第8話 実は

「はい、今日はここまでだ。各自しっかりと予習復習を忘れないように。」


4時間目の授業も終わり、やっとお昼休みだ。と言っても朝は昨日の残りのカレーを食べてきたので昼は軽めのものだけだが。


「智也、今日はどうするんだ?」


俺のお昼は大体いつも二通りだ。一つは、智也と一緒に食べるパターン。もう一つは、智也が彼女と一緒に食べるパターン。こうなると俺は、ただのお邪魔虫になるので必然的に一人になる。智也はいいとか言ってくるが流石にそこまで馬鹿じゃない。


「すまん、今日は理恵とだ。」


「そうか。楽しんで来いよ。」


「なんだよそれ、おーい理恵。行くぞ」


「待ってよ、智君。」


智也の隣に一人の女性が現れる。彼女こそが智也の彼女の石崎理恵だ。容姿の良さはさることながら誰とでも打ち解けられるその会話能力の高さも相まって男子の中ですごく人気が高い(らしい。)最近の悩みは、ナンパがなかなか収まらないことらしい。智也の容姿も十分かっこいいと思うのでそれに関してはがんばれとしか言いようがない。


(そういえば。)


さっきまでここにいた黒川がいない。いつも誰かしらの女子と一緒にご飯を食べているころなはずなんだけど。・・・・・・・俺には関係ないか。


俺は、黙々と昼飯を食べて軽く仮眠をとることにした。


◇◇◇


「えっと、それで何の用なの?」


私は、今屋上にいる。こうなった経緯としては、今朝学校に来ると理恵ちゃんに「今日、お昼休みに屋上にきてね。待ってるよ。」といわれた。もしかして昨日のことがばれたのだろうか?だとすると大城君には、謝らないといけないかもしれない。まだはっきりと理恵ちゃんの人物像はつかめていないが彼女が見たというならほかの人たちも見た恐れがある。大城君、いい人そうだから迷惑かけたくないんだよね。ただのヘタレなのかもだけど。


「すまん、スマホ教室に忘れてたわ。」


「もう、智君。紗帆ちゃん待たせてるんだから早く用事は、済ませないと。」


「すまんすまん。」


そう、もう一つ気がかりな点がある。佐伯智也、容姿もよくコミュニケーション能力の高さからクラスの大体の人たちとは仲がいい。そして目の前にいる石崎理恵ちゃんと付き合っている。正直すごくお似合いだと思うけども何でここにいるんだろう。


「黒川さん、俺が理恵に頼んでここに呼んでもらったのには、聞きたいことがあったからだ。」


「えっと何?私、彼氏はいないけど…。」


「俺が聞きたいのは、Unlimited World Onlineのことだ。」


「!?」


思わず体がぴくっと反応してしまった。でもどうして?絶対誰も私がそれをやっていると知らないはずなのに。


「そうだよね?フィライトのクロさん?」


「・・・・。」


私は、絶句している。フィライトというのは、私たちのギルドの名前だ。ドイツ語で4を表すフィーアと自由を示すフライハイトをあわせたものだ。なぜドイツ語かはさておき結構気に入っている。ここまで特定されているのなら嘘をついても無駄だろう。


「うん、そうだよ。私がクロだよ。それでその情報をどうするの?」


「やっぱ、クロさんはその話し方じゃないとなぁ。」


「そうそう。やっぱ学校での話し方って何というかこう壁を築いているというか。」


「えっと、二人とも私のこと知ってるの?」


「あー、いっつも俺全身鎧だしな。」


「私もいつも何かしらの仮面付けてるしね。それこそユウも何かスカーフつけてるし、クロちゃんだけだよね。」


「えっとまさか、エリーとアーク?」


「「正解!」」


「うっそぉ。」


二人の言葉に思わずびっくりしてしまった。エリーとアークは、私とユウ君と同じギルドのメンバーでエリーは、いつも何かしらの仮面をつけている。アークは、全身鎧なので顔が見えない。それにしてもこんな身近にギルドメンバーがいるとは。


「まぁ、そういうことだ。困ったことがあれば頼ってくれよ。」


「むしろクロちゃんのためなら何でもするからね。」


「二人とも。」


申し訳なかった。二人はこんなにもいい人だったんだ。そりゃクラスの大勢から慕われているわけだ。何だが申し訳なく感じた。この後は、二人と一緒に屋上でご飯を食べた。気を使わなくていいって素晴らしい。とても話が弾んだ。

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