第11話 おしゃべり
「そこまでだ。」
チャイムが鳴り、先生の声とともにみんなの手が一斉に止まる。
(今回は、自信があるぞ。)
何時もそれなりにできているが今回は、違う。相手がクロということもあったので俺は全力でテストに挑んだ。正直、今回ばかりは負ける気がしない。
◇◇◇
「エリー、どうだった?」
「地理に関しては大丈夫。これならあのおっし―でも勝てるはず。」
「おおー、いいね。」
アンリミにログインして、ギルドハウスにきて見れば何やらテストの話で盛り上がっている。もう少し隠す努力をしてほしいんだが。
「テストはもう終わったのか?」
2週間ほど前、俺のもとに一通の通知が届いた。差出人はクロでテスト期間だからログインできないというもの。返事に了解と短く返しておいたのだが俺も無理だったのでログインしなかったが。
「えぇ、もうばっちり。ね?クロちゃん。」
「うん。」
エリーもクロもどちらも表情にいい。これは相当自信があるようだ。
「そういえば、ユウって何歳くらいなんですか?」
唐突なエリーの質問に気の抜けた返事を返してしまった。
「え?」
「あ、いや。答えたくないならいいんです。でも雰囲気的に同じくらいの年齢かなって。」
あわあわと手を振りだすエリー。思わずクスリと笑みが漏れてしまう。
「えっと…一応大学生かな。」
だが済まない。これは嘘だ。本当は、同じクラスの大城だぞと言いたい。だが俺にはリアルを隠さなきゃいけない事情があるんだ。
「ユウって年上なんだ。」
「ユウくん大人っぽいし、何かわかるかも。」
すいません大人っぽいって何ですか?俺分からないんですけど。
「大学生ってどんな感じですか?私たちまだ高校生だから良く分かってないんですよね。」
ここはそれっぽいことを言ってごまかさなきゃいけない。それよりも。
「敬語やめてよ。堅苦しいのは嫌だからさ。」
「は…うん、わかった。」
素直に応じてくれるエリー。俺、年上じゃないんだけどね・・・。
「大学生って言ってもそんなに高校と変わらないよ。でも受ける授業は自分で選ばないといけないけどね。」
「そっかー。じゃあ、彼女は?ユウくらいならいると思うんだけど。」
(うぐっ。)
その質問は心にグサッとくるぞ。しかもなんかクロの後ろから般若でも出るんじゃないかと思うぐらいの威圧を感じるし。
「いないよ。大学では地味に普通に過ごしているだけだからさ。」
「そっかー。良かったね、クロちゃん。」
「うん。」
何だクロを安心させるために聞いてきたのか。まぁ、リアルで彼女のいるのにゲーム内で彼女なんて作らないよな。
「そういう二人こそどうなんだ?俺に聞いてばっかじゃなくて。」
ここはこっちから返していくべきだろう。エリーにいるのは分かるがこっちは知らない様子でいかないとだし、何ならクロのリアル事情も少し気になったり。
「あぁ、私はアークと付き合ってますよ。いやもうアークってばすごくかっこよくてね。えへへへ。」
「お、おう。」
エリーってこんな顔するんだ。何か見せてはいけないよのテロップを入れたほうがいいくらい顔が緩み切っている。今までそんなそぶり見せたことがなかったのに。それだけ信頼してくれているのかもだが。
「私はいませんよ。………ユウくん一筋ですし。」
「そっか。」
後半何言っているか不明だったが何だか彼氏がいないということに安心してしまった。とは言え、告白する勇気なんてわいてこないけど。
「さっ、そんなことよりまだまだ質問するね。ユウってなかなか話聞けないから。」
「…お、おう。」
うんうんと顔を縦に振るクロ。俺そんなに聞きたいことがあるような人間か?結局この日、テストで疲れた心をいやそうとゲームを付けたのにある意味精神的に疲れてしまった。そろそろ自分の設定描いておかないと話が矛盾しそうだ。
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