第7話 カレー食べさせた

「ひょっとしてカレー?」


「そうだよ。今日は、カレーを食べたい気分だったから。それにしてもずっとついてきてるだけだけど何か買わなくていいの?」


「いやぁ、私はお惣菜買うつもりだったんで後で大丈夫だよ。」


(え?お惣菜を買うってことはまさか)


俺は、ふと思いついた疑問をぶつけてみることにした。


「えっと、失礼ながら料理は・・・」


「できません。」


「親は」


「今日は、出張で帰ってきません。」


「・・・」


「・・・」


「いや、まぁ。人間誰しも得意不得意はあるから」


「ちょっとごめん。慰めようとしてくるのやめてくれない?悲しくなるよ。」


「ごめんなさい。」


「いいって別に。それにしても意外だね、大城くんが料理できるなんて」


「まぁ、ね。」


わかるわかるぞ。どう見てもモブにしか見えない俺が料理できるなんてとてもじゃないが思わないと思う。


それにしても意外だった。てっきり黒川はなんでも出来るような人だと思っていたから。運動もでき、勉強も真面目そうだし、友達作るのも早い。それに料理までできていたら完全に俺負けてるからなぁ。


やっぱ黒川が好きなんだな俺。見た目が変わってもこの胸の鼓動が止まらないよ。買い物終わったら別れるのがちょっと寂しいし・・・そうだ。


「ねぇ、黒川さん。良かったらうちでカレー食べて行く?」


「えっ、いいの?じゃあお願いするね。」


「そうか・・・やっぱだめだよねってええええええ!?」


(え?いいんですか?この誘いのってくれるんですか?)


「何をそんなに驚いてるの?」


「いや、ちょっと。まさかのってくれるとは思わなくて」


だって黒川にとって俺とあって1週間程度の上に学校で全然話さないんだよ?こんなの想像出来るわけないじゃん。それに男の家にそう簡単に乗り込むと思う?


「えっとやっぱり迷惑?」


「全然。誠心誠意作らせていただきます」


「期待してるね。」


やばい黒川の笑顔が天使に見える。今日ばかりは許してくれクラスのみんな。


◇ ◇ ◇


「おぉ〜。」


「とりあえず中に入って。」


「綺麗だね〜。」


「まぁ、掃除はちゃんとしているからね。」


「こんな広い家に一人暮らしなの?」


「親が両方忙しいからね。」


俺は、マンションでいいと言ったのだが親がどうせそのうち住むと言って購入した一軒家。二階建てのごくごく普通の一軒家とはいえ一人暮らしの俺にとっては広すぎる。


「とりあえずソファにでも座っててよ。用意するから」


「わざわざありがとう。」


「ほんとに気にしなくていいから。誘ったのは俺だし。」


ソファーに黒川を座らせた俺は、早速料理の準備を始める。


野菜と肉を切り、フライパンに肉を入れて炒める。程よく火が通ったら野菜を加えて玉ねぎが透明になるくらいまで炒める。


炒め終わったら鍋に移して水を加えて20分程度煮込む。


そこでとりあえずある程度余裕が出来たのでスマホでもいじることにする。


ピコーン


「ん?ブフォッ」


「え?大丈夫!?」


なんだが黒川が騒いでるがそれどころではない。俺はスマホに来た通知内容が原因で驚いて、口にした水を吹いてしまった。内容というのが


ユウくんへ


今日は、友達の家でカレーを食べるので家に帰るのが遅れるのでできません。ごめんね?


クロより


(いやいやいやいやいや)


とりあえず順序よく説明しよう。


アンリミにはフレンド通信というフレンド同士で相互にチャットでやり取りできるシステムがあるのだがスマホと連携することでスマホでやり取りすることが可能になる。


そのメッセージ機能を用いて届けられたのが先程のメッセージだ。それにしてもリアルの事情を普通に話すのはどうかと思う。普通に用事があるとかでいいのに。これは、あとで注意しておこう。


「大丈夫大丈夫。ちょっとむせただけだから。」


「ならよかった。」


なんとか違和感を持たれなかったので良かった。やはり黒川と2人きりだとどうしても気が緩んでしまう。いつものクロと話しているようになってしまう。


そこからは、何があっても動揺する事がないようにご丁寧にスマホの通知を切り、料理に励んだ。とは言っても後の作業はルーを入れて煮込むだけだったのだが・・・




「「いただきます。」」


「うん、美味しいよ大城くん。」


「それならよかったよ。」


めちゃくちゃ美味しそうに食べる黒川に俺は、見とれそうになってしまった。普通にカレーを食べてるだけなのにとても上品に見えた。


「えっと、どうしたの?」


「あっいや、美味しそうに食べてくれて嬉しいなぁと」


「なるほどね。」


いかんいかんずっと見つめてしまっていたようだ。意味深な笑みを浮かべる黒川に思わずドキッとした。慌てて視線を逸らして俺もカレーに手をつけることにする。


ある程度食べ終わった頃俺は、1つ聞きたいことがあったので聞いてみることにした。


「ねぇ、黒川さん。どうして俺の家まで来てくれたんだ?普通会って1週間程度の男子の家の中になんか入らないと思うんだけど。」


他にも理由はある。彼女は、女子とは比較的仲良くしているが男子とはどこか一線を引いたような感じで対応している。それだけにかなり気がかりだった。


「あなたが優しそうだから。それで納得したらいいんだけど納得しないよね?なんというかクラスの男子のほとんどが私に向けてくる視線ってちょっとアレなのよね。そんな視線を向けてこない人でも仲良くなりたいって感じで話しかけてきたりするんだよね。」


「お、おう。」


これはアレだろう。よこしまな目線という奴だろう。確かに黒川はスタイルもいいと思し、女の子は目線に目ざといと聞く。確かにお尻とかそうとう柔らk…。はっ!?


「大城君?」


「なんでもないです。」


部屋の空気が3度くらい低くなった気がする。


「でもあなただけ、あなただけは何もしてこなかった。あぁ、さっきのは減点だね。でもそれなのにあなたは、私を助けてくれた。最初に挨拶しただけの私に手を貸してくれた。それって相当なお人好しの人じゃないとありえないと思うの。ってこんな感じでいい?」


「う、うん。ありがとう。」


やっぱり気が付かれてる。女の子怖いです。


「さっきのは許すよ。あんな話振った私もどうかしてるし。それに大城くん私の知り合いにすごい似ているのよね・・・」


「以後気を付けます。」


最後に言ってたことは小さすぎて聞き取れなかったが何もしないのは面倒事が増えるのが嫌だからやっただけで知り合いがナンパに絡まれているんだから助けるのなんて当たり前だと思う。


その後、黒川を家の近くまで送り届けたところで別れた。

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