グッドディードと痛快な仲間たちVSハイラント部隊 苦儡屋演舞の狂演舞② 「演舞の危険な”演舞”」

 ハイラントがすばやく後退し、持っていた銃を投げ捨てる。手を伸ばし、部隊の女性陣から大きなパイプのようなものを受けとる。ハイラントが構えたその武器に、限武が岩から身を乗りだした。


「おっ。バズーカだ。マジもんじゃん。ガチだわ、ガチ。ありゃ60ミリ口径の――」


「全員ふせろぉ!!」


 解説を始めようとする危機感ゼロの限武を好削と一緒に押し倒す。


 絶大な衝撃が平野を揺らした。


 点在する岩がいくつか砕け、自分たちを隠してくれている岩が半分に欠ける。爆発音から耳をかばうが、度重なる銃声ですでにじんじんと痛んでいる。煙が立ちこめ、仲間が咳きこむ声を聞く。


 衝撃の余波が和らいでいく。待てずに岩影から起き上がる。


「演舞!! 演舞は……!」


 半分になった岩から顔を出し、演舞を探す。あたり一帯に砂ぼこりと小さな火が舞い、そこに数人の人影が見えた。


「……マジかよ。このNPC、レアリティいくつだ」


 ハイラントの呟きが風に乗ってくる。


 煙が強風にさらわれ、平野が姿を現した。部隊が銃を向けて囲む中心に演舞が立っている。


 なんのことはないという顔で、少し裾の焼けた着物を風になびかせ、部隊に囲まれていることにも微塵も臆す様子がない。


 慎重に銃口を定める部隊に、演舞がいきなり刀をふり回し始めた。電流が派手に跳ねて部隊を襲う。


 うわああ、と叫び軍服の集団が方々に散った。演舞の危険な”演舞”に阿鼻叫喚し、逃げ回る。


 圧倒的な光景を仲間たちと見守る。一人でなんとかしなければと急いていたことがバカらしくなった。


 グッディがいなくとも、今は仲間とそのNPCたちがいる。仮にうまくコントロールできないことがあっても、演舞やみんながいるなら、なんとかやれるのではないか。


 岩影から演舞を応援する。が、ふくらむ期待と裏腹に、背中に張りついた嫌な予感が消えないことにも気づく。


 何か忘れている。


 グッドディードのことではない。あの非道な相棒のことは忘れようがない。では、何を忘れている?


 そう、おかしい。この状況はおかしいんだ。なぜ他国の被験者、つまり人間相手に、NPCが立ち向かっているんだ?


 ――ォォオオオオオオン……!!


 耳にこびりつく雄叫び。嫌な予感が背中を駆け上がり、嫌な確信へと変わる。


 平野の彼方から、雄叫びとともに群れの足音が響いた。どんどん大きくなり、こちらへ近づいてくる。少し前に岩壁の上で感じた、風と振動。


「あっ、リリー! 帰ってきたのか!」


「グッドディードは!? ……って……」


 仲間たちが、捜索を終えて駆けてくる自分のNPCに声をかけた。そして青ざめる。


 NPCたちの後ろからゆっくりと、巨大な影が追ってきている。


 大きな複数の目玉。青空を割る銀の体。岩壁と岩壁の間を狭そうに泳ぐ、鉄の龍だ。


 龍がなびく腹の下には、同じく鉄の体をした数多の兵器に見えるロボット型のNPCの大群がいる。


 鉄の塊を引き連れた大龍の登場に、演舞が静かに動きを止めた。


 凶暴な侍が落ちついてくれたことに一息ついて、ハイラントが軍服がしっかり閉じているかチェックする。そこへ龍が迫った。


 頭上にたゆたう大龍の名を呼ぶ。


「偵察は終わったか、スカー。と、NPC部隊。また変なもん食ってねえだろうな」


 部隊の龍に追われながらも無事に戻ってきたNPCたちを確認し、その中に自分のNPCがいないことも確認すると、僕は慣れることのない絶望の波に溺れそうになった。

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