたら、なんとこいつはストライクを決めてきやがった。これが主人公補正ってやつか。


「んじゃ、俺コーラで。」


「私は、リンゴジュースで。」


「へいへい。」


「待って私もお金出すよ。」


財布を手にし、自販機に向かおうとした俺を止めようとしてきたのは黒川だった。


「いや今回の負けは俺のせいだから。黒川は気にしなくてもいいよ。」


「そもそも最初から私のせいで負けたんだよ?だからこれは私のせいで…。」


黒川もお金を出そうと頑なだった。ジュース一本も二本もそれほどお金はかからんのだがな。


「まっ、今回は俺のせいってことで。じゃあ。」


「あっ、ちょっと。」


必殺逃げるが勝ちというわけで走って逃げました。とりあえず頼まれたジュースでも買うか。


◇◇◇


大城君が行ってしまった。本当は私のせいで負けが確定していた。そんな私たちのことを思ってか佐伯君が大城君との一対一を提案した。結果としては大城君が負けたものの彼は自分のせいで負けたかのようにふるまっている。本当は私が悪いのに。


「はい、ドーン。」


「きゃっ。」


私の背中を思いっきり理恵ちゃんが押してきた。


「そんなに思いつめた表情しなくてもいいんだよ?」


「そうだ。それにあれはただの男の意地だと思うしな。」


「そうなんだね。」


佐伯君の言う男の意地というものは分からないがきっと大城君と佐伯君にはわかるのだろう。


「それよりもおっし―のことはどうなの?随分と積極的だったけど。」


「そんなことは…な…いよ?」


否定したかったものの否定しきれなかった。確かにお昼の時は、ちょっとはしたないかと思われたかもしれない。


「まぁ、紗帆ちゃんがそれならいいんだけどね。ユウのこともあるだろうし。」


言われて気が付いた。ゲーム内とは言え、私と彼は付き合っている。この前なんかもキスしちゃったし。えへへ…。


そうじゃない、話がそれちゃった。大城雄大君。ひとことで言えば第一印象は無関心といったイメージだった。だが実際はそんなことはなく、とても楽しむときは楽しんでるし、何より優しい。ナンパから助けてくれて時もすごくかっこよかった。どこかユウ君と似たような雰囲気を感じる男の子。


ゲームはあくまでゲームであって現実ではない。だからここではっきりさせないといけないのだろう。前は気持ちがはっきりしてなかったけど今なら言えると思う。


「私は……。」


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