第二章

第10話 宇宙の技術

「そういえばさあ、イリアちゃん」

「なんだろう? シラナミアマネ」

 

 お互いのこれからについての話が一応まとまったところで、UFOから外に出た私たち。そこで今更ながら、結構厄介なことに気付いたのである。

 

「ちょっとこれ、目立ちすぎだよ……。住むにあたっての文句はないけど、見た目だけどうにかなんないかな……」

 

 そう……。元自宅の住所であるこの場所には今、見事なUFOが鎮座ましましているという事実に。すでに誰かしらには気付かれてそうなものだけど……そしたら報道とかされて、どエライ騒ぎになるのでは……?

 


「ムゥ、そうだな。一応はをONにしているから、簡単には気付かれないと思うのだけど。シラナミアマネを欺けなかったように、この家にまた注意を向ける者が来たのなら……その時、誤魔化しは効かないな」

 


 ん?

 


「え、何……? なんの機能がオンだって?」

 

「同化式迷彩機能だ。アップグレードの必要があるな。いや……いっそ同化式迷彩は使わずに、普通の民家に見せかけてしまうかな。投影式擬態に切り替えよう」

 

 やーば。聞いたコトない、よくわからない用語でてきた……。

 ウチュウ的なテクノロジーを感じる(適当)。

 

「素材として参考にする家屋を後で撮ろう。流石にお隣をそのまま使うと、混乱させるだろうからな……散歩がてら少し遠出したいな、シラナミアマネ」

「え? う、うん……? 別に、いいけど」

 

 何言ってるのやら、私はサッパリ理解できないまま。とりあえずイリアちゃんを連れて、市内まで歩くことにする。

 


「あの……さっき言ってたこと、実はよくわからなかったんだけどさ。今のところ、あのUFOは……他の人からは見つからないって思ってていいの?」

 

「そうだ。おそらくしばらく大丈夫だ。同化式迷彩は周囲の発する光を同色のまま取り込んで、景色と同化しつつ輪郭をぼかすよう発光させ、目立たず気付かれ難くする機能だ。それは限りなく、視界に違和感を与えない」

 

「……な、なるほど?」

 

「君もきっと、直接家に目を向けるまでは……UFOの存在に気がつかなかったんじゃないかな?」

「あっ……」

 

 言われてみれば、そうかも。異常に気づいたあの時、私は既に家の目前に居た。普通ならあんな事態、もっと遠くからでも見えて気づけて、大慌ての駆け足で家まで向かうことになってたはず。

 

「ほぁ〜……。よくわかってないけど、すごいなぁ。宇宙を飛び回るUFOといい……。やっぱり宇宙人の技術力ってのは、地球のそれなんかと比べ物にならないんだねー……」

 

 ただただ感心。工学やら光学やらの専門的な事には全く素人な私の感想ではあるけども。イリアちゃんの説明からして、地球人の理解が及ばない技術とか使われてるんじゃないかって思う。

 


 ……だから、すごいなぁって。私が素直に感じたことを、そのまま口に出しただけなんだけど。

 


「……っ! そっ、そうだろう!? フフッ、フフフッ! そうか、地球よりすごい、か……! いやっ、でもだな! それくらいで驚いてもらっては困るけどなっ! ……ニフフフフフ!」

 

 ほっぺた赤くしてニヤニヤしだしたイリアちゃん。わあ、なんかすっごく嬉しそう。口角、上がってる上がってる。我慢してるけども、どうしたって喜びが抑えきれない、って。そんな感じで笑ってる。

 


 でもまるで、自分自身が褒められたみたいな反応だ。

 うーん? なんだろ、応援球団が優勝した時の地元ファン的な感覚なのかな。野球わかんないけど。

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