第8話 本題

 完全に聞き流しモードに入りかけていたところで、話の流れが変わったっぽい。

 なんだろう。あまり良い予感はしないぞ。

 

「まず質問だ。これが大事だ。君は……どちらだ?」

「どちら、とは……。わたくしめ自身は、紛う事なき地球産の地球人だと思ってますけど……」

 

「そうじゃない。性別だ。その……男性、か? それとも、女性なのかな?」

「なん、だとう」

 

 ふいうちグサリときた。傷ついた……。

 

 そりゃ確かに、部活やってる友達の部室の片付けを手伝ってきたせいで、今の服装は上下ともに学校指定のジャージだよ? スカート穿いてるわけじゃない。 でも、だからってさぁ……。うぅ……。

 

「一応ちゃんと調べてはいるんだ、地球人の違いについては。外見上なら……髪が短くて、図体大きくて、肉がカチカチモリモリしてるのが男性。髪が長くて、図体小さくて、肉がプニプニボンボンしてるのが女性なんだろう?」

「……まあ、そうだね。イメージ的には……」

「ところがだ。やはり、個体差というものは侮れないな。ワタシの目からでは……君が一体どちらなのか、見た目だと判別し難いんだ」

 

 ぐさぐさぁっ!

 

「ぐくううぅっ……!」

 

 おそろしく真っ直ぐな言葉。私じゃなくても傷ついちゃうね。

 悪意を一切感じないのが、余計に心に刺さる……!

 

 私の外見。癖っ毛だから髪はそこまで伸ばさないし、身長は同年代女子の平均よりも少し高い。そして何より、女性らしさの象徴……そう、胸が。おっぱいが。

 ……無いのである。まごうことなきAランク。もはやトリプルエーと表してもいい。男の胸筋にも勝てる気がしない。スリーサイズの比率たるや、それはまさしくドラム缶のごとし。

 

 でも。それでも。私はいちおう女子なのだ。ピッチピチの、JKなのだ。キャッピキャピでフリッフリな可愛い感じが似合わなくたって、それなりに乙女心的なものは持ちあわせてる。

 だからこそ、真正面から女らしくないって言われちゃうのは……やっぱり、堪える! こんな私にだって、女としてのプライドはあるのに!

 


「だから……教えて欲しいんだっ。君の、性別を……! そして──」

 

 そんな感じで私が落ち込んでいる間にも、止まることなく喋り続けてるザ・スペースロリ。どころか、グイグイと迫りくるかのように語りに熱が入り出してる。こころもち、前のめりだ。


 そしてその顔には心なしか、さっきよりも少し強く赤みが差していているような……。



 

「君が女性だったなら! 君ならいい、君がいい! 是非とも君に……! 君に! ワタシを! 『』!」


 

「 ボ ク は 男 で す 」

 


 電光石火でウソついた。

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