第7話 キャベツ畑にコウノトリ

「地球人との、口づけで、妊娠する」

 

 口づけで、妊娠する。

 

 なんだろう、その……無駄にロマンチックな響き。

 メルヘンな御伽噺から飛び出してきました、みたいな。アイドルはトイレ行きません、みたいな。


「……聖母か」

「うん? セイボ?」

「なんでもないでス……」


 処女懐胎的な皮肉めかしたツッコミはどうやら伝わらなかったみたいだ。意味を深く追求されても困るし、流しておこう。

 

 

「とりあえず、口づけってアレだよね? ちゅーとか、キスとか、接吻とか……そういうので、合ってる?」

「そうだ。その口づけだ。ちゅーとか、キスとか、接吻とか呼ばれている行為だ」


 なるほどなるほど。その口づけね。それで、妊娠をねぇ……。

 

 ウチュージンだけに、つってね。やかましいわ。



「ワタシは地球人の『』口づけを交わすことで、子を授かることができるらしいんだ」

 

「うーん?」

 


 またなんか、すごい新要素が追加された気がするぞう?

 


「……誰と、口づけすればいいって?」

「地球人の、女性だ!」

 

 

「……え、男の子だったの?」

「ワタシか? 人間ではないから、男女という区別はそぐわないかもだな。だからワタシは、宇宙人のメスということになるんじゃないかな。子を孕む方がメスだろう?」

 

 メスて……。

 

「当然ワタシが同種族と子をなす時は、オスの相手を必要とするのだけども。なんと我々は、地球人の女性によって同じように孕まされることができてしまうらしいんだ!」

「さよか……」

 

 話がめちゃくちゃ過ぎて、なんかもう投げやりになってきた私。

 も、どうにでもなれーい、といった心持ち。適当に相槌。

 

「あ。ちなみにワタシがな……メスの宇宙人がな、地球人の男性と口付けをするとだな、身体が爆発四散して命を落とすと言われているんだ……とても恐ろしい」

 

 今日の晩ごはんは何作ろうかなあ。

 あ、もうキッチンどころか家すらないんだった。わはは。どうしよ。

 


「……さて、ここまではいいかな? ワタシの話、理解してもらえてるのかな」

「へぁ、まあ、うん。おおよそは」

 

 四散がどうのとか、何一つ実感は伴わないけどね……。ひとつひとつマジメに疑問抱くのにはもう疲れちゃったよ……。ぱとらっしゅ……。

 


「よかった。それなら、ワタシの目的についての説明は十分にできたと思う。だから次は……君への質問、そしてお願いだ」


「私への……?」

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