第6話 遭遇した
クロこと黒川が学校に来てからもう1週間も経った。彼女のコミュ力は凄まじく、その容姿も相まって既に友達も多くできているようだ。ちなみにアレから俺の方は全くと言っていいほど変わっていない。いくらゲーム内でクロとキスをしようが現実での俺はモブなので何の影響もない。むしろあったらおかしい。
「いや〜、紗帆ちゃん可愛いよな〜」
「そんなこと言っても大丈夫なのか?」
「大丈夫。俺は、理恵が1番だからな。それに理恵と紗帆ちゃんもう既に仲良いしな。」
「はぁ、これだからリア充野郎は」
理恵こと石崎理恵は智哉の彼女である。彼女にしたいランキングによると彼女は、常にトップクラスの順位に位置している。そのせいか一部の人たちの間でファンクラブが出来ているようだ。誰とでも接する彼女だが智哉にだけ見せるデレデレした姿が魅力的らしい。(理恵ファンクラブより)
「いやでもお前もそう思うだろ?」
「まぁ、確かにそうかもしれないが」
実際、黒川は可愛いと思う。普通の人では何とも思わない仕草でさえも彼女が行うだけで周りの人の目を引き寄せてしまうほどの効果がある。ちなみに俺は、クロで慣れているので効かない。他の人からは、ただ周りに興味のない人間程度にしか思われていないだろうが
「お前ももうちょっと身だしなみを整えればなぁ・・・素材はいいのに」
「めんどくさいし変に注目を浴びたくないからね」
「もったいない」
智哉にもったいないと言われても今のところはどうするつもりは無い。俺の容姿はそこまで優れているものでは無いと思っているし、きちんと寝癖なども治しているから大丈夫だと思っている。最近はちょっと前髪がウザく感じるようにはなったが・・・
◇ ◇ ◇
「あれは、黒川さん?」
学校からの帰りにスーパーに晩飯の材料を買いに来ると黒川がいた。
ちなみにスーパーの目の前でナンパされているようで何だか既視感を覚えた。
(どっかで見たような・・・それよりも助けるしかないよな〜)
俺は、走ってナンパ野郎と黒川の間に割り込んだ。
「すいません、彼女は俺の友達なんでそういうのやめてもらっていいですか?」
「は?クソガキは黙ってろ。なぁ、嬢ちゃん。俺たちといた方が楽しいよな?」
「え、あっと。その。」
見ていて虫唾が走る。黒川の表情を覗いてみると明らかに嫌そうな顔をしていた。とは言え実力行使に出られたらたまったもんじゃなので周囲の手を借りることにする。
「そんなことより周りを見た方がいいんじゃないですか?」
周りには買い物に来たご婦人や高齢者。はたまた学生までもが注目している。こんな中嫌がる女の子を連れだすような真似は出来ないだろう。
「は?なっ、クソ!帰るぞ!」
ナンパ野郎達は、走り去っていった。やっぱ周りの目を頼るのっていいよね。
「えっと大丈夫かな?」
「あ、ありがとう。大城くん。」
普段の彼女からは想像できない弱々しい声に驚いた。ひとまず何かしら話題を変えようと試みた。
「な、名前覚えてくれたんだね。」
「そりゃ、クラスメイトだもん。覚えているよ。」
「そ、そうか。」
「・・・」
「・・・」
「「ぷすっ」」
我ながら下手くそな話題変換だと思う。しょうがないじゃない。いい話題がないのだもの。
「笑わないでよ。」
「いや、だって。励まそうとしてくれたんだろうけど。面白くて。」
「面白いって」
なんだがすごく悲しくなったような気がするが気にしたら負けだろう。
「まぁ、それよりもさほんとはあんなのあったから家の近くまで送ってあげたいんだけど、晩飯買わないといけないから付き合えないんだ。ごめんね?」
うん。言ってみて思った。俺めちゃくちゃお節介な事言ってないか?なんかすごい迷惑だと思われてたら嫌なんだが。とりあえず何言われても大丈夫なように心構えだけはしておこう。
「えっとそれなら買い物に付き合ってもいい?」
「ん?別にいいよ。むしろ俺なんかでいいの?」
「うん。大城くんは、優しいからね。」
「あ、ありがとう。とりあえずさっさと入ろうか。」
やっぱクロは、良い人だよな。照れそうになる頬を隠しつつ俺たちは、スーパーで買い物をすることにした。
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